三十一話 03 偏向報道
俺達は国王の謁見の間を抜けて、真っ直ぐ城を出る廻廊を進んでいた。
バタンッ
突然正面と後ろの扉が閉まる。
「待ちたまえ」
「何だ?」
後ろを振り向くとそこには6人ほどの男が居た。
「私は衛騎士団4番隊副隊長のルカイト。先程の王への侮辱的な態度と王を守護する近衛騎士団への冒涜許さん! テルト・リバース貴殿に決闘を申し込む!」
「そんなっ!」
衛騎士団4番隊副隊長だと名乗った男は、薄い栗色の髪に全身豪華な装飾のある銀色の甲冑を身に着けていた。
他の男も同じ様な甲冑なので全員近衛騎士だろう。
「殆ど闇討ちじゃねぇか! でも分かってんのか? テルトは《S級》なんだぜ、副団長だか知らねぇが相手になるかよ」
「心配無用だ私も《S級》だ」
「なっ騎士団も階級があるのかよ!」
《S級》とかって言う階級は冒険者だけじゃなくて、共通の強さの指標なのかもしれない。
柔道や剣道なんかの段位に近いのかも。
「……良いけど。俺は今日剣をを持ってきていない」
チャキン
ルカイトが剣を抜いて軽く目の前の空に向かって一振りした。
「ふんっ。冒険者に剣など勿体ないだろう?」
「卑怯だぞ! 素手相手に剣なんて!」
周りにいる騎士達もニヤニヤと笑っていた。
大層ご立派な近衛騎士様達です事。
「ならこうしよう……《蛇畝く雷迅》」
バチバチ……バチンッ!
俺はまた《スキル連結》《劈く雷迅》と《蛇畝る雷侵》を《スキル連結》させて、ルカイトが剣に放った。
《蛇畝る雷侵》の効果で剣の付け根の一番細い所を集中して数10回ほど爆雷させる。
カキィンッ……! カーンッ! カンッ、カン、カカンッ!
「なっ⁉」
ルカイトの剣は根本からポッキリと折れ床に刃が落ちた。
「そんな! 剣が! 貴様何をした!」
「俺はスプーン折りが得意でね」
宴会芸で練習していたスプーン折りがここで役立った。
俺の自身のレベルも上がっているから、刃を付与強化する前の剣だったら折る事も出来る。
「誰か代わりの剣を寄越せ!」
やってみろよ。
剣を受け渡そうとしたらすかさずその剣も同じ様にへし折るだけだ。
バタンッ!
「何をしているのですか! 止めなさい!」
「ロッ、ロイナード様」
突然後ろの扉が空いてロイナードが入ってきた。
「こんな所で決闘とは愚かな事を。下がりなさいルカイト」
「しっ、しかし!」
「なんだよ知り合いか?」
ロイナードは随分顔が広いんだな。
と言うか近衛騎士団副団長のルカイトってやつの方が低姿勢だし。
賢者様とやらはこの国じゃ相当な権威を持ってるらしい。
「まったくテルトさんも無茶をしますね。この場は私が何とか治めますから早くお帰りなさい」
「悪いなおっさん」
あのまま続けていたら6人の近衛騎士全員が襲って来そうだった。
こっちは4人だし無傷では勝てなかっただろう。
それに騒ぎが大きくなれば俺達の方が分が悪くなる。
それなりに助かった。
「さあルカイトこちらへ来なさい」
「くっ……!」
ルカイト達はロイナードに引き連れられ王城の奥へ戻っていった。
王城内は完全にアフェーだ早く出よう。
◇◇◇
ロイナードは王城内の手近な部屋にルカイト達を押し込んだ。
「何故止めたのです! 国王を侮辱されたのですよ! 叩きのめして立場を分からせるべきです!」
「やれやれ……、私は貴方と貴方の名誉を守ったのですよ」
このルカイトはまるで分かっていない。
ロイナードは頭が左右に揺らしながら呆れた表情をする。
「どういう意味ですか!」
「ルカイト、確かに貴方のスキルは強力です。しかしそれは所詮はスキルの強さ、貴方の強さでは無い」
ルカイトは生まれながら剣撃スキルに恵まれ、その剣技を放つだけで並の者は太刀打ちできない。
所謂天才だった。
「……どういう意味ですか」
「テルト・リバースの強さはスキルを抜きにして本物なのですよ。貴方の敵う相手ではありません」
「そんな馬鹿な!」
故にルカイトには本質的な自身の強さが身についていない。
先程の一瞬のやり取りで実力では圧倒的に劣っている事さえ見抜けない。
確かに王宮には40人を超える《S級》相当の猛者が要る。
だが《S級》等という等級では測れない強さが有る。
特にアグニスとテルト・リバースの2人は底知れない強さを隠し持っている。
ひょっとしたら世界最強を自認しているロイナードに既に比類しているかもしれない。
◇◇◇
城下町に戻ると《マジックビジョン》で丁度《魔物大氾濫》の冒険者の活躍特集が放映されていた。
『……このように《S級》冒険者《蒼炎の大掟》の方々の大活躍により、《魔物の大氾濫》を乗り切った訳です! 凄いと思わないかい? レケット』
『本当凄いですねマッケロさん! 《ギガントクラス》と呼ばれる強力な魔獣まで倒してしまったんですってね?』
『そうなんだよね。《ギガントクラス》の魔獣はその大きさは王城より高かったと言われてるからね、まさにギガントなわけだ!』
この2人を見てるとまるで海外のコメディを見てる様だ。
懐かしいような懐かしくないような感じになる。
「流石は《蒼炎の大掟》だ!」
「指揮を取ったのはあの賢者ロイナードなんだろ?」
「アグニス様素敵!」
「オメロスさんもやるときゃ決めるぜ!」
「ビグザールも相変わらず怪力だ!」
《マジックビジョン》を見ていた聴衆は口々に《蒼炎の大掟》を褒め称える。
後半は結構いい加減な褒め方になっていた。
『所でマッケロさん、《S級》冒険者と言えば若くして特例で冒険者になった《極昂の虹》なども活躍したと聞いていますが……』
『ああそうだねレケット、彼等《極昂の虹》を含め《紅蓮の菱盾》、《疾風の狼士》、《暗影の黒犀》等も大活躍だったらしいね』
『そっ、そうですね!』
レケットが《極昂の虹》の名前を出してくれたけど、すぐにマッケロによって大勢の冒険者の話題に切り替わる。
「何だか私達の扱い小さいですね」
「けっ、全部《蒼炎の大掟》の手柄かよ」
「まっ、あんな事しちゃったしね偏向報道くらいの嫌がらせはされるさ」
もし勲章を素直に受け取っていたらもう少し扱いが大きかったかも知れない。
でも俺は後悔はしていない────
続きが気になる方はブックマーク登録と、面白かったら下の☆☆☆☆☆のクリックをお願いします。




