第9話 夏合宿
「まずは連続ジャンプ20回!これを3セットだ!」
勝田先輩の声が、朝の砂浜に鳴り響く。
相変わらず、朝から元気いっぱいだ。
「ジャンプするだけでいいんですか?」
地獄と聞いていた割には優しいメニューに、蒼空は首を傾げる。
「とりあえず飛んでみな?」
蒼空はその場で軽くジャンプする。
だか、どうしても連続でジャンプが決まらない。
「どうだ?辛いだろう」
「は、はい……。全然跳びません……っ」
「わざわざ砂浜まで来たのは、海を見たいからじゃない!」
砂浜がまるでクッションのように感じる。
「砂浜は反発を吸収する!これを利用した練習をするために、砂浜まで来たんだ!」
実際に体感し、蒼空はいよいよこの合宿の辛さを知ったようだ。
そう、この合宿は普通の地上とは違い、この砂浜の性質を利用した異質な環境での合宿なのだ。
「このジャンプ練習は、蒼空、君のためのメニューなんだ」
「私……ですか?」
「あぁ!クイックターンは地面を蹴って、その反発を利用して体を前に出す。これは、地面からの反発を効果的に受け取るための練習だ!」
説明を受けて、蒼空も納得したようだ。
「それが終われば次は反復横跳び30回を3セット!これは愛果のための練習だな!」
蒼空の時と同様、勝田先輩は練習メニューの説明をし始める。
「砂浜は滑りやすい、なんてったって砂だからな!愛果の戦術は素早さが求められる、砂浜はそれを鍛えるために最適だ!」
説明を終えるなり、「次は結衣のための練習だ」と話を続ける。
「砂浜ダッシュ20本だ!」
「分かってたけども!嫌〜!」
砂浜ダッシュの過酷さは、言うまでもないだろう。
反発が吸収され滑りやすい砂浜での走り込み、体力だけでなく体への負担も大きい。
それ故に効果は絶大だ。
「結衣、お前は相手の拠点を破壊するんだろ?なら体力 持久力は必須だ!」
こうして勝田先輩が提案した練習メニューは全て、それぞれの戦術にあった内容となっていた。
蒼空のクイックターンを生かす、反発力を鍛えるためのジャンプ練習。
愛果のポインターを破壊しに行く上で大切な、素早い反応と足さばきを鍛えるための反復練習。
そして結衣の拠点までたどり着くために必要な体力を鍛えるための持久力練習。
「こんなみんなにあった練習を思いつくなんて……流石です!」
最初勝田先輩を怖がっていた蒼空も、今じゃ尊敬の眼差しを向けている。
今日一日、とりあえず最後までやりきろう!と意気込む三人。
「ん、これは午前練のメニューだぞ?」
「「「……………え?」」」
全員が固まる。
「午後は実戦形式での練習だ!俺から点を取れなかったら、明日の練習は二倍だ!」
「「「そ、そんなぁ……」」」
「安心しろ、取れなかった時は飛翔も飯抜きだ」
息を殺していたが、しっかり巻き込まれた。
しかし彼女達の練習内容と比べたら、飯抜きぐらい安いものだ。
「それじゃあ早速練習開始だ!」
「「「お、おおー……」」」
こうして地獄の夏合宿が幕を開けた。




