狩人たちはかくありき②
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アルとレザが『アルテミ』本部へと帰ったあと、ハイアルムはクロートとレリルに翌日の朝一番で報告に来るよう告げて戻っていった。
報告のためハイアルムの部屋の前にずらりと並んだ【迷宮宝箱設置人】と【監視人】を思い出し、クロートはこの時間も待たされているのかなと気の毒に思いつつ、隣でふーっと息を吐き出すガルムへと向き直る。
その動きを察したガルムは難しい顔をして腕を組み、横目でクロートを窺った。
不満そうな顔のクロートの向こう側で、レリルが困ったように笑っているのが見える。
「それで? 父さんはどこに行くんだよ?」
「あー、まあ、言いにくいんだが、アーケインを捜しに行こうと思ってな――」
クロートは答えを半ば予想していたのか、ため息交じりに肩を落とす。
「それなら、俺も……ってのは無理なんだよな?」
「ああ。これは【迷宮宝箱設置人】としての仕事みてぇなもんだからな。お前に話した通り、あいつのことはあいつの物語を読めとしか言わねぇし、言えねぇぞ」
ガルムは突き放すように――声音には心配が混ざっていたが――言い切った。
クロートは二回頷くと、思いのほか落ち着いた様子で応える。
「まあいいよ。六級なんて言ってないでさっさと三級までいけば『イミティオ』のこともわかるんだろ? ――悔しいけど、俺たちに経験が足りないってのはなんとなくわかるし……あいつら、強そうだったし」
俺たち、とはクロートとレリルのこと。あいつら、とは『アルテミ』の面々のことだろう。
ガルムはそれを聞いて、思わず込み上げてきた熱いものを必死で飲み下した。
自分が思っているより、クロートははるかに早く成長している。それを感じ取ったからだ。
「それなら、今日はさっさと休め。出発までは俺が稽古を付けてやる」
ガルムは膝をぽんと打つと、革張りの上等なソファーを軋ませて立ち上がった。
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「あー、もう。なんだよあれ! もっと早く教えてくれればいいのにさ!」
ガルムが去った大きな部屋。
残されたクロートは盛大に文句を吐き出して、ソファーの背もたれにどすん、ともたれかかった。
レリルはその姿に思わず笑ってしまう。
「そんなに一緒に行きたいなら、お願いしてみようよ?」
「無理無理。父さん、頑固だし! 一回決めたら絶対に無理! 俺、いっつも宿に残されてたんだからな」
頭の後ろで両手を組み、クロートはふんと鼻を鳴らす。
レリルはへぇ、と相槌を打つと、目を閉じて唇を尖らせているクロートに言った。
「でも、ガルムさんが出発まで稽古を付けてくれるって言ってたね」
「――ああ。悔しいから、俺たちで一回くらい負かしてやろう。ちょうど連携の練習にもなるし」
「……!」
レリルは、当たり前のように放たれたクロートの返事に驚いて、目を瞠る。
さっきもクロートは『俺たち』と言った。それは別におかしな話ではない。
レリルは【監視人】で、クロートは【迷宮宝箱設置人】……少なくとも、五級を終えるそのときまでは行動をともにしなければならないからだ。
けれど、レリルにとって――自分を一括りにして考えてもらえることは――とても甘美で、いつまでも味わっていたい感覚だったのである。
まるで家族。彼女は、自身をそのように扱ってくれる存在を欲しているのかもしれない。
「……なんだよ?」
クロートは黙っているレリルに向けて、器用に左目だけ開けて聞いてくる。
「あ……ううん。連携の話、覚えててくれたんだなぁって」
「? ついさっきの話だろ。そこまで忘れっぽくないからな、俺」
「あははっ、そういえばそうだね」
レリルはクロートに向けて笑うと、テーブルに残されていたお茶のカップを集め始めた。
その動作は心なしか軽く、弾むような楽しげな雰囲気を纏っている。
レリルはクロートにとって『そこにいることが当たり前の存在』なのだろう――少なくとも、いまは。
……家族がいないレリルにとって、期間限定であっても……それは嬉しかった。
「……?」
クロートは機嫌のいいレリルの横顔に、ただ首を傾げるのであった。
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本日分です!
よろしくお願いします!




