ねぇ、どんな人が犠牲者になるの?? 優しいからって利用され搾取され続けるのはイヤ!!!
夕方の公園。
テニス部の練習を終えた美咲は、汗を拭きながらベンチに座った。
そこへ、カオルが缶ジュースを二つ持って現れた。
「おつかれ、美咲。今日も走ってたな。」
「うん。大会近いからね。カオルくんは?また株とか暗号資産?」
「まあね。こうみえて専業投資ニートは、忙しいんだよ。」
美咲は笑った。
でも彼は、偉そうにしない。
今日は、美咲のほうから話を切り出した。
「ねぇカオルくん。最近さ……変なこと考えるんだ。」
「ほう、どんな?」
「自分の借金とか、病気とか、嫌な仕事とか……
そういうのを“人に押し付けようとする人”っているじゃん?」
カオルは缶を開け、静かに頷いた。
「いるね。残念だけど、一定数いる。」
「なんでそんなことするの?
自分が苦しいからって、人に移すのって……ゲスじゃん。」
カオルは少し空を見上げた。
「美咲、人間ってね、追い詰められると“自分だけ助かりたい”って思うんだよ。
借金を押し付ける人は、責任を取りたくない。
病気を移す人は、自分が苦しいから他人も苦しめばいいと思う。
嫌な仕事を押し付ける人は、自分が楽したい。」
「最低じゃん。」
「最低だよ。でも、現実には存在する。」
美咲は眉をひそめた。
「じゃあ、どうやって対策すればいいの?」
美咲は続けた。
「新型コロナのとき、いろんな人が病気を移し合ってたよね。
あれで私たち、何を学んだんだろう?」
カオルは指を折りながら言った。
「学んだことは三つある。」
●1 “他人は自分を守ってくれない”
「誰かが気をつけてくれる、なんて幻想だった。
自分の身は自分で守るしかない。」
●2 “病気は変化する”
「風邪もウイルスも、形を変えてくる。
完全に防ぐのは不可能。
だから“リスクを減らす”しかない。」
●3 “距離を取ることは悪じゃない”
「嫌な人、危険な人、無責任な人から距離を取るのは正しい。
優しさじゃなくて“生存戦略”だ。」
美咲は深く頷いた。
「じゃあ、普通の人はどうしてるの?」
「簡単だよ。
“距離・情報・判断”の三つで守ってる。」
- 距離:危険な人に近づかない
- 情報:相手の行動パターンを知る
- 判断:自分が損する前に離れる
「美咲、病気も負債も、近づかなければ移らないんだ。」
「……そっか。」
美咲はテニスラケットを抱えながら言った。
「学校でもさ、嫌な役割を押し付けられる子っているんだよね。
掃除とか、雑用とか。
あれって大人の世界でも同じ?」
「同じだよ。」
カオルは即答した。
「嫌な仕事を押し付けられる人には、共通点がある。」
●1 断れない
「“嫌です”と言えない人は、永遠に搾取される。」
●2 責任感が強すぎる
「真面目な人ほど、押し付けられやすい。」
●3 自分の価値を低く見積もる
「“私なんて……”と思ってると、雑に扱われる。」
美咲は苦笑した。
「……私、全部当てはまってるかも。」
「だから気をつけろ。
優しい人ほど、犠牲者になる。」
美咲はふと疑問を口にした。
「ねぇカオルくん。
“馬鹿じゃなければ損しない”って本当?」
カオルは首を横に振った。
「違う。
“馬鹿じゃなくても、優しすぎると損する”だ。」
「優しすぎると?」
「うん。
頭が良くても、優しすぎる人は利用される。
逆に、頭が悪くても“自分を守る人”は損しない。」
美咲は目を丸くした。
「じゃあ、どうすればいいの?」
「優しさに“境界線”を作ることだよ。」
- ここから先は手伝う
- ここから先は手伝わない
- これは私の責任じゃない
「境界線を引ける人は、搾取されない。」
美咲は深く息を吸った。
「……私、境界線作るの苦手だな。」
「だから今から練習するんだよ。」
美咲は少しだけ声を落とした。
「私さ……
家族とか、友達とか、先生とか……
いろんな人に助けられて生きてるんだよね。
そういう人たちに、どうやって報いればいいの?」
カオルは優しく笑った。
「美咲、それはね――
“自分の人生をちゃんと生きること”だよ。」
「え?」
「誰かが犠牲になってくれたのは、
美咲が幸せになるためだ。
だから、幸せになることが最大の恩返しなんだ。」
美咲は胸が熱くなった。
「……そうなんだ。」
「そうだよ。
恩返しってね、金でも物でもない。
“あなたが幸せでいること”なんだ。」
夕日が沈み、街灯が灯り始めた。
美咲は立ち上がり、ラケットを肩にかけた。
「カオルくん。
私、今日の話で分かったよ。」
「何が?」
美咲はまっすぐ言った。
「私は、誰かの負債を背負わない。
誰かの病気も、誰かの嫌な仕事も、押し付けられない。
でも、助けてくれた人にはちゃんと報いる。
そのために――
“自分の人生を強く生きる”。」
カオルは満足そうに笑った。
「いいね。
それができれば、美咲は絶対に搾取されない。
そして、誰かを救える人間になる。」
美咲は拳を握った。
「うん。
私、強くなるよ。」
- 負債や病気を押し付ける人は一定数いる。距離を取るのが最善。
- 嫌な仕事を押し付けられる人は“断れない人”。境界線が必要。
- 優しすぎると搾取される。賢さだけでは防げない。
- 犠牲になってくれた人への恩返しは“自分が幸せになること”。
- 自分の人生を強く生きることが、最大の防御であり、最大の感謝。
美咲は夕暮れの空を見上げた。
その瞳には、16歳とは思えない強さが宿っていた。




