時の流れは残酷でしかない
「…そうだね、友くんはママの心にもだし、美咲の心の中でも、もちろんずーっと生きてるからね。だからこそ、忘れないようにね…」
「…う、うん…そうだね。忘れない。私、絶対忘れない…あの時のこと…」
美咲は少し困った顔をしながらもそれを取り繕うように誤魔化して母親に返事をした。
…それからというもの、僕達家族は友樹を失い、ぽっかり穴が空いた状態ながらも毎日笑顔で暮らしていた。事故当時に祖父母が遠路から病院に駆け付けてくれたのだが、友樹の最期を看取る事は出来なかった。
その後、通夜を挟んで翌日にそのまま祖父母を始め、親戚も葬式にて参列してくれた。
会場は涙で溢れ返っていた。
もちろん、美咲達家族も参列してくれていた。
「和くん!」
美咲が僕に葬式前に声を掛けてきた。
「…何?」
「あのね、私があげたプロミスリングなんだけど…」
「…何?」
「友くんの足に着けてあげても良い?」
美咲が棺に入った友樹の足首に僕のプロミスリングを着けてあげたいと頼んできたのだ。
「…いいよ。もちろん…」
僕は足首からプロミスリングを外して美咲に渡した。
美咲は「ありがと。」と、言いながら受け取ったプロミスリングを出棺前の最期のお別れの言葉掛けの時に友樹の足首に巻き直した。
不謹慎ではあるが、せっかく僕にくれたプロミスリングが友樹にあげる形になったことに幼いながらも心が少し、ざわついてしまっていた。
…それから、時は無慈悲に流れはしたが、小学生時代も変わらず僕と美咲は幼馴染としての関係を継続していた。
ただ、関係を継続してはいたが、小学生なので付き合うということへの僕の理解不足や周りの友達に冷やかされるのが恥ずかしいという感情もあり、美咲とは恋人関係には全く発展はしなかった。
…美咲は幼稚園の頃は間違いなく僕の事が好きって言ってくれていたのに…友樹が死んでからは、そういった言動や気持ちが一切感じられなくなってしまった…
そんな日々が過ぎ、いつしか学校終わりに一緒に美咲と帰ることも当たり前のように減ってしまい、僕は男友達と、美咲は女友達と一緒にいることの方が多いのが当たり前になっていた。
たまに登校時に一緒のタイミングで学校に向かっていて会ったら少し会話をする程度になっていた。
「…和くん、昨日の算数のテスト、何点だったの?」
「美咲には勝ってるから、教えなーい。」
「ふーん、…ケチ…」
別に喧嘩などはしていない。
だが、昔のように笑い合える関係ではなくなったなと、お互い感じるようになった。
だからといって避けているわけではないので、とりわけこの関係も僕は嫌ではなかった。
それから、僕達は無事に2年生になった。
1年生の時は一緒のクラスであったが、2年生に上がってからはクラスも別々になり、より関係性が薄くなってしまっていた。
………
(……ねぇねぇ、和樹。)
(なぁに?友樹…)
(あのさ、さっき美咲から着けてもらってたプロミスリング、僕にも着けさせてくれない?)
(えぇ?見てたの?駄目だよ。美咲にバレたら悲しませちゃうもん。)
(…じゃ、じゃあさ、ちょっとの間でいいから貸してよ。バレないように後ですぐに返すからさ…)
…ガバッ!!…
…ピピピピ…ピピピピ…
チュンチュン…チュンチュン…
…カチッ…
部屋中に鳴り響いた目覚ましのアラームを止める。
外からスズメの鳴き声が聞こえてくる。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
(……嫌な夢だ……)
…とある、小学2年生の朝の出来事…
(…この感覚…以前、どこかで感じたような気が…)
〜次回へ続く〜




