11
なんてこと言ってくださるんですか、アリスン様!
私、有能執事に命、握られているんですよ!
アリスン様に文句が言いたいですが、言えば殺意の波動を隠さない有能執事の手にうっかり力が入ってTheエンドです。
くぅ~。
ギリギリと歯を鳴らして我慢します。
「ウフフ♥ 冗談は置いておいて。正直なところ、あんたがこんなとこにいるとはね~、――メリッサちゃん」
「は、むぐっ・・・」
返事しようものなら、有能執事に首を握り潰されます。
危ない危ない。思わず返事しそうになって、自分の手で自分の口を押さえたので、変な声が出ました。
「チッ」
気のせいか、後ろから舌打ちが聞こえました。
有能執事に限ってまさか舌打ちなんてするはずありませんよね?
アリスン様対策で警備態勢を敷いていたにもかかわらず、潜り込んでいた私をサクッとしたかったんでしょうか?
止めてくださいよ。まだ死にたくありません。この世界にBLを布教するまで、死んでも死にきれません。
それに、物騒なことをする相手はチーレム野郎狙いの暗殺者だけにしてください。
王宮の善良な侍女を殺そうとしないでください。
「駄目よ。セバスちゃん。メリッサちゃんは陛下の侍女なんだから」
アリスン様が助命嘆願してくれてます。生きてここから帰れそうです。
さっきは酷いことを思ってすみませんでした、アリスン様。
助けに来てくれて本当に助かりました。
アリスン様は神様です。これから朝晩、必ず拝みます。
「死んじゃったら、陛下がしばらく使いものにならなくなるじゃない」
違いました―!! 陛下の仕事の進捗が理由でした!
それだけが理由って、顔見知りなのに私の命、軽くないですか?!
「・・・」
アリスン様を見る目が半眼になります。
「わかったら、さっさと解放してね♥」
「・・・」
どんよりした嫌そうな空気が私の背後から漂ってくる気がします。
有能執事はアリスン様がおっしゃってることが信じられないようです。王宮の侍女が有能執事の敷いた警備態勢を誰にも気付かれずに突破できるなんて、あり得ないことですから、仕方ないですね。前世持ちは前世知識チートがあるのです。
フハハハハ!!!




