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楊氏伝  作者: りん
妃子
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納妃

今回、後宮に入ったのは楊婕妤の他に三人の女たちだった。趙婕妤と虢美人の他に薛美人(せつ)がいる。

趙婕妤は新入りの核になる存在だった。華やかな雰囲気に大きく潤んだ瞳が彼女を艶やかに見せている。

人を惹き付ける雰囲気は楊婕妤にはないものであった。春のような女であった。一方の楊婕妤は冬のような女である。凛とした涼やかな美しさは雪のように冷たかった。

女たちは本心でもない忠誠や敬意を皇后に述べると時を見て退出していった。

楊婕妤は寄り道をせずに自身の宮殿へと戻っていった。侍女たちが彼女を出迎え頭を下げた。

「皆、下がりなさい」

侍女たちを下げると楊婕妤は丸椅子に腰を下ろし、卓で頬杖をついた。そして瞼を閉じた。

瞼の裏に浮かぶのは後宮の女たちの顔だった。気の強い趙婕妤、そして腰巾着のような虢美人、物静かな薛美人。突然、浮かぶ婉妃と宜妃。全てが煩わしくて憎い存在だった。

「桂儿」

「お呼びでしょうか」

宮宰太監(きゅうさいたいかん)を呼んで」

「かしこまりました」

宮宰太監とは後宮に仕える宦官の長である。後宮の家事一切を取り仕切りる実力者であり、権力者でもあった。

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