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赤執事 ~Scarlet's Butler~  作者: 鬼姫
【朱執事】近朱必赤編
41/65

Ep.41 アリス・マーガトロイド

 太陽が真上に位置しているのに、何故かここ、「魔法の森」は薄暗い。


 この森については、外の知識以外で、以前から小耳に挟んでいたので多少知っていた。

 その話によれば、妖怪が闊歩しているとか、黄金が眠っているとか、変な植物が生えているとか、博麗霊夢が食べ物を探してさまよっている(!?)とか、色々曰く付きであるらしい。


 つまり何が言いたいのかと言うと、大の大人二人が(特に若頭が)あやしい森の中をびびりながら、美しい少女を尾行しているという微妙な図になっているのだ。


「ず、ずいぶん歩いているけれど大丈夫かな・・・麟くん?」

「まあ、多分・・・。お札のおかげなのだろうか、少なくともこれまでは妖怪には出会ってないからご利益は効いているとは思いますが。」

「さすが紅の館の執事だね・・・。私は今にも恐怖で押し潰されそうなのに。」


 まあ、確かに若頭ほど驚いてはいない。

 それでも驚いているのは事実で、内心俺もびびっているのだが、表に出していないだけなのだ。


「・・・しかし、こうも鬱蒼としていると見逃しそうですね。」

「そうだな。彼女が目立つ服装をしていないと既に見失っているだろうな。」


 彼女の落ち着いた感じのゴシック調の青い服は、人里でもかなり好奇的ではあったが自然の中に入り込むとより浮き立つ。そのせいか、こうして俺たちがむこうを尾行しているという形ではあるが、なんだか逆に彼女にどこかの異世界へと導かれているのではないか、という感覚になる。



 さらにしばらく森を歩き続けた。


「あれは・・・邸宅のようだ。」


 複雑に組合わさった木々の間から、青い屋根の古い洋館が現れた。彼女はその中に入っていく。


 すぐさま俺たちもその建物の前まで来た。


「さて、入りますか?」


 彼をちらりと見る。


「ここまで来てしまったしな。うじうじもしていられまい。」


 俺はうむと合意をした。

 そしてベルを鳴らす。ちりりんと寂しそうなベルの音色が森に溶け込む。


「はーい。今でるわ。」


 待っていたかのようにすぐに返事が返ってきた。その声を聞いた若頭は、気恥ずかしそうにもじもじとし出す。

 俺としてもわからないことはない感情なのだが、それを客観的に見るというのは結構新鮮だった。もしかしたら昔の俺もこんな風になっていたのかと思うと、何だかむずがゆくなってくる。


 返事からあまり待つこともなく、ガチャリとドアが開いた。


「・・・はぁ、やっぱり尾行してきたのね。そんな格好でここに来るなんて危ないわよ。」


 彼女の第一声はそれだった。

 どうやらバレバレだったらしい。


「それで何のよう?

 あら?そちらのあなたは・・・確か商店の取締役の一人ね。もしかして私が買ったものの支払い、足りなかったのかしら?」

「いえいえ!そんなことはないです!」


 若頭は俺に、助けてくれという視線を送る。

 相談を受けたからには仲介をするのはやぶさかではないのだが、唐突に視線を送られてもな・・・、正直対応に困る。

 何とかしようと努力は試みるが、失敗しても俺を恨まないでいただきたい。


「こちらの彼、あなたに一目惚れしたようで、今日はその話で来ました。」


 若頭は、えっ!そんなストレートに伝えちゃうの!?という顔になる。


 仕方ないだろう?何かにつけてこの場を取り繕うことはできるけれど、それじゃあここまで来た意味がなくなる。だったら、恥ずかしいかもしれないが、用件を正直に伝えた方がいいのだ。


 赤面の彼に対して、彼女は予想外にもにっこりとした顔になる。


「あはは!外は寒いでしょう?上がってちょうだい。何もないけれど紅茶くらいは出すわ。」


 俺たちは顔を見合わせた。

 まさか驚きもせず、いぶかしげにもせず、家に招き入れてくれるとは・・・。尾行してきたと気づいているならもう少し警戒してもいいものだが。


「・・・まあ、あなたたちが実力者ならそうしていたでしょうね。」


 俺の世界の家と親近感のわく近代西洋的なリビングに案内して、お茶を出した後、彼女はそう言った。


「実力者だったとしても、ただの人間がまるごしで来た時点で警戒心なんてなくなるわよ。」


 俺たちは顔を見合わせた上に、さらに首をかしげた。


「いえ、私たちは一応妖怪対策としてお札を持っているのですが?」


 彼はそう言いながらあの朱のお札を取り出す。

 彼女は彼の手のそれを取り上げて眺めた。そして、紙切れでも扱っているかのようにぞんざいに机に置く。


「残念だけれど、このお札には"力"はないみたいよ。」


 若頭はその言葉に少し怒った調子で声をあげた。


「そんなはずはない。由緒あるお札だぞ!何せ名家の霧雨から頂いたものなのたから!」


 彼女は彼を見て焦る。


「あぁ、ごめんなさい!言い方が悪かったわ。

 そのお札は確かに由緒ある稀少なものではあると思う。見たこともないほど大きな"術式"を秘めているわ。でも、長年使われてきたからなのか、お札の中の"力"は失われている。」

「つまり私の、元は霧雨のお札は、大きな"器"だけを残してその中身の力、例えるなら"水"は、使い果たしてなくなっちゃっているということなのか?」


 彼女は再びにっこりとした笑顔を見せる。


「その例えは分かりやすいわね。ええ、その通りよ。」


 そう言って一気に紅茶を飲み干す。


「今のあなたの札は私のティーカップと同じように"空っぽ"。これじゃあ何をすることもできないわね。

 だから―・・・。」


 次に空のティーカップにポットから紅茶を注いでいく。


「使うにはこうして注いぐ必要がある。」


 俺たちはふむふむと頷いた。


 どうやら俺たちは随分と危険なことを冒していたようである。

 頼りの綱であるお札は、実は現在効力がなくなっていて、それを知らずに安易に危険な森を進んでいたのだ。

 "運"が悪ければ死んでいたかもしれない。俺たちの認識の甘さが露見したということだ。


 再び紅茶をすすり出した彼女は、その考えに首をかしげる。


「運ねぇ・・・。こんなところまでそんな頼りないものをあてにして来ることができるほど、妖怪は間抜けでもないと思うけれど?」


 それはどういうことだろうか。俺たちにはお札以上に頼れたものはなかったはずなのたが。


「どうなのかしらね。

 そっちの商人さんには心当たりはなくとも、こっちのあなたには心当たりがあるのではないかしら?何だか尾行をされていたとき、あなたの背後の方から異様な禍々しい気を感じたのだけれど。」


 禍々しい気・・・。

 彼女の言葉に思い当たる節は・・・無いことはなかった。

 最近変わった友人が多々できたことに加えて、強力で胡散臭い後ろ楯もいる。変わった友人の方はほぼ無害だとして、強力で危険な胡散臭い後ろ楯の方はやたらに熱心なストーカーである。

 そもそも禍々しいと言えば、真っ先に彼女―八雲紫を思い浮かべるだろう。


「思い当たる節はあるみたいね。まあ、深くは聞かないわ。どうやらあなたたちがここにたどり着いた時点でいなくなったみたいだし。」

「そうしてくれると助かります。」

「でも・・・それよりもあなたたちがここに来た理由―つまりは商人さんの、そのー・・・。」


 彼女は吃りながらも話を本題に移した。先程まで冷めていた若頭の顔も再び熱けを帯びてくる。


「と、とりあえずお互いに自己紹介をしましょうか。いつまでも代名詞と言うのも味気ない話だし。」

「あ、は、はい!そうですね。

 私は霧雨道具屋の弟子で、商店の取締役の銭谷十兵衛です!どうぞよろしく・・・。」

「わ、私は・・・最近こちらに越してきた魔法使いの、アリス・マーガトロイドよ。」


 お互いの体は向き合っているのに、顔の向きと視線があべこべになっている。


 しかし・・・やはり彼女はあのアリス・マーガトロイドだったようだ。前々からではあるが、こうも原作の知識が役に立ってくると、チート的な反則的なものを感じてしまう。所謂、なろう系の利ではあるのだろうか?


「・・・。」

「・・・。」


 会話が続かないなんてことはよくある話ではあるが、これほどまでなのは俺とフランの出会い以来ではないだろうか?

 流石にここで助け船を出さないのは、仲介としてはまずかろうと思ったので口を開いた。


「それでお二人の趣味とかは?」


 アリスが趣味という言葉に反応する。


「わ、私は断然、人形づくりかしらね?それで夢は、いつか自分で考えて自分で動く人形を作ることよ。」


 若頭はぎこちなく相槌を打った。


「そ、そうなんですか!素晴らしい夢ですね!!

 私の趣味は、アリスさんみたいに大したことはなくて、霧雨道具屋の道具の整理とかー・・・。」


 若頭のは趣味ではなくて、仕事なのでは?そんな気がしたが、本人が趣味だと断言するならそうなのだろう、そう納得した。


「も、もし良ければ、人形を見せていただいてもいいですか?」

「ええ、いいわよ。・・・でも、作業部屋はあまり綺麗ではないから。」

「大丈夫です!

 霧雨の主人の部屋以上に汚なくなることはないと思うので!お任せください!」


 早速2階にあるアリスの作業部屋に赴いた。

 けれど、言うほどに汚なくはない。表現するなら汚いというよりも、モノが多いという印象である。この場合のモノというのは手作りの人形やその素材、道具のことだ。何百体もある同じような彼女たちは同じような姿勢で同じように虚空を見つめている。何だか義務教育時代の教室を彷彿する光景のような気がして奇妙な気持ちになった。

 若頭も、立ち位置や経験は違えど似たような感情を持ったのだろう、なんとも言えない表情をしていた。


 俺たちの変化を見ていたアリスは申し訳なさそうにする。


「ま、まあ、変な部屋よね・・・。魔法使いと言っても、今の私は人形を使い扱う魔法を主に研究しているから。必然的にこんな風になっちゃって・・・。」


 若頭は取り繕うように唐突に笑顔をつくる。


「あ、違うんです!すごいなあと思って!」

「別に気を使わなくてもいいわよ。前に道に迷った人を泊めようとした時も、この部屋を見て不気味だと言って逃げだしたしね・・・。」


 アリスは、気遣ってくれる彼に対して余計に申し訳なく思ったようだった。

 その後しばらくは何とかご機嫌を取ろうとする若頭と彼の好意が心に刺さるアリスとの攻防があったらしい。


 その時俺は、人形部屋の窓から外を覗いて近くの大きな木に覚えのある人影を見たため、玄関外まで降りてきた。


「やっぱりあなたでしたか。―八雲紫さん。」


 玄関外には待っていたかのように妖怪の賢者が立っていた。


「再びこうしてお会いできて光栄ですわ。冴月麟。」


 アリスが言っていた禍々しい気配とは彼女のことだった。


「八雲藍さんからはあなたは忙しいとお聞きしていたのですが、本当はお暇なんですか?」


 邪険にする俺を見て、わざとらしく泣き真似をした。


「相変わらずひどいですわ。あなたが妖怪に食い殺されないようにここまで守ってあげていたのに・・・。」

「それは・・・ありがとうございました。」


 そして、彼女は一歩寄ってきて、ずいと顔を近づける。


「しかし、あなたは迂闊ですわ。あの男の勘違いとは言え、こんな危険な所に無防備で来てしまうなんて。

 あなたは私にとって大切な―・・・大切なんですから。」


 俺は彼女の「大切だ」という言葉を聞いて、睨み付けた。


 それは違う。

 彼女にとって大切なのは俺ではなく俺の"能力"なのだから。如何にも俺と親しくしようとする風な態度なんてとらないでほしい。


 俺の睨みを受けて、八雲紫は少したじろいでいたような気がした。


「そうね・・・。私が求めているのは、あなたの能力。

 先程の言葉は訂正するわ。」

「それで・・・あなたがここに来たのは俺に会いに来たのではないのでしょう?」


 彼女は少し目を見開いたかと思うと、直ぐに扇で顔を隠した。


「さすがね。

 ここに来たのはあなたも既に会っているでしょう、アリス・マーガトロイドに用があったからよ。」

「もしかしてレミリア様の時みたいに異変がらみですか?」

「・・・。直接ではないにしろ、そういうことになるわ。

 まあでも、言わば新人研修みたいなものだから心配しなくても大丈夫よ。険悪にはしませんから。」

「しかし現在、彼女は取り込み中です。できれば後にしてほしいものですが。」


 彼女は扇子越しにこちらをちらりとのぞく。

 しばらく俺を眺めて、状況を察したように頷いた。


「わかりました。馬に蹴られて死にたくはありませんわ。

 しばらくはあなたとお話して待つことにいたしましょう。外での立ち話もしんどいてしょうから彼女の家に入りましょうか。」

「・・・ああ。」


 八雲紫はにこりと笑ってアリス邸へと上がっていく。



 現在、俺と八雲紫は四角いテーブルを挟んで対峙している。アリスの時とは違い、紅茶もお茶請けもない。文字通りの意味で顔を会わせているのだ。彼女はそんな状況でも目をそらさず、眉ひとつ動かさずに椅子に腰かけていた。俺の内面では気まずさや不信感、恐怖感などなどが入り交じった複雑な感情が飛び交っている。


「あなた、藍の修行をきちんと受けて、更には課題もこなしているみたいね。」


 この場での彼女の一言目はそれだった。

 面倒事ではなかったことに、少しだけほっとする。


「どちらにしても、どう転ぶにしても、能力開発は大切なことですからね。俺にとっては純に利益があるからそうしているだけです。

 それに、彼女の課題であるところの"能力者と出会う"というのを達成しているのは、偶発的です。」

「それでいいのよ。物語というのは往々にして偶発的要因が重なりあうもの・・・。問題はありませんわ。」


 そうは言っているが、なぜか流し目になる。

 俺は首をかしげた。


「別のことで何か問題でもあるのでしょうか?」

「そうね・・・。

 謂うならば、そろそろあなたの能力が目覚めてもいい頃なのに、という点が問題かしらね。」


 彼女は立ち上がってコツコツと俺に近寄り、背後に来た。


「目覚めないのは素質の問題なのではないでしょうかね?藍さんの言っていた通りに、焦っても仕方ないことですよ。」

「本当にそうなのかしら?」


 彼女は俺の肩にぽんと手をのせた。そして、口元を俺の耳に近づけてくる。


「・・・もしかして、私の"お願い"を引き受けたくないのかしら?」


 ぞっとするような心持ちがした。

 彼女は決して怖い口調ではない。普通の穏やかな話口なのだが、妖怪の賢者という肩書きと隠しきれない妖気のせいで逆に恐怖感を招いたのである。


 しかし俺は引き下がることはできない。


「まだ決定したわけではないけれど、もしかしたら結果的に断るという形になるかもしれないということは頭に入れておいてください。

 これ以上のことはまだ時期尚早ではないですか?」


 微笑みの声と共に、鋭い吐息が俺の耳裏をなでる。


「ふふふ。そうですわね。

 でも、これだけは覚えておいてちょうだい。お願いを聞き入れるか聞き入れないかは、本当にあなた次第よ。あなたが聞き入れないという選択肢をとるならば、私はその決断を尊重します。

 ・・・甘んじてその現実を受け入れます。」


 相変わらずの胡散臭さに満ちた台詞である。

 しかし、その言葉には、声や雰囲気だけではわからない深い悲しみを秘めていたように思う。


「紫さん・・?」


 俺は彼女の方に振り向こうとした。


 それと同時に二階への階段が軋みはじめる。


「麟くん・・・?さっきから話していたみたいだけれど、一人でどうしたんだい?」


 振り向いた先にはもう、紫の姿はなかった。余程俺以外の他人には無頓着らしい。

 もしかしたら俺と八雲紫が繋がりがあることを悟られることで、俺の立場が悪くなるかもしれない。そのことを杞憂してという彼女なりの気遣いなのかもしれないが・・・。

 どちらにせよ姿を消すという彼女の方針に従うことにした。


「いえ、何も。独り言を言っていたのは、少し考え事をしていたからですよ。」

「そうなのか。」

「ところでアリスさんはどうしたのですか?」


 降りてきた若頭は二階の方を一瞥して答える。


「直ぐに降りてくるよ。

 ・・・ところで、君のお陰で、上手くとはいかないまでも今後の繋がりができたよ。ありがとう。」


 彼は恥じらいもない、ただ純粋な笑顔を見せた。どうやら言葉以上に上手くいったらしい。


 別に俺がいなくとも、彼なら今と変わらない結果を出すことができただろう。


「そんなことはない。君がいてくれたからここまで来れたんだ。」

「そう・・・ですか?」


 俺の疑問符に、彼は難しい顔をする。


「君は自分を過小評価する癖があるらしい。いけないよ、それは。

 これは霧雨の主人の言葉なのだけれど、道具屋に大切なことは"モノ本来を正しく見ること"なんだ。過大評価でも過小評価でもいけない。価値を正しく捉えることで、その道具の真に悪いところや良いところを知ることができる。

 俺は霧雨の主人に弟子入りしてから約20年、この事についてずっと考えてきた。それで気づいたことなんだが、どうやらこの言葉はヒトにも通じるように思えるんだ。

 正しく自分を見ること。これが人間として成長するための第一歩なんだよ。」


 正しく自分を見ること・・・か。

 何度も言ってきたことだが、自分を偽り続けてきた身としては肌身に染み入る言葉である。人間関係においても能力においても、イマイチ成長出来ていないのはそういう未熟さの現れなのかもしれない。

 そう気づかされた。


 彼は続ける。


「・・・ははは。

 君とはあまり年が離れていなさそうなのに、生意気なことを言ってしまったな。

 でも、今回君からもらった恩に対して、とりあえずのささやかなお礼として、この言葉を送りたかったんだ。

 上白沢先生も、お世話になっている子どもたちも、麟くんを知っている誰に聞いても、していることに対して君は幸せになれてない。そのように口を揃えて言うものだから。」


 俺は目を見開く。気づかなかった、彼女たちがそんなことを思っているなんて。

 付き合いの短い人里の人物の俺に対する印象がそれなら、いわんや事実をやである。


「ありがとうございます・・・。」




 会話から間も無くしてアリスは降りてきた。

 それからまた少し雑談に興じていたのだが、彼らの間には既にぎこちなさはなくなっていた。先程あのような言葉を授かった身としては、楽しそうに話をしている光景は心地よくも俺の嫉妬心をくすぶった。つまり、俺のお陰で仲良くなったのだと思うと気分がいいし、短時間でこうも笑いあえるのを見ていると何だか取り残されているようで嫉妬をしてしまうのだ。


 そしてフランドールのことを思い起こす。気まずい雰囲気を最後に、随分と日にちが過ぎていったように思えた。

 あの時、あの立場にいたのが俺ではなく彼ならば、もっと上手くやれたのかもしれない。そのような気がして心が沈んだ。







 その様なことが色々あったが、さて、明日は人里での生活の最終日である。

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