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「・・・」
「――」
アリスン様が口を開こうとした時、首が涼しくなりました。有能執事の手が離れたようです。
アリスン様に言われる前に渋々、手を離したようです。
有能執事から解放された私は、見つかったGのようにアリスン様の後ろに逃げました。私の身体能力にチートがないので簡単に捕まりますが、アリスン様が間にいれば助けてくれると期待したからです。
せこい?
いいえ。これは凡人の生存本能がやらせたことです。
見つかったGのような動きになったのも、生存本能のせいです。
「アリスン様、ありがとうございます」
感謝はすぐに言わないと、誠意が伝わりません。
敵意を向けてくる有能執事に背中を向けたまま言うなんて、そんな危ない真似はしません。アリスン様の後ろから言います。
アリスン様なら、多少の非礼は目を瞑ってくださるでしょう。
「もう。変なことしちゃダメよ、メリッサちゃん。陛下が心配するでしょ」
振り向いてバチンとウィンクするアリスン様ですが、声が低いです。フレンドリーなはずが怖いです。
「ヒィィィ・・・!!!」
有能執事のような敵意や殺意は一切ありませんが、これは暗黒微笑というやつでしょうか?
アリスン様、オネエキャラなだけで、腹黒じゃないですよね?!
なんで、そう黒いんですか?!
「・・・」
「~~~」
有能執事がとっとと帰れという目をしていますが、すたこらサッサと帰っていい空気じゃありません。そんなこと、アリスン様が許してくれそうにないです。
アリスン様の許可なしじゃ、帰れそうにないです。
「返事は?」
「はぃぃぃっーー・・・!!!」
「お説教は帰ってからよ。まずは陛下に無事な姿を見せなくちゃね」
帰ってから、お説教確定?!
お説教ですか?!
うわぁぁぁあ!!!
伏魔殿から救出され、王宮への帰途は連行されているような気分でした。お説教の待っているかと思うと、助かったはずなのに気が重いです。
こうして、私のBL化計画は永久に封印されました。
BLは地道に布教するしかないようです。
・・・よく考えたら、チーレム野郎の家に行ってすぐにアリスン様が来るなんて、タイミング良すぎます。
チーレム野郎への依頼もしていないようですし。それとも、依頼した後で助けに来てくれたのでしょうか?
謎は深まります。
アリスン様、あなたって、一体・・・?
「お帰り、メリッサ。ここのところ、様子がおかしかったけど、何かあったのか? どうして、ルークの屋敷に忍び込んだんだ? もしや、ルークに惚れたのか? いや、何故、バルナスを見ているんだ。まさか、バルナスが気になるとかじゃないよな?! バルナスのことが気になってルークの所に行ったのか?!」




