〈王都動乱篇〉第7話 ドラゴン襲来
最近少し書く時間が増えて来たので、
早目に更新するのを心掛けてます。
(早く書かないと、コンセプト忘れそう...)
北の霊峰と呼ばれる山、
ローザンガルド帝国とシャルロット王国との国境にあり、
重要な軍事拠点となりうる場所なのだが、
未だ、どちらの国も霊峰の頂に到達してはおらず、両国側の霊峰の麓に拠点を構える事しか出来ていない。
霊峰は、中立地帯となっている。
その原因は、山頂に棲息している太古の竜の脅威に依るものである。
世界の生誕期から存在している〈竜種〉と呼ばれる超生命体である。
彼等の持つ膨大なエネルギーは、世界を破壊してしまう程であり、神にも等しい力を持っているとされている。
霊峰の頂に至る道は、比較的に登り易く、大隊を投入しても山頂まで2日と掛からない筈である。
遠征部隊の行軍は、縦に隊列を組み登っていた。
先頭はサイボーグ馬に跨るフェルナンデス国境警備団第1分隊長、その隣に司祭服の男と国境警備団副団長が並び、後ろ前方に2班約100名が続き、中央に魔導機兵5体、後方に残りの隊が続く。
遊撃班は、最後尾に位置していた。
半日行軍を続けて来たが、一向に評議会が動き出す気配は無かった…
それより他に気になる事があった。
(…山に入る迄、感じなかったけど、山頂にいる奴はとんでもないな…これ程の〈神気〉なら街に居ても感じた筈だけど…
多分、霊峰には外界に気が流れ出ないように結界が張ってあるんだろう…)
霊峰に入った途端に強い圧迫感を感じた者も多い筈だ。
行軍している者達の顔が強張り、気が張り詰めている…何かを感じて、皆一様に緊張していたのである。
もう一つ気になっているのは、フェルナンデスの隣に居る教会の司祭と副団長の男だった。
(あれって、間違い無く評議会の回し者だよなぁ。)
夕刻迄登り続け、やっと野営する事になり、
各班毎に別れ野営を始めて見ると、何となくどの班も数名だけ動きがぎこちない者達が居ることに気付く。
「なんか、バレバレって感じ何ですけど?」
クレハが溜息を吐く。
「だよなぁ、あれじゃあ事が始まったら直ぐやられちまうのぉ。」
「全く護り甲斐の無い連中だぜぇ。」
一応俺達は、反対勢力者の顔写真と履歴を頭に叩き込んで居るが、一度に襲われれば護る術はない。
「んじゃあ、オイラ達も行動開始するでよ。」
「そうね、早目に動いとかないと護れないかもね。」
そして俺達は、2〜3人づつに別れ各班へ溶け込んで行く、
各班へ分散し、後方支援を行うと言う名目で入り込み、反対勢力者を保護するのが目的だ。
遊撃班だからこそ、悟られずに出来る事だった。
俺達の作戦は単純なもので、
深夜過ぎに反対勢力者を脱出させ、麓の裏街道に待機させている馬車で王都へ走るだけ。
フェルナンデス分隊長曰く、
「単純な作戦程難しいが、成功率は高い!」
らしい。
霊峰の夜は、肌寒く冷んやりしている。
これと言った事件も起きず、何事も無く深夜になり、
皆が寝静まった頃、俺達は行動を起こした。
見廻りの警備を掻い潜り、
野営地裏の林に次々に連れて来られる反勢力者達。
全員が揃うのに数分と掛かっていなかったのは、遊撃班の手際の良さが際立っていたからだろう。
全部で30人と言った処だろうか、
殆どが、国境警備団の役職者や団員だった。
「さぁ、さっさと移動するよ。グズグズしてたら見つかっちまうからねぇ。」
ライラが、急かせる。
何時迄も此処に留まっていれば、目立ってしまう。
「急ごう。」
俺が、先頭に立ち、
移動を開始しようと歩き出した瞬間、俺の足元が爆ぜる。
(これは?!)
「その場を動くな、みんな伏せて!」
俺は、即座に指示を出す。
足元の地面に穿たれた孔を見ながら…
(何だ…狙撃されたのか?何処から…全く気配が無かった…けど、〈隠形〉…じゃないな、…狙撃者の位置が遠いんだ!)
俺は、全開で五感に波動を送る…
(…見つけた!)
遠くに見える嶺の岩の上に狙撃者が居た。
此処から5km以上離れた場所からの余りにも正確な狙撃…
「何?どうしたのよ、何かあったわけ?」
クレハが、俺の方へ歩み寄ろうとする。
「ちっ!」
俺は、クレハに飛びつき地面に押し倒す。
「な、何?!」
跳ね起きようとしているクレハを左腕で押さえ付ける、片手だったのは、俺の右腕が付け根から消失していたからだ。
「う、嘘でしょ…何が起きてるのよ…」
「超遠距離からの狙撃だ…然もかなり正確な…
多分、動けばやられる…今は動かないでくれ。」
(くそぉ、アイツ…何者だよ、真っ白い服に白い仮面…然もライフルはバレットM82だと…間違い無く【召喚者】だな…)
「どうなってんだよゼロ。敵は何処に居るんだ?」
ゲイルが、小声で叫んでいる。
「あの嶺の岩の上だが、こっちから仕掛けるには遠過ぎるんだよ…」
「嘘だろ、5kmは離れてるぞ!どうやって攻撃してきてんだよ?」
(実際、この距離は有り得ない…それに余りにも正確無比な狙撃…まるでアイツみたいだな…
だったら、こっちから行くしか無いよなぁ。)
「ちょっと、行って来るから…俺の姿が消えたら、移動を開始してくれ。」
そう言って俺は、右腕を再生し…次の瞬間姿が消える。
「おぃ?アイツ、腕生えたぞ?!」
「今のって…し、瞬間移動?!じゃ…」
「何でも有りだな…アイツ…」
瞬間移動で狙撃者の背後に出現した筈だったのだが、
姿が忽然と消えていた。
薬莢だけが2つ落ちている。
「…どうなってるんだ?
全く気配が無いなんて、幻でも見てる気分だ…」
周りを探査してみたが、何も分からなかった。
(…何かがおかしい、足留めする為なら敵さん居た方が…
もし、俺の注意を此方に逸らす為だとしたら…不味い!)
急いで戻るにも、瞬間移動は、魂の力を使い過ぎるから立て続けに使えない…
(まさか…こうなる事を見越してたとしたら…)
俺は、背に漆黒の翼を広げ、天高く飛び立った。
(…くそぅっ、間に合ってくれよ!!)
超スピードで野営地に飛んで行く。
俺が到着した時、遊撃班は既に取り囲まれ戦闘が始まっていた。
遊撃班も善戦している様だが、多勢に無勢だった。
それに、魔導機兵5体も加わっている。
「もう観念したらどうだ?貴様等の企みなどとうに露見していたんだよ!」
副団長が、下卑た笑いを見せている。
その隣にはシュラム聖教の司祭の姿もあった。
「こりゃあ、かなり分が悪いねぇ…」
「ゲイルとブルがやられちまったしのぉ…」
二人共倒れているが、死んではいない様だった。
「これで終いだ、全員でこいつ等を粛正せよ!」
副団長の号令と共に一斉に襲い掛かろうとする傭兵達の目の前に、俺は漆黒の翼を広げ舞い降りた。
傭兵達の動きが止まり、俺の姿を見てどよめきが起こった。
「遅いぞ、ゼロ。まったく、貴様は何をしている?
態々敵の罠にかかりに行くとは、このうつけ者が!」
セイリューから叱責を受ける。
「分かってるよ、これは俺の軽率な行動のせいだ。
後でいくらでもお叱りは受けるさ。
それより、ゲイルとブルは、大丈夫なのか?後は俺が引き受けるから二人の手当てをしてくれ。」
「じゃあ、任せたわよ。
手当てが終わったら援護に行くからそれまで持ち堪えてて!」
ライラが、急いで治癒魔法を二人にかける。
他の者達は、反対勢力者達を護る様に構えていた。
「な、何だ貴様は…その姿…」
副団長が、小刻みに震えている。
根源の恐怖を呼び起こした様だ…
「副団長殿、何をやっているのじゃ!早く…早くあの悪魔を滅ぼすのじゃ!」
司祭が半狂乱になっていた。
「き、貴様等ぁ、何をやっている?さっさと奴等を蹂躙してしまえ!」
副団長の怒声で我に戻った傭兵達に殺気が宿る。
「…俺を怒らせたいのか?」
俺はフルンティングを生成し〈漆黒の波動〉を開放する。
大気は震え、大地は揺れ動く。
波動は奔流となり、霊峰を覆い尽くして行く…
傭兵達は、実感していた…目の前の人非る者に関われば待っているのは『死』…だと言う事を…
「ま、魔導機兵を出せ!あの化け物を叩き潰してしまえ!!」
半狂乱になりそうな副団長の命令で、5体の機兵が進み出て来た。
全高約6m上半身は人型で下半身は蜘蛛の様な姿をしており、巨大な盾と巨大な槍を装備していた。
「…仕方ない、相手をしてやる…潰されたい奴から掛かって来い。」
翼を広げ羽ばたかせると、
凄まじエネルギーを有した突風が巻き起こる。
傭兵達が吹き飛んで行くが、魔導機兵は何とか踏ん張っていた。
一番端の1体が、突然隣の機体に体当たりをブチかます?
将棋倒しの様に4体共倒れてしまった。
(Σ('◉⌓◉’)へ?)
体当たりをした機体は、変な動きを見せ目の前で止まる。
後部ハッチが開き、中から…
「何だコイツは、全く動かしかたが分からんではないか?
最近の機械は扱い難い…が、
それにしては、良い動きだったろ?さっきの一撃は!」
現れたのは、フェルナンデス分隊長だった…のだが、
親指を立てながら白い歯を見せて笑っていた。
(姿が見えないと思ったら、何やってんだこのおっさんは…)
フェルナンデスは、魔導機兵を乗り捨てて、此方に合流した。
ライラに治療されていた、ゲイルとブルも肩を借りながら何とか立ち上がれるまで回復した様だった。
「ゼロ殿、此方は我等に任せ、思う存分やってくれ!」
フェルナンデス分隊長が、威勢良く声を上げ、ガッツポーズを取る。
(なんか、拍子抜けした感が否めないけど…)
その時、俺は後方を振り仰いだ。
凄まじい力を持つ何かが、此方に向かって来ているのを感じからだった。
(おぃおぃ、この気配…かなり、ヤバイのが来てるな…)
「おぃ、お前等死にたくなければ、今すぐ撤退した方が良いぞ?
もうすぐ此処に災厄がやって来る…急がないと全滅しちまうぜ。」
俺は、大声で敵さんの方へ忠告した。
「う、うるさい、貴様の言葉などに耳を傾ける訳がない!この悪魔め!!」
司祭の男の目は異常に血走っている。
前にもこんな奴がいた気がするが、今はそんな事はどうでも良かった。
「フェルナンデスさん、急いでその人達を退避させて!
早くしないと間に合わなくなる!
セイリューとメリーナさんは、ゲイルとブルを連れて一緒に退避してくれ!」
セイリュー達は、指示に迅速に対応する。
フェルナンデスさんも、反勢力者達を連れ急いで山を下って行った。
見届けると同時に敵傭兵から声が上がり始めた。
「おぃ、アレ何だ?」
「ありゃあ…ドラゴンだぞぉ!」
「うわぁ、何体もいるぞ!」
傭兵達の背後でドラゴンが暴れ始めていた。
現れたドラゴンに怯まず、波状攻撃を仕掛けて行く傭兵達は流石だったが、相手が悪すぎた。
ドラゴンの硬い体表に攻撃は跳ね返され、全く通じない。
強烈な竜の息で焼かれ、強靭な尾で吹き飛ばされて行く。
「見過ごせるわけ無いよなぁ、やるしか無いか…」
俺は、全身に〈波動〉を満たして行きながら、一歩前に出る。
「御節介ね…ゼロ君どうせ助けに行くんでしょ?」
ライラに見透かされ、小さく頷いた。
「仕方ないわねぇ、あたい等も手伝ってあげるわよ!」
「ドラゴンには、鋼は効かぬでなぁ。
儂等の魔法が一番効果的じゃからの…仕方ないから、加勢してやるわい。」
ライラとガン爺が助っ人に加わってくれた。
「旦那ぁ、俺等も行きやすぜ。
ドラゴンと闘えるなんて楽しみだぜぇ。」
「ドラゴンなんて、倒したら異名が付くかも知れないしねぇ。」
「オレも一度闘ってみたかったしのぉ。」
ゴルドス、クレハ、ガンズも笑みを浮かべながら走って行く。
(まったく、皆素直じゃ無いんだから…今は、敵とは言っても戦友を助けたいんだろう…)
俺も猛り狂っているドラゴンの群れに向かって飛び立つ。
クレハ達は、一匹のドラゴンに3人で取付き、奮戦していた。
全部で6匹のドラゴンが暴れていた。
体長8m程あるドラゴンは、土色の体表に丸太の様に太く長い尾を持ち、ブレスは、マグマの様な超高熱だった。
背に羽根は生えていない事からアースドラゴンだと推測される。
ライラとガン爺は、傭兵達の援護に回り2匹のドラゴンの相手をしていた。
魔導機兵はまだ再起動していない様で、参戦出来ない。
俺は3匹のドラゴンの真ん中に降り立った。
俺に気付いたドラゴンが、尾を振り襲い掛かって来た。
俺は、右手を出し強烈な尾を難なく受け止める。
(…コイツ等、知性のカケラもないなぁ。)
掴んだ尾を軽く振り回して隣のドラゴンに投げつける。
3匹目がブレスを吐く。
超高熱の息の中を悠然と歩いて行き、ドラゴンにアッパーを叩き込む。
衝撃でドラゴンが吹き飛ぶ。
有り得ない光景だった、ドラゴンを片手で投げ飛ばし、素手で殴り飛ばした奴が目の前にいるのだ。
静まり返った傭兵達は、突然火が着いた様に歓声が沸き起こった。
(へっ?(´⊙ω⊙`))
「ウォォッ!凄いぜ、兄ちゃん!」
「やるじゃねぇか、ルーキー!」
ドラゴン達が首を振りながら起き上がって来た。
(ありゃあ、かなりタフだなぁ…)
立ち上がって来た1匹が高音域の咆哮をあげた…
ライラ達と闘っていたドラゴン達を呼び寄せ、俺を取り囲む様に5匹のドラゴンが集まって来た。
もう1匹は、どうやらクレハ達が倒した様だった。
倒れているドラゴンに足を乗せガッツポーズを取るクレハが見え、そちらでも歓声が上がっていた。
(どうやら、こっちは俺一人に狙いを絞って来たみたいだなぁ…)
俺を取り囲むドラゴン達の感情が伝わってくる…
(…怒りとかじゃないな、此れは…俺に対する恐怖?
あれ、ちょっと待てよ…って事は、俺が力を開放したからこのドラゴン達は、ビビって襲って来たんじゃあ…)
俺が、又しても自責の念に囚われようとしていた。
「そうじゃ、ドラゴン共、その悪魔が全ての元凶じゃ!
とっとと食い殺してしまえ!」
大量の汗を流しながら血走った眼で、喚き散らしている司祭の男。
(元凶は俺かも知れないから否定はしないけど…煩いなぁ、あのおっさん…あれ?そう言えば、副団長の姿が見えないな?)
辺りを見回してみたが、戦闘には加わっていない…
遥か彼方に人影が見える…山を下山して行くサイボーグ馬に跨り敗走して行く一団…の先頭に副団長が居た。
「急げ、撤退だ!ドラゴンなんかと戦っていられるか!
命がいくらあっても足りんわ!」
(ありゃ?一軍の将が、真っ先に逃げ出すのか…
こりゃあ、クーデターも成功しないだろうねぇ。)
敗走する一団の前に新たなドラゴンが2匹現れ、副団長達に襲い掛かり、蹂躙していく…
抵抗する間も無く、全滅してしまった。
(あちゃぁ、ご愁傷様です…)
その2匹も加わり、7匹のドラゴンに囲まれた。
ドラゴン達は、喉を鳴らしながら尾を立てて俺を威嚇している。
「ゼロ、加勢してあげるわ!」
ライラが、支援魔法の詠唱を始める。
俺の周りを淡い光が包み込もうとしたが、一瞬で霧散してしまった。
「え?…何で、魔法が掛けられないの?」
「あー、悪い…多分この状態の時は、魔法耐性が発動してるみたいだから、効かないかも…」
「はぁ?何それ、支援魔法も弾いてるんなら世話ないじゃない!」
ライラの言ってる事はもっともなのだが、自分で調整は…まだ出来なかった。
「悪りぃんだけど、他の客も来そうだから、少し下がっててくれないかな?
力を開放するから巻き込んでしまうかも知れないし…」
「…他の客って何なのよ?」
ライラが質問した瞬間、上空から咆哮が聞こえ、遊撃班と
傭兵達は、一斉に咆哮がした方へ振り向いた。
彼らの視線の先には、
無数に飛来して来る飛竜の姿が映っていた。
傭兵達から声が上がる。
「飛竜の群れだぁ!」
「嘘でしょ?何なのよあの数…」
ライラが、絶句するのも仕方がない、飛来する飛竜の数は少なく見積もっても30匹はいた。
傭兵達も臨戦態勢になる。
クレハ達が、ライラの元へ駆け寄って来る。
「数が多いわ、全員で協力しないとマズイかもね…」
クレハが推測している通り、飛竜はかなり危険な生物で知られていた。
竜種独特の硬い体表に、飛翔能力。
ブレスの代わりに火球を吐く事でも知られていて、
性格は至って凶暴だった。
「やるしか無いのぉ、やらなけりゃ全滅するのぉ。」
ガンズが、大戦斧を振り回しながら叫ぶ。
「よっしゃあ、腕がなるぜぇ!
窮地に陥った時が俺様の本領発揮だぁ!!」
ゴルドスが奮い立つ…
「窮地に陥いる前に発揮しなさいよ。」
クレハに突っ込まれている。
戦闘が始まった。
飛竜の群れの火球攻撃を傭兵団の魔法士達が防御魔法で防ぎ、遠隔魔法で地に落とし攻撃を仕掛ける。
即席とは言え、連携が良く取れている。
しかし、飛竜の数が多過ぎる。
傭兵達は、徐々に押され始めていた。
至る所で負傷者が出始め、戦局が傾き始めたが、
魔導機兵が復活し、戦線に加わった事で持ち直した。
「よっしゃあ、まだやれるぜぇ!」
「喋ってないで、手ェ出しなさいよ!」
また、突っ込まれてる…
どうやら、ゴルドスとクレハの息は合っている様だ。
皆、善戦してはいるが…これだけのドラゴン相手では、分が悪過ぎる。
魔法士達が狙れ、防御魔法が消えてしまい、守りの要が無くなる…
そして、飛竜の蹂躙が始まる…
傭兵達は、皆覚悟を決めている様だった。
勝ち目は、もう無いと知ってはいても、逃げ出す者は一人としていない…
最後の最期まで戦い続けるのだろう…
仲間は傷付き倒れ、皆瀕死の状態だった。
遊撃班も被害は大きく、皆気力でなんとか立っているだけの状態だった。
其処へ襲い掛かってくる飛竜達の口は大きく開き、今にも火球を放つタイミングで、一陣の風が吹き抜けて行った。
数体の飛竜の首と胴が離れ、地面に落下して行く…
「?!」
「な、何だ?何が起きている?」
傭兵達は、何が起きたか理解出来ていなかったが、
遊撃班の皆は、背後で地龍と戦っている筈の俺の方へ振り返った。
しかし、其処には7匹の地龍が地面に転がっているだけで、俺の姿は無かった…
「嘘…でしょ…地龍が、全部倒されてる…」
「あの数を一人で倒しやがったのぉ。」
「あ…」
ライラが、飛竜よりも更に上空に、漆黒の翼を広げる人影を見た。
(…これだけ離れれば、全開でもいけるかな?)
俺は〈魂の力〉を解放した。
波動は激動に成り、奔流となって世界を覆い尽くしていく…それに呼応するかの如く、大気は震え、大地は鳴動する。
全身に力を流し込み、フルンティングへも力を集約していく…刀身が、黒く変色していき、輝きを放ち始める。
大地に倒れていた傭兵達も、遊撃班にも天空に舞う、漆黒の戦士の姿が、神々しく映った。
飛竜達は、上空に新しく現れた敵に狙いを変え、咆哮を上げながら、一斉に襲い掛かる。
火球を吐き、襲って来る飛竜達。
フルンティングを軽く振り、いくつかの火球を切り捨てつつ、残りの火球を交わす。
超スピードで飛翔しながら、鋭い牙や爪で波状攻撃を仕掛けて来るが、全て交わす。
(…なんだ、これ?
…アイツらの感情が分かってしまう…次にどう攻撃して来るのかが、ハッキリ見える…)
全身に〈魂の力〉を流し込んだ結果、全ての感覚が研ぎ澄まされ、予知能力に近い力を使える様になっていた。
背後からだろうが、フェイントだろうが…どんな攻撃も今のゼロには、通用しない。
飛竜達を掻い潜り、更に上昇して行く。
後を追い迫って来る飛竜達…
フルンティングを上段に構えながら力を溜め、一気に爆発させる!
超々高速で繰り出された剣は、音速を遥かに超え、超音速になり、ソニックブームが起こる。
〈漆黒の波動〉を乗せたソニックインパクトは、【漆黒の衝撃】となり、飛竜達を貫き抜けて行く。
飛竜達は、凄まじい衝撃を受け昏倒し、地に落ちて行った。
「一撃?!」
ゼロが、折り重なって大地に倒れている、飛竜の上に漆黒の翼を広げ舞い降りる。
誰一人声が出なかった。
目の前にいる翼の生えた戦士は、一振りで数十体もの飛竜を倒す存在…まさに、神に等しき力を持っているのだ。
神の如き戦士がゆっくり振り返ると、傭兵達に微笑みながら、
「みんな無事かな?」
と、声を掛けた。
大歓声が沸き起こった。
「ゼロの旦那ぁ、あんたどんだけ凄ぇ人なんだよ?!」
ゴルドスが、駆け寄って来た。
クレハに肩を借りながらガンズもやって来る。
「お前、ヤッパリ人じゃねぇのぉ。」
「【転生者】って、戦の神様かなんかじゃないの?
まったく、あなた強過ぎだわ。」
傭兵達に囲まれ、讃えられる。
歓声は鳴り止まず、ずっと続いていた。
傭兵達の中から、ライラとガン爺も進み出て来る。
「ゼロ、あんたホント凄過ぎだわ。
地龍も飛竜も一人で倒しちゃうなんてね。」
「お前さんの様な輩は、古今東西聞いた事がないわい。」
二人共笑いながら賛辞をくれる。
「地龍1匹は、クレハが倒してたけどねヾ(๑╹◡╹)ノ"」
「そ、そうよ!私も頑張ったでしょ?」
「あぁ、竜殺しは、殺した竜の力が宿るらしいから…クレハもドラゴンボディとブレスが顕現する筈だよ。」
(俺の中にある〈森羅の知恵〉から聞いた受け売りだけどねぇ。)
「ホント?!って事は、私も異名が付くかなぁ?」
クレハの顔が晴れた様に明るくなる。
「そうだなぁ…【大地の竜撃】なんていいんじゃない?」
少し考えて、ネーミングしてみた。
「【大地の竜撃】…良いわねぇ、それ頂くわ!」
クレハが気に入ってくれた様で、凄く喜んでいる。
それを見ていた遊撃班の面々も口許が綻んでいた…
だが、安堵の時ではなかった様だ…
俺達は、忘れていた…
この霊峰に棲息しているドラゴン達の長がいる事を…
巨大な影が、俺達を覆う。
凄まじい霊気の衝撃が襲い、振り返る間も無く全ての傭兵が気絶してしまった。
立って居るのは漆黒の翼を持つ者だけだった。
次話で色々話を纏めないと流れが分からなくなりそう
( ̄▽ ̄;)
読んで下さってる方々からのご意見、ご感想お待ちしてますm(_ _)m




