9 亜人種
黒い紐に捕まったハンターたちが光の玉を取り出そうと必死にもがいていた。その時、上空から黒いシルエットが落ちてきた。
殺意は感じられない。それは同じ吸血鬼だった。着地して早々、Bランクの吸血鬼は慌てた様子で言う。
「ちょ、ちょうどよかった!! 助けろ同胞!!」
「は? ふざけるな。今は取り込み中だッ」
次の瞬間、凄まじい跳躍を終えたナニかが落下してきた。高く跳んでいるそれは女性だった。彼女は地上にいる二人の吸血鬼を見ていた。
「……増えた、か? なんかの能力か? あーッ。しゃらくせぇ!! まとめて逝けやッ!!」
助けを求められたヴァンパイアは叫ぶ。
「てめッ。なすってんじゃねぇぞ!!」
彼女は左手にガントレットのようなものを装着している。ただしそれは彼女の体に似合わず巨大であった。二人の吸血鬼は闇のシールドで自身を守る。シールドに触れた瞬間、大爆発を起こす。
二人の吸血鬼は地面に転がった。彼女を知っている者が驚いて叫んだ。
「リ、リリンさんッ……」
「ん? ……バーで見た顔だな。そっちの四人は……ギルド関係者か?」
「はい。恥ずかしながら不覚をとってしまって。助かりました」
ガンナーの二人が起き上がろうとした吸血鬼の急所をなん度も狙い、絶命させる。リリンはわざと彼等にとどめを刺させたようであった。
そして、死亡を確認するとリリンと呼ばれた女性は歩いて近づいてくる。四人はギョっとなり、硬直した。幼い顔、身長が130㎝程度しかなかったからだ。しかし、しっかりとした鍛えられた体つきをしている。
美雨がうろたえる。
「そ、その子は?」
「その子だァ?」
「こちらはリリンさん。Sランクのハンターだよ」
「嘘!?」
「Sランク!? その姿……もしかして亜人か……」
「そう、彼女は小人族。見た目には驚くと思うけど大人であり、一流のハンターさ」
「知らないとはいえ……ごめんなさいっ」
「まあいい。取りあえずギルドに報告だな。分け前は均等にするか」
「え? リリンさんが明らかに損しますよっ」
「別に良い。金が必要ならその時にまた倒せばいいだろうが」
ギルドのガンナーが始めてみた女性を見て呟いた。
「か、かっこいい……」
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