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第32話:華麗なるロイヤルパレードと、喝采を浴びる職人

「おお……っ! 見よ、我が国の歴史上、これほどまでに神々しい騎馬隊の行進があっただろうか!」


 ファンファーレの音が青空に鳴り響き、隣国の王都のメインストリートは埋め尽くさんばかりの群衆と大歓声に包まれていた。

 建国記念親善パレードの主役として登場したのは、ギルバート隊長率いる王家直属騎馬隊。その精鋭軍馬たち、そしてエリザベス王女の白い聖馬ミルクの姿を見た瞬間、王族や貴族、街の全住民から地鳴り collective(のような大歓声)が沸き起こった。


 レントのゴッドハンドによって完璧に毛流れを整えられ、温泉のハーブ水で磨き上げられた馬たちの毛並みは、太陽の光を浴びてまるでシルクや宝石を散りばめたかのようにまばゆく輝いている。ただ歩くだけで気品あふれるステップを踏む名馬たちの美しさは、各国の権力者たちを一瞬で虜にしていた。


「素晴らしい……! あんなボロボロだった我が国の軍馬たちが、まるで神獣のようではないか! このパレードのチーフトリマーを任された男を、今すぐ我が国へ招待せねば!」


 特設観覧席では、他国の王族たちが身を乗り出して口々に絶賛の声を上げている。

 パレードは大成功、チーフトリマーであるレントの名声は、この瞬間に国際的なものへと昇華していた。


 ◇


 パレードが華やかに進行する舞台裏の控室。

 最高の仕事を終え、プロのトリマーとしての俺のアドレナリンは完全に限界を突破していた。ブラッシングの熱が冷めやらない俺のギラギラとしたプロの目が、パレードのあまりの華麗さに圧倒されて放心状態になっていたシャロンとクゥマをロックオンする。


「……ああっ! シャロンさんに、クゥマさん! 大変だ!」


「ひゃっ!? だ、だから急に大声出さないでってば!」


 俺はギラギラとした純粋すぎる職人の目を輝かせ、特製クシを構え直して二人にじりじりと迫る。


「大変だ二人とも! シャロンさん、国際パレードの大歓声(気疲れ)のせいで、肩の筋肉が昨日よりさらにガチガチになって、自慢のポニーテールが悲鳴を上げている! クゥマさんも、驚きのあまり変な力が入って背中の剛毛の絡まりが限界突破しているよ! 職人として絶対に放っておけない、今すぐ俺のクシで、パレードの熱気にも負けない最高美に整えさせてくれ!」


「いやぁぁ! だから来ないでって言ってるでしょ! こんな国を挙げた大イベントの大歓声の裏側で、そんな真剣な公開プロポーズみたいな目で見つめられたら、あたしの野生の理性が……っ、仕来りが発動して本当に毎日お世話になっちゃうじゃないのよぉぉ!」


 シャロンは顔を耳まで真っ赤に染めて後ずさるが、レントの放つ圧倒的な職人オーラ(快感の予感)に身体がすくんで escape(逃げる)できない。


「ク、クシの誘惑がパレードの音の中でも容赦ないクマ……! だ、ダメクマ、ここでヘタレ込んで声を漏らしたら本当に嫁入りになっちゃうクマ……うぅぅ❤」


 クゥマもブラシで必死に防御の構えをとるが、本能はすでに快感の予感に震えていた。


「マスター、ストーーーーップですぅ!!」


 ズサアアアアッ!

 そこへ、驚異的な反応速度で割り込んできたメリンが、パレードのご褒美用に用意されていた巨大な最高級ニンジンの山を俺との間にバッと割り込ませて物理的な壁を作った。


「シャロンちゃん、クゥマちゃん! 国際パレードの控室でうちのマスターに変な仕来りを押し付けないで、命が惜しければ早くお帰りくださいぃ!」


「そうです! 旅先の本番の裏側での公開求婚は絶対に禁止です! マスター、あいつらは衣装が変わっても相変わらず居座っている、ただの常習ツンデレです! ほら、大人しく私の尻尾をモフモフして目を覚ましてください!」


 フィオが俺の右腕にガシッと抱きついて強力なブレーキをかけ、厨房から出てきたカルラが笑顔のまま「めっ、よ❤」とライバル二人を笑顔の圧力で押し戻していく。


「待ってくれみんな! 俺はただプロとして、彼女たちの毛並みを国宝級に磨き上げたいだけなんだ! 職人のこだわりを邪魔しないでくれー!」


「ダメなものはダメですぅー!」


 結局、俺の職人魂の暴走は三人の完璧な連携によって阻止され、俺はズルズルと控室の奥へ引きずられていくのだった。


「ふむ……各国の王族の前でも動じることなく、あの豹族や熊族の戦士を触れられる前に圧倒するとは。やはりレント殿は、この世界をも揺るがす真のマスター……」


「ふふ、レントに撫でられたくてあんなに強がるなんて、獣人の娘たちも可愛いおねだりをするものね」


 さらに勘違いを深めて畏怖を募らせるギルバート隊長と、仕来りを知っていて優雅にお茶を飲むエリザベス王女。

 大成功のロイヤルパレードの裏側で、ペットホテル『アルカディア』の賑やかで可愛い修羅場の声は、隣国の空にどこまでものどかに響き渡るのだった。


お読みいただき、ありがとうございます!

隣国の『ロイヤルパレード』本番が開幕し、レントの手で磨き上げられた馬たちが圧倒的な気品で世界中の王族や観衆を大魅了!

チーフトリマーとしての実力を国際的な舞台で証明する、爽快感あふれる一話をお届けしました。


後半は、興奮で職人魂が暴走したレントと、必死に抗うライバル、そして旅先の控室でも超スピードで乱入するメイン3人のお約束コメディが再び炸裂!


次回、このパレードの大成功によって、レントたちの出張お世話に、さらに「とんでもない国際的な大物」からのアプローチが……!?

そして、楽しかった社員旅行もいよいよ終わり、我が家であるボロ宿(温泉付きパラダイス)への帰路につくことに!


続きを楽しみにしていただける方は、ぜひブックマークや評価での応援をよろしくお願いいたします!


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