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戦後処理その3

 戦後処理が一段落し、町の大通りにも、以前のような賑わいが戻ってきた。混沌の勢力は混沌の領域に舞い戻り、マーチャント商会も軍勢の第二弾を送ってくる様子はない。騎士団も随分と大人しくなり、今のところ事を起こそうとは考えていないようだ。

「残念だわ。もう少し、居られればいいのだけど……」

 クラウディアは、いかにも残念そうに言った。

 この日、ダーク・エルフの精鋭30人が帝都に引き揚げることになっていた。

「マーチャント商会の動きも気になるし、もう少し留まっているべきなのだろうが、こちらにもいろいろと事情があってね。悪いけど、今日でおいとまさせてもらうよ」

 と、ガイウス。ちなみに、帰り支度はすっかり整っている。

「いえ、こちらこそ、長々と引きとめたみたいで…… あなたたちのおかげで、今回のピンチもどうにかしのぐことができて、感謝しているわ」

「それでは…… でも、近いうちに、また……」

 クラウディアはわたしの手を握り締めた。ダーク・エルフたちは、思い思いの方法で、すなわち、得物にまたがって空を飛んだり、テレポートの魔法でその場からスッと姿を消したりして、ミーの町を離れていく。


「ああ、そうだ。一応、これは伝えておいた方がよさそうだな」

 ガイウスは、ふと何かを思い出したように言った。

「伝えておいた方がよさそうって…… 何を?」

「我々が出発する直前までの帝都の状況を少しね。大した話ではないが……」

 ガイウスによれば、帝都では戦争準備が進んでいるとのことであった。ただ、これは、期待していた内線の勃発とは少し違って、ツンドラ候を味方につけて強気になった帝国宰相がドラゴニア候を帝都に呼び出したが、ドラゴニア候は何やかやと理由をつけて一向に現れないので、とうとう業を煮やした帝国宰相が、ドラゴニア候の追討を命じたということ。そのうちこちらにも出兵の要請か命令が来るかもしれない。そんな余裕はないのに……

「それともうひとつ、帝都で奇妙な噂が広まっていてね。真偽不明だけれど……」

 もともと「真偽不明」だから「噂」なのだろう。最初はそう思って突っ込みを入れてみたくもなったが、聴いているうちに、「真偽不明」と一言付け加えたくなるのも分かるような気がしてきた。

 その噂とは、本当に突拍子もないもので、北方のツンドラ候の領地か巨人の国のどこかに、皇帝陛下の御落胤がいるに違いないというもの。

「眉唾物だけどね。一応、そんな話もあるということだ」

 ガイウスはクラウディアの腰に手を回し、

「それでは、また」

と、テレポートして二人とも姿を消した。


 御落胤って…… 一体、なんなんだか。わけが分からないままに終わりにするのは、気分的にスッキリしないけど、ともあれ、長くなったこの物語、この辺りでとりあえずは幕としよう。

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