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善良に加勢した悪鬼と呼ばれた少女  作者: 山田 勝


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1/3

 天にまします我らが女神様の地上の代理人にして悪を狩る使徒様、どうかこの苦難をお救い下さいませ・・・

 このメルディア・マイカーはこの国を救う使命がございます。



「グヘへへへへ、令嬢だ!」

「ヒャハー、メイドもいるぜ」

「どっちを先にやる?」


「お、お嬢様にふれないで下さい!」


「下さいだってさ」

「「「プゥ~クスクスクスクス~~」」」



 ここは化け物が出ると評判の森、この森を通れば領地に安全に帰れると思ったのに・・


 盗賊が待ち伏せていたわ。馬車は横転し御者は伸びている。

 盗賊は数十人かしら・・・リーダーと交渉するわ。



「リーダーはどなたですか?手持ちのお金と宝石は差し上げますわ」


「おう、俺だ。ガイル盗賊団のガイル様だ」


 斧を担いだ大男が出てきたわ。毛皮のジャケットを身につけている。

 話せば分かって頂けますわ。



「私はメルディア・マイカー、マイカー家の総領娘ですわ。戦争で荒廃したこの国を建て直しますわ。

 貴方だって、やりたくもなくて盗賊に身を落としたのでしょう。もう、戦は終わったのですわ。私は王太子殿下の婚約者、王妃になってこの国を建て直しますわ。

 誰も盗賊などしなくて済む世の中にいたしますわ」



 すると、ガイルという男は満面の笑みをたたえた。

 分かって下さるのね・・・



「いや、差別主義者だな。俺はやりたくて盗賊をしているのよ。ガキの頃から畑泥棒からコツコツと始めてよ。コソ泥、追い剥ぎ、捕まってよ。そして、人魔大戦の戦時特例で懲罰兵団の団長になったのよ。終戦後の恩赦でまた盗賊が出来るようになったわけさ。女神様は俺の努力を見て下さっていたのさ。それを・・・」


「盗賊に身を落としてだと!と~んだ差別主義者だ。これだから貴族って奴は!」



 話が通じない。なら、お金を・・


「ガイル殿、なら、お父様に言えば身代金を出して頂けますわ。メルダは使者に帰して下さいませ。私が人質になりますわ」


「お嬢様!」


「あ、馬鹿だ。そのお前の父ちゃんから頼まれたのよ」



 えっ、お父様、お義母様ではなくて・・


「お前が死ねば義妹が王子様の婚約者になれるってよ。もう、良い、ここで姦る。俺が令嬢な。メイドはお前達で好きにしろ」


「「「「オオオオオオオーーーーー」」」



「お嬢様だけはお止め下さい!」



 声が聞こえない。頭が真っ白になった。お父様・・・そんな。お父様は違うと思ったのに・・・・


「でも、頭、そろそろ暗くなって来ましたぜ。ここは化け物が出るって噂の森ですぜ。アジトでやりましょうよ」



「馬鹿野郎。化け物が怖くて盗賊が出来るかってもんよ」



 メルダが私の前に立ち両手を広げる。

 私は立ち尽くすことしか出来なかったわ。


「おい、何か来たぞ!」

「お、ミゲルが獲物を連れてきてくれた」


 その時、盗賊が大声を上げた。

 巡回騎士団が来たのかしら・・・だが、すぐに希望は潰えた。私のように捕まった商人がいたようだわ。



「荷馬車だ!お宝を積んだ馬車が来た!女が運転していますぜ。きっと」

「見張りはどうした?」

「ミゲルの奴、荷馬車の前を歩いてやがりますぜ・・馬鹿だな。獲物の後ろを歩いて監視するのが定石なのに・・・」


「上手く騙したのだろうな。あいつ口八丁だから」



 見ると荷台の上にはここからでもはっきり分かるぐらい光っている。

 金貨、高純度の魔石?

 その他にも荷物が満載していた。


 御者台の上には、ローブを羽織った小柄な人族、少女かしら。



 その前はミゲルと言う盗賊が・・・・手をあげて歩いている?



「あれ、見張りはミゲルだけだっけ?」

「いや、数人いたが・・・ミゲルだけ来たのだろう。他は見張りを続行ですぜ」


「通報されても面倒だ。あいつは・・女だったら犯す。男だったら・・華奢だな。犯す」



 その馬車は、私達から100メートルの距離でピタと止った。


「しかし、ミゲルの奴、何で手をあげているのだ?」




 ☆☆☆


 荷馬車の前を歩く男は怯えていた。ガイルからでは表情が見えなかった。



「はあ、はあ、はあ、ほら、そこだ・・です。あそこに親分と仲間がいます。ガイル盗賊団です。ねえ。教えたでしょう?だから、だから、それやめて、バンやめて下さい!」


 次の瞬間、ローブで隠れた顔から声が発した。女、少女の声、出てきたのは無慈悲な処刑の言葉だ。



「そう、じゃあ、バンバンね」



「イヤー!バンバンいやー!それやめて~~~~~~~」



 ローブを羽織った馬車の主は少女だった。彼女はすばやく、ローブから64式7.62ミリ小銃を取り出し構え。ミゲルに連射で撃った。


 連射・・・64式の発射速度は、一分間に五百発以上撃てるとされている。

 弾倉は二十発入りである。

 つまり・・・数秒で弾倉は空になる。


 ミゲルは逃げる間もなく、上半身は穴だらけになった・




 ☆☆☆



「な、何だ。あれは、あれが化け物か?」

「ミゲル、肉塊になっていないか・・・」


「頭、俺、聞いた事がある。化け物は盗賊ばかり食うって・・」


【それを早くいわんか!】


 ガイルは斧を振るい手下を砕いた。


「ギャアアアー、ヒデーよ!」



 何だ。あの女は、魔道使いか?あの奇妙な魔法杖を逆さまに構えてやがる。

 細い方をこちらに向けている。


 あいつの次の行動は?


「あいつ座りやがった?」

「馬鹿なのか?」

「ウンコだよ」


 何もかもおかしい。しかし、100メートルある。

 逃げられる。逃げて生き延びたのだ。そうやって大戦を生き延びたのだ。


【お前ら!あいつをやったら、金貨百枚だ!男を見せろや!】


「「「「オオオオオオオーーーーー」」」

「金貨百枚って何枚だ?」



 手下と戦わせている間に逃げる。

 そうだ。手下はジャガイモのように沢山・・・ウグ、体が揺れた!



 ガイルの胴体を7.62ミリ弾が貫通したのだ。

 彼にとっては始めての衝撃である。


 次は・・・


「ヒィ、頭の頭が破裂した!」

「呪いか?」


 頭に直撃した。これで盗賊団は機能しなくなった。



「頭・・・・」

「次はどうするのよ」

「金貨百枚」



 彼女は座って撃っていた。通称、膝撃ちである。


 銃は銃手が地面や何かで固定しているほど当たりやすい。

 寝撃ち、膝撃ちの順に当たりやすいとされている。



「おい!何か違うぞ。弓持っている奴・・・ギャアアア!」

「いや、突撃・・・グハ!」

「ヒィ、こんな連発出来る魔法なんて聞いた事がねえ」


 次々に撃たれていく。


 少女は狙撃を単連射出来るように訓練を受けていた。まるで自衛隊のようだ。




 ☆☆☆


 少女は呼吸を意識して撃っていた。


「吸う。吐く。止める・・・撃つ」


 およそ、呼吸の間隔で撃っていた。

 撃つときは息を止めるのが基本だ。

 すると、少なくても肺の振動は狙撃に影響を及ばさないが・・・それでも銃は揺れる。



「・・・今ので18発目・・・そろそろ良いか」


 少女は立ち上がり。慣れた手つきで弾倉を交換し。コウカンを開いて閉じた。

 これは、弾を装填する動作である。


「さあ、行くか・・君はここで待っていてね」

「ヒヒ~ン」



 少女は歩いて令嬢の方に向かった。


 そして、うごめいている者を撃った。



「ヒィ、俺には母さんがいる。世話をしなきゃ・・・」

「ガイル盗賊団・・・村を襲い。孤児が沢山出たと記録にあるが?」


 ダン!と無慈悲に銃口から火を噴く。

 やや薄暮なので銃口から火が見えた。



「自首する!だから見逃して。もう悪いことはいたしません!」

「盗賊は・・・王国刑法によると縛り首、だから殺してあげるね」

「ヒィ!悪魔!」



 そして、最後に令嬢の前に来た。

 メイドのメルダは手を広げて主人を守ろうとする仕草をするが。メルディア・マイカーは手で押しのけて制した。


 敵意はないが味方でもないと思った。



「・・・見た事のない魔道具ですね。私はメルディア・マイカー、ご助勢感謝いたします」


「別に助けたつもりはない・・・こいつは賞金首だ」



 ・・・まさか、化け物って盗賊狩りのことなの?わざと盗賊の目を引く金目の物を積んだ荷馬車で往来を行き来していたの?



「お嬢様が名乗ったのだから、名乗りなさい!」

「メルダ、良いわ。この方、ネームドの冒険者様よ。秘匿扱いだわ。きっと」



 少女はガイルの首を斬りながら答えた。


「メリー、メリング冒険者ギルド所属メリー、身分はメッセンジャー、ネームドはフランソワだ・・」



 ・・・フランソワ・・・男の名だわ。聞いた事がある。盗賊狩りのフランソワ。

 別名女神の使徒・・・


 貴族のお抱えや商業都市の商会長のお誘いを断り続けている孤高の冒険者様、

 まるで親の仇のように傭兵団崩れの盗賊を狩り続けていると・・・




 理解が追いつかない。もしかして、フランソワが彼女で秘匿扱いなので男の名を名乗っているの?


「何故、それを・・」

「そこのメイドが名乗れと言ったのだろう」



「・・・そう、では私の護衛をして頂けないでしょうか?もちろん、依頼料を支払いますわ」


「いい・・・この道は安全だ。盗賊村は狩り尽くした。この男が最後だ。・・・それに・・」


「それに?」


「貴族は嫌いだ」


「また、会えますか?」

「女神様の御心だな」



 それだけ言ってメリー様は去ったわ。

 見たところ、年齢は12から14歳、にしても小柄だわ。


 もしかして、異世界がらみの方かしら・・・




 この世界には時々異世界から黒髪族が来る。

 この人魔大戦で各国は召喚しまくったと聞いたわ。


 きっと、私が触れてはいけないことなのよね・・・


 でも、また、会える気がしてならないわ。



 領地に帰ったら、お父様が既に私の葬儀の準備をしていたわ。



「メルディア!・・・生きていたのか?」


 これは私が生きていたから驚いたのね。


「お義姉様、どうして」

「メルディア、貴方・・どうして生きていたの?」



 私はニッコリ笑って答えたわ。



「女神様の使徒様が、私の前に現れて下さいましたわ」



「ヒィ、女神の使徒?化け物の森を通ったのか?」

「盗賊街道とも呼ばれたのよ。嘘よ!」



「私が王家に嫁入りすれば、デイジーに婿を取り伯爵夫人になれたのに・・・」



 三人は膝を落とした。


「お父様、当主の印璽をお渡し下さい。しばらくお休み頂いた方が宜しかろうと思案します・・・」


「「「ヒィ」」」



 私は謀略を使う貴族になったわ。

 でも、あの子になら撃たれても本望だ。




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