魔獣アントン
砂漠での戦いは困難を極める。
破壊力の足りない僕の奥の手は
承章3 衝撃の湖クレイモア⑨
僕は八神直哉。もうちょっとで15歳です。
バフォメ目指して旅の途中だけど、今はクレイモア湖南の砂漠で魔獣アントンと戦っています。
砂のうねりは僕の乗るボードを軽々と動かし、蹂躙しようとしていた。
ボードから突き出た棒を掴み、風魔法を使って流れに逆らう。
うねり、うねり、砂が流れうねる。
ボードが滑り、風が疾り、視界が流れる。
ボードと一体になり、うねりと僕は遊んでいた。
その時、流れに竿指すもの(魔獣)が現れた。
巨大な蟻である。ただしその脚はムカデのようであった。
きゅるるるぅう~
言葉は解らないが、怒っている事は分かっていた。寝床で煩く騒がれたら誰でも怒るよね。
でも、そのために頑張ったんだ。姿を認めた時には魔糸が繋がれていた。
ボードの上の棒を倒す。
砂の上を走りながら棒の向きを魔獣に向ける。
ボードを操りながら魔獣アントンの周りを回る。狙い目は魔獣アントンの胸辺り。どこが胸なのか良く分からないから、第2節あたりの体表下の白い部分とした。
動き回る僕に業を煮やしたのか口からジェットの如き液体を投射してくる。
当たった砂がジュッとか音を立てて白い煙を出すから、恐らく蟻酸のような恐ろしい何かだろう。
プロテクトを掛けていれば何の問題も無いけど、今は無理。ボードを操るのに風魔法を使っているし、更には他の魔法も併用しなくちゃならないからだ。
魔法を2つ以上励起したら頭がパンクしちゃう。
狙い目は固定したまま魔獣アントンの周りをぐるぐる~、逃げ回りながらチャンスを待つ。
3周目の初めにそれは来た。魔獣アントンが腹を見せて立ち上がっていた。
ボードから棒が真っ直ぐ向かっていた。
棒に付けられた“熊仗“に魔素を流し、回転を加えて、保持していたブレッドを魔糸のガイドを以て打ち出す。
ぎゅるるるぅう~
と腹の虫のような音を立てて命中した。
反動でボードが少し魔獣アントンから離れる。
命中したブレッドはアントンの中で止まった。
雷魔法を放つ。
外殻は魔法を弾き、強硬度を持つと言っても剥き出しだ内部は魔法が効く。
流砂範囲からボードはそのままの勢いで飛んでゆく。僕はプロテクトアーマーを起動して、うねりの上を駆け、倒れ伏して行く魔獣アントンを目指した。
魔獣アントンが倒れた時、アントンの上に乗れた。魔獣アントンの外殻は細かい毛が密集していて滑ることはなさそうだった。
よじ登り、頭の部分にある“ババロンの至宝“を錆びたように見える短刀でほじくり返し出す。
既に砂の中に魔獣アントンは半分ほど沈んでいる。このまま一緒にいたら、僕も砂地獄に巻き込まれてしまう。
慌てて瞬足でそこから離れる。砂に足が取られて走り難い。
流砂の範囲から脱出した僕は汗だくだった。プロテクトアーマーを解除して新鮮な空気を吸い込んだ。
ごほごほ、砂も熱風も一緒に吸い込んでしまった。
振り返ると魔獣アントンは砂の中に消えていた。
砂のうねり、流砂は変わらず続いていた。
あれ?ここは流砂も消えるのでは無いの?
魔獣アントンの魔力で流砂が起きていた訳では無かったらしい。
僕は頭をふりふり、放り出されていて砂の上を漂っていたボードの回収に向かった。
目的は果たした。
直ぐにでもババロンの落石遺跡に向かいたい所だけど、お腹も空いたし、疲れもしたのでまたもや、ミレアの町に戻って同じ食堂で同じものを食べ、宿に戻った。
これで夜、誰もいなくなったババロンの落石遺跡に行こう。
ミレアの道具屋で手に入れたのは前に木魔法でとっさに作り上げた魔法筒の金属版、雷魔法の電気で回転させて、電磁力で打ち出す魔道具。名付けて『魔導砲』だ。連発も出来ないし、一度外したら使い物にならない魔道具だけど破壊力の無い僕には頼るものが他にない。
魔獣退治に魔導砲!!
今の僕の最高戦力だ。
宿屋の女将さんにライナーへの伝言を頼む。
『森と砂漠の探し物は完了。次に彼が向かった場所の特定を急いでくれ。』
ミレアの町を出て北上、走っているうちに“ねね“がよって来た。
ババロンの落石遺跡で止まると甘えて来た。血を与えず、魔素を与えてやると満足したのかてくてく歩いて帰ってしまった。
付いて来るのかと思ったよ。
誰もいない遺跡の中に入る。真っ暗だからライトの魔法で明るくする。
方石の魔法石に魔素を流し、『ババロンの至宝』を差し込み、唱えた。
『バルス』
扉が手前側に開く。
ババロンの至宝を抜き取ると素早く扉の中に入った。扉が慌てるように閉まる。
扉の向こう側も同じような方石があった。
違うのはその前に魔法陣があったことだ。
この転移魔法陣がババロンに通じているのだろう。
彼も来れなかったババロン。いったいなにがあるのだろう。
薄く光る魔法陣に意を決して乗った。
光が強まりやがて僕は転移した。
いよいよ彼の行けなかったババロンです。
いったい何が待ち受けているのでしょうか?




