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怪奇異譚~KAIKI・ITANN~  作者: 荒野ヒロ


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28/29

ラジオから聞こえるピアノの発信元は

夏のホラー2022のテーマ「ラジオ」作品。

 これは、高校の先輩から聞いた話。


 先輩の祖父にあたる人が亡くなり、その祖父の遺品整理をしていたときに見つけた、古いラジオ。

 昭和レトロなそのラジオを気に入った先輩は、そのラジオを持ち帰り、自分の部屋で使っていたらしい。

 しばらくは普通にラジオとして使えていたのに、ある日から急に調子が悪くなり、ほとんどの局の放送にノイズが混じりはじめたという。


「もう捨てるか」

 先輩はそう思ったらしい。

 しかしダイヤルを回していると、一つの局だけをノイズなしで拾えることがわかった。

 しかしそれは、聞いたことのないラジオ番組──というか、ピアノの音が流れつづけるだけの、奇妙な電波を拾っていたらしい。


「なんだ? 個人局アマチュアの放送か?」

 そんなふうに考えしばらく聞いていたが、延々(えんえん)と同じピアノの曲を流しているだけなのだ。

 それも、聞いたことのない、静かな──ゆったりとした演奏だったという。

 先輩はクラシックのことはわからなかったので、父親に相談してその曲が何かを尋ねたが、それはオリジナル曲ではないか、という返答が返ってきた。

「気になるんだったら、送信所に問い合わせてみるといい」

 そう父親から助言を受けたが、どこに送信所があるかもわからない。

 しかしなんとなく気になっていた先輩は、自分の足で電波の発信元を探ったそうだ。


「暇だったのさ」という先輩。

 その日からあの、ゆったりとしたピアノ曲が授業中も、部活中も聞こえてくる気がしていたという。

 本当は先輩も怖かったのだ。

 古いラジオから聞こえてきたピアノの音が耳から離れない。そんなふうに感じはじめ、先輩はさっそく調査を開始した。


 古いラジオを片手に、電波の強度を確認しながら歩いていると、思った以上に近い場所からそのピアノ曲が流れていることを発見した。

 そこは、亡くなった祖父の家だったという。

 しかし祖父の家には送信鉄塔もなく、遺品整理のときにはピアノもなかったらしい。

 だが確かにそのラジオから聞こえてくる音楽は、その何もない場所から送信されている。



「気味が悪いですね」

 ぼくは先輩にそう言い、話の結末を尋ねたのだ。



「ああ……、俺も気になって、祖父の家から持ち帰ったアルバムなどを調べてみた。そうしたら、古い写真の中にあの家の庭で撮られたものがあり、その中に小さな鉄塔が写っていたんだ」

 どうやら先輩の祖父は趣味で、個人のラジオ局を開設していたらしい。

 そのときに流していたピアノ曲を弾いていたのが、先輩の祖母にあたる人だったのだ。

 ──という話を、近所の人から聞き出したのだと言う。


 先輩の家族は祖父とはいつからか疎遠そえんになっており、その辺の事情についても耳にしたことはなかったが、その近所の人が言うには、祖父と祖母は仲が良かったが、祖母は重い鬱病うつびょうをかかえ、亡くなる前は認知症にもなっていたらしい。


「もうずいぶん前だけどねぇ。……君のおばあちゃんは、首を吊って亡くなってしまったんだ。あの小さな鉄塔にぶら下がってねぇ」

 なんと、庭にあった送信鉄塔にロープをかけ、そこで首を吊ってしまったと言う。


「おばあちゃんはピアノを弾くのが趣味だったけれど──あの日。ピアノが壊れてしまったらしいのさ。それで修理を呼ぼうって話になったんだけれど……」

 数日後にはピアノの修理の人が来る予定を立てたのだが、何を思ったのか、先輩の祖母は首を吊って死んでしまったのだ。




 まったくわからないことが、先輩の話にはいくつかある。


 なぜ祖母は首を吊ってしまったのか?


 祖母が亡くなったあと、あの鉄塔は解体され、ラジオの送信所としては機能していないはず。


 なのに、なんで古いラジオからは、当時の祖母が弾いていたと思われるピアノの音が聞こえてきたのか。



 ……先輩の口からはその辺の答えは聞けなかった。

 ただ、その古いラジオは、まだ先輩の家にあるらしい……

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