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十六話 02 武器カスタム

 俺はゴルトン雑貨店で手伝いをしてたエナを近くの空き倉庫に呼んだ。

 ついでにシャロン一緒だ。


「話って何ですか」

「考え直したんだ、エナさえ良ければ一緒に《陽炎の迷宮(ダンジョン)》に行こうと思う」

「本当ですか⁉」

「ただし危険だと思ったらまた考え直すけど」


 神妙にしていたエナの顔がほころんだ。


「はい! よかった! でもどうして急に?」


 エナは嬉しそうにはしゃぎ、それを見てシャロンも尻尾を揺らした。

 クーベルに言われて考え直したなんて言いたくないし。

 話を次に進めよう。


「ちょっとね。それで、昨日の魔物との戦いで思ったけど、お互いに持ってる魔法とスキルを知っておきたいんだ」

「私も同じ事思ってました」

「俺のスキルは結構多いから、先にエナから教えてくれる? 戦闘に使えるのだけでいいよ」


 俺が戦闘に使えるスキルは10個はある。

 全部一度に全部話すと大変だし先にエナのスキルを聞こう。


「はい。えっとまずは氷魔法の《空絶の氷槍スティーリア・ランケア》ですね。氷の棘を飛ばせます」

「昨日の魔獣との戦いでも使ってたよね」

「はい。1つの塊を撃ち出すのと、打ち出した後に10個くらいに分裂するのを使い分けられます」

「へぇ」


 《空絶の氷槍スティーリア・ランケア》がエナのメイン攻撃魔法だろう。

 確かに強力なのは確認済みだ。


「威力は1つの方が強いんですけど、あまり上手く当てられないので」

「その魔法は連続で何回使える?」

「試した事が無いからわからないです」

「そっか……」


 俺みたいに自分のSPが見えないのかな。


「1発目を撃ってから2発目はどれくらいの間隔で撃てるの?」

「1分以上かかります」

「それは……、結構キツイかもな」

「頑張って早く作れるように練習してみますけど」


 翻訳された1分が本当なら激しい戦いでは長過ぎる。

 たとえ練習して半分の30秒になったとしても長い。

 これは何とかしないとな。……あっ、良い事思い付いた。


「他には?」

「攻撃魔法はそれだけです……」


 攻撃手段は1つだけか。

 でもゲームと違ってこの世界は水魔法を無効や吸収する魔物なんて居なそうだ。

 氷魔法はむしろ物理だし1つでも問題ないだろう。


「それ以外のスキルは?」

「昨日も使った《氷霧の階梯(グラチェス・ティエロ)》です、氷の粒の動きを時間を止めて、その上を歩く事が出来ます」

「動きを止める? それは凄いね」

「ただこの氷の粒は私しか乗れなくて、テルトが乗っても氷が砕けちゃいます」


 時間停止とかヤバいと思ったけど流石に無敵の反則魔法じゃなかったか。


「そっか、他には?」

「《氷衣の盾壁グラチェス・スクトゥム》と言う炎に強い魔法の壁です。結構広げられるので近くに居ればテルトも守れると思います。物理攻撃とかは殆ど防げないですけど」

「へぇ、後で実際に見てみたいな」


 火を吐くドラゴンとかが居れば活躍しそうだ。


「はい、これだけですね」


 戦闘に使えそうなスキルは3つか少ないな。

 でもこれが普通なんだろう。俺がミッションでスキルを大量に手に入れられるのがチートなんだ。


「そっか……、シャロンはどうなの?」

「わかんない!」

「シャロンは戦闘用の使い魔じゃないので、あまり期待しないで下さい」

「まあそうだね……」


 シャロンと何度か一緒に戦ったけど確かに戦闘スキルを使ってる所は見た事がないし、多分持ってないんだろうね。

 ただ不思議とシャロンが傷付いてるのを見た事も無い。素で防御力と回避力が高い感じがする。


 俺はエナに魔法を見せてくれる様にお願いした。

 ついでに魔法の原理の解説も知りたかった。


「この魔法は火、雷、水、風、地、邪、時の八属性のうち、『水』と『風』と『時』を使います」

「うん」


 エナが杖を掲げながら属性の説明をしてくれた。

 俺は知ってる感じで返事をしたけどそれ初耳だった。


 カーミラから教わってないぞ!

 まあ俺には魔法の才能がないらしいから当然か……。


「まずは杖の先の魔結晶に、水魔法で空気を水に変えて、同時に時魔法で凍らせます」

「ふぅーん?」


 杖の先の魔結晶に水滴が付いて、それが次々にピキピキと凍っていく。

 時魔法で凍らせるとは?

 俺の知ってる時魔法と違うんですがそれは。


「氷の槍が出来たら、次にその根本に風魔法で空気を集めます」

「おおっ……!」


 エナの周りに風が巻き起こり、髪や服を揺らしながら杖の先端に収束して行く。

 凄く……魔法っぽいです。


「そして最後に風を解放させて……《空絶の氷槍スティーリア・ランケア》!」


バッシュ‼ ザシャンッン‼


 俺が倉庫に置いてあったガラクタで作った的に、氷の槍が突き刺さる。


「凄い……改めて見ると凄い威力だ」

「威力だけなら火の攻撃魔法より上ですよ」


 俺はその火の攻撃魔法を1回も見た事が無い。

 見てみたいなぁ。


「それでその杖の魔結晶って特殊なものなの?」

「はい、火魔法なら火専用の魔結晶でないと駄目です」


 魔結晶は魔石を精製して作られる物で魔法の威力を高めたり特殊な魔法を使うのに利用される。

 俺の雷魔法もこれで威力を上げられるらしかったけど、雷魔法は危険らしいので試していない。


「その水魔法用の魔結晶っていくらくらいするの?」

「安い物でも大銀貨1枚はすると思います」

「そっそんなに⁉」


 大銀貨1枚は500ルドつまり5万円くらいの値段だ。いや安いのかも。

 でも俺の考えてるアイデアを実現するにはやっぱり高いな。


「テルトも使うんですか? でも難しいですよ水魔法」

「いや違う違うよ、次を見せてよ」

「はい!」


 エナの残りの魔法も見せてもらった。


 《氷衣の盾壁グラチェス・スクトゥム》は本当に火だけを防ぐだけの物らしく剣で簡単に切り消す事が出来た。

 エナの守備面が心配だな。


「よし早速始めよう! エナも少し手伝ってくれる?」

「えっと、何をするんです?」

「まずは武器のカスタマイズだ」




◇◇◇




 二日後。俺はゴルトンの紹介で町外れの大きな武器工房に来ていた。


 鉄器を扱う所で常に高温の炉に解けた鉄が溢れ何人かの職人が作業をしている。

 その工房の一角を借りる事が出来た。


 ゴルトンの謎のコネとコミュ力のお陰だ。


「本当に自分でやるのかい?」

「はい、所々手伝って協力してもらいたい所はあるんですけど」

「ふぅん」


 この世界は十分に冶金技術も発展しているらしく工房には工具も充実していた。

 これなら俺のやりたい事がすぐにできるぞ!

 早速俺はエナから貰った剣と素材用の鉄を取り出し作業を始める。


カンカンカンカンッ! ギコギコギコッ!


 魔物相手に剣の鍔は必要ないので取り外しそこを鉄で溶接し雷撃用の魔結晶をはめ込んだ。

 さらに剣の柄にはメリケンの様に指を通す鉄の穴を取り付ける。


「よし、出来た!」


「《雷震の把手(トルエノ・アステール)》!」


バチッ!


 うん、いい感じだ。


 今までは《ガードブレイク》の為に左手を使うか、剣を持ち替えなきゃいけなかった。

 でもこれで剣を持ったままでも、手を広げて《雷震の把手(トルエノ・アステール)》を使え様になった。


 大分楽になったぞ。


「どうですか?」

「上出来だよ、名付けて《ライトニングソード》!」


 俺は調子に乗って剣に名前を付ける、かっこいいよね?


 さらに服などにも鉄のプレートをくっつけて、簡易的な動きやすいバトルスーツを作る。甲冑は重いしなによりめちゃくちゃ高かった。


「さあ次はエナの杖だ」

「私の杖ですか?」


 エナの杖は母の形見らしいので壊す訳にもいかない。

 完全に1から作る事にした。


「《想造の粘視イマジナリー・リームス》!」



【《想造の粘視イマジナリー・リームス》】

タイプ特殊、消費SP3、約1分

目の前に精密なイメージの幻影を作り出し、形を作る事ができる。

使用者しか見る事が出来ない、かわりに極めて精密。

【閉じる】



 スキルを使うと目の前に俺が想い描いたイメージが現れた。


 しかもそれは粘土の様に弄り回す事が出来てしまう。

 俺は頭の中に作っていた設計図を具体化させて微調整していく。


 時間辺りのSP消費はバカにならないので、急いでそのイメージを定規で図り紙に書き写す。


「何をやってるんです?」

「鋳型を作ってるんだよ」

「鋳型?」

「そう、この粘土に鉄を流し込んで冷やすんだ」


 その設計図通りに粘土で鋳型を作っていく。

 難しい所は再び《想造の粘視イマジナリー・リームス》で寸法を確認しながら。


「へぇーっ、鉄器ってそうやって作られてたんですね。でもテルト何で詳しいんです?」

「ちょっとね、興味があって調べた事があるんだ」

「……俺も知らないやり方だ、大したもんだな」


 出来上がった鋳型を300℃程の火で焼いて固める。

 そして鉄片を隙間に挟み組み合わせていく。

 部品の数はかなり多いので、すべて作るのに4日ほどかかった。


 5目にいよいよ1500℃の溶鉄を流し込む。

 ここは工房の職人さんに手伝ってもらった。


ジュッ…… ガシュガシュ! カン! カン! カン!


 鉄が完全に冷える前に鋳型を壊し、水に付け焼入れをし、再度熱して歪んだ形をハンマーで整える。

 全身汗だくの大作業だ。


 部品を木製の杖にはめ込んで、動作を確認し、最後に錆止めと油をさす。


「よし、出来た! エナこの杖を試してみて」

「何ですかこれ?」


 完成した杖をエナに渡すとエナは目を丸くする。


「名付けて《回転式(リボルバー)ロッド》事前に4つまで氷の槍をストックしておけるんだ」

回転式(リボルバー)? なんです? それ」


 俺は回転式(リボルバー)拳銃の仕組みに興味があって調べていた事があった。


 ただうろ覚えで構造は殆どオリジナルになっている。

 それに予算の関係で魔結晶は4つしか用意できなかった。


「やってみる方が早いよ。杖のここのボタンを押すとロックが外れるから、ここを上に押して戻すんだ。こう」


カシュ、カシュン!


「すっ、凄い! 回転した!」


 俺が杖の柄を上下にスライドさせると先端のリボルバー部分が小気味よく回転する。自分でもびっくりする程の完成度だスキルさまさまだ。


 一番苦戦したのはバネのような反発構造だ。

 丈夫なバネは特殊な金属が必要だったと思うんだけど、その金属が何かを俺は覚えてないしこの世界ではまだ発見されて無いかも知れない。


 クロム? チタン? 他の何かだったかなぁ?


 結局反発力が必要なギミックはボタン以外使わない構造に変更して作り上げた。


「はいエナ。なるべく軽く作ったけどそれでも重いから気をつけて」

「やってみます!」




◇◇◇




 俺達は武器工房の庭にある武器の試験場に移動した。


 エナは杖を構えリボルバーの先端の魔結晶に氷の槍を4つ作る。


「《空絶の氷槍スティーリア・ランケア》!」

バッシュ‼ ザシャンッン‼ カシュ、カシュン!


「《空絶の氷槍スティーリア・ランケア》!」

バッシュ‼ ザシャンッン‼


 エナが氷の槍を放つと反動で杖が揺れたけど、最照準に3秒程度。十分だ。


バッシュ‼ ザシャンッン‼


 合計4回。

 正確にテンポよく俺が用意した的に突き刺さった。


「凄い! こんなに早く連射出来るなんて、この杖凄いです! テルト天才です!」

「ホントこんな武器初めて見たよ」

「たまげたなぁ」


 周りで見ていた職人も感嘆の声を上げた。


「上手く行って良かった。しばらく使ってみて使いにくい所とかあったら言ってよ改良するから」

「はい!」


 思い通りの結果に俺は大満足。

 これでエナの戦力は大幅にアップだ。


 でも今回のカスタムで所持金の7割が消し飛んだ……散財しすぎたかも!

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