ゲテモン料理の食材
わたしは地下室のドアを開け、
「こんにちは。ガイウスかクラウディアは、いるかしら?」
すると、丁度うまい具合に、ガイウスとクラウディアが二人、ティータイムを楽しんでいるところだった。
ガイウスは、わたしの姿を認めるとカップを置き、
「いきなり御指名かな。見てのとおり、この部屋にいるのは私とクラウディアだけだが、何か用かい?」
「実は、相談というか、お願いというか…… 早い話、ゲテモン料理の材料に心当たりがあれば、教えてほしいんだけど、何か知ってる?」
「ゲテモン? 悪いが…… 話のスジがサッパリ見えてこないのだが……」
まったく予想外だったのだろう、ガイウスは目をパチクリ。
わたしは二人に、ツンドラ候と帝国宰相を和解させて動乱を誘発すること、そのためにツンドラ候の好物のゲテモン料理が必要なこと、それゆえにゲテモン料理の食材を用意しなければならないことを話した。一応、包み隠さず情報はすべて伝えたつもり。この二人になら、とりあえず裏切られる心配はない。
ガイウスは、わたしの話を聞いている間に何度かうなずき、話が終わると、
「ようやく得心がいったよ。アイデアとしては面白いと思う。ただし、考えているようにうまくいくかどうかは分からないがね」
「適当な食材に心当たりはないかしら。ゴブリンやオークでも食べるのに躊躇するくらい、ものすごくて、すぐに手に入るのがいいわ。でも、食べても命に別状がないものでないと」
「そうだな、すぐに手に入る、ものすごい食材か……」
ガイウスは腕を組み、考え始めた。一般論としても言えることが、要求を出すだけなら簡単だけど、それに応えることは容易ではない。
「あの~……」
その時、クラウディアが、若干、ためらい気味に手を上げた。
「クラウディア、何かいいアイデアがあるの?」
「いいかどうかは微妙ですが、すぐに手に入り、とにかくすごいものとしては、例えば、帝都の下水道に生息しているブラックスライムやトログロダイトなどは、いかがでしょうか?」
「スライム? でも、それって……」
「そうです。一応、モンスターに分類されるものですが、ブラックスライムを布やネットでこして器に入れ、一気に飲み干したり、トログロダイトの尻尾をぶつ切りにしてテールスープにするのが、外道がこよなく愛する珍味だとか……」
するとガイウスは手をポンとたたき、
「なるほど、その手があったか。常人が食べるものではないが、少なくとも、命に別状はないな」
命に別状はないとしても…… まあ、この際だから、なんでもありということで。




