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プチラモラの謎

「はあっはあっ」

三人は、やがて人気ひとけの感じられない暗い街道に辿り着いた。

「ここまで逃げれば大丈夫だ。」

「そうだな。」

「牧ちゃん、大丈夫?」

そう藤上学に言われた牧中菜穂子は驚いて聞き返した。

「え?何が?」

「だってやられかけてたじゃん。」

「ああ、まあ今の所なんもないけど…え、何?」

「いや…あれの影響を少なくとも僕達よりは受けてるから…」

「なにその伝染病みたいな言い方。」

「まあまあまあまあ」

相田が間に入って言った。

「最初踊りだした人は謎だけど、今のところ、踊りの最後のポーズ」

そう言って相田は「あなたも一緒にプチラモラー!」の時の格好、すなわち、足と足の間を拳三つ分空けて、手を広げて両腕で前方を指すあの格好をしながら言い続けた。

「このポーズの、この腕から強力な洗脳波動みたいなのが出てるのかな、この腕に指された人はほぼ確実にやられてる。でも牧ちゃんはそれを受けてるわけじゃないから…」

学が遮った。

「でも、牧ちゃんはつぶやいてたじゃないか。」

「まあ、そうでなくてもおそらく“彼ら”は洗脳波動をだしていると思う。いや、そもそもあの音楽自体にあるんじゃないかな。だから『反ゲモの会』が生じえた。僕達もあれの影響は少なからず受けてるはずなんだ。だから牧ちゃん、安心して。」

「洗脳されるってどんな気分?」

話題を変えて藤上が質問した。牧中は答えた。

「よく分からないけど…誘われるの。解放感に。そんなのに引きずり込まれたら自分がおかしくなる、だめ、と思っても、頭がどんどんマヒしておかしくなるの。もう正しいとかそういう判断力がなくなってあれの思考に呑まれるしかなくなるの。今はあれがないから大丈夫だよ。」

「つまりあれを目前にしたら自分だけでは不可抗力なのか。」

「そうね…ところで、様田くんや琉田ちゃんは?」

「連絡つかない…」

「そう…」

そして三人は黙りこんだ。よく耳を澄ますと「プーチラモラァ!」という声が聞こえてきた。それは依然より増していた。

「ねえ…こっちに近づいて来てる?」

「いや、響きからして接近はしていないと思う。むしろ増えてるんじゃないかな。」

「え!嘘?」


嘘ではなかった。

いまや渋谷新宿池袋上野と、繁華街という繁華街はプチラモラに溢れていた。中心に謎の人物がいてその人と周りとで音楽に合わせて掛け声をしていた。

「あなたも一緒に」「プチラモラー!」

「世界を繋ごう」「プチラモラー!」

「偉大な神の名唱えよさあ!」「イル・ナンケストラ・ウラ・ウー、イル・ナンケストラ・ウラ・ウー、イル・ナンケス…」


人々が何度も連呼する時中心の人物はニヤリと笑った。この人物は赤いヘルメットをつけていた。彼の名は赤ヘル。ゲモゲモ・プチラモラを歌った歌手だ。彼は全世界をプチラモラにしようという野望を抱えていたのだ。彼は他に“正常”な人を教化しようと考え初めていた……

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