第7話「質問」
調査は、三日後に行われることになった。
長老会から選ばれたのは、羊飼いの男、書記の男、そしてヨーナの三人だった。ヨーナが加わったのは、彼女自身が申し出たからだった。誰かがこの場にいなければならないと思った。それが、今の自分にできる、精一杯のことだった。
ミラは、納屋の前で、三人を迎えた。表情に、大きな動揺は見えなかった。
「お聞きしたいことが、いくつかあります」
書記の男が、そう切り出した。
「どこから来ましたか」
「南の方の村です。名前を言っても、ご存じないと思います」
「誰から薬草を習いましたか」
「決まった一人ではありません。旅の途中、いろいろな人から」
答えは、いつも簡潔だった。だが、簡潔であるほど、羊飼いの男の眉間の皺は、深くなっていった。
「なぜ、夜に森へ行くのですか」
「薬草を摘みに。日によっては、夜にしか採れないものもあります」
「毎晩ですか」
「必要な夜だけです」
「誰かと、話していたという者がいます」
ミラは、初めて、わずかに間を置いた。
「一人でした」
「だが、声を聞いた者がいる」
「私は、薬草の名を、声に出して数える癖があります。それを、聞かれたのかもしれません」
筋は通っていた。だが、その場にいた誰の顔にも、納得の色は浮かばなかった。
ヨーナは、黙って、そのやり取りを見つめていた。
最後に、羊飼いの男が、静かに、しかしはっきりと尋ねた。
「では、なぜ鍛冶屋の子は死んだ。他の多くの子は助かったのに」
部屋の空気が、張り詰めた。
ミラは、しばらく黙っていた。それから、静かに答えた。
「分かりません」
「分からない、で済むと思っているのか」
「分からないことを、分かると言う方が、危ういと思います」
その答えに、羊飼いの男は、何も言い返さなかった。だが、その沈黙は、納得ではなかった。
ヨーナには、それが分かった。知識のある人間だからこそ、分からないことを正直に「分からない」と言える――だが、その正直さが、村の目には、むしろ「都合の悪いことだけ、分からないふりをしている」ように映っているのだった。
質問が一通り終わり、三人は納屋を出た。
誰も、はっきりとした結論を口にはしなかった。だが、ミラの表情には、それまでなかった硬さが残っていた。
彼女は、気づいていた。
これは、事情を知るための質問ではなかった。
既にある疑いを、裏付けるための質問だった。
ヨーナも、それに気づいていた。
そして、その質問の場に、自分も同席していたという事実から、もう目を逸らせなかった。
第7話 完




