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勇者のお披露目とうごめく邪悪たち。

いよいよ敵サイドの人物登場です。

***

ストックが尽きましたので、更新ペースが落ちます。週1回くらいを目指したいです。

 国王に続いてバルコニーへ出る。

 6人は昨日と同じ、スクウンジャーの変身前衣装を身に着けている。

 有能な世話係たちが一晩のうちにきれいに洗濯してくれていたのだ。便利な魔道具のおかげでもあるが。


 眼下には大勢の人。

 この日はお城の広場を開放して、一般人も入れるようにしてあるようだ。

 勇者を一目見ようと押し寄せた民衆は多く、広場には収まりきらず、城門へ続く道にまで人垣は続いている。

 城門の先には王都の街並みが見える。庭を備えた立派な屋敷もあれば、小さな家が密集する区域も見える。


 人々の表情や声から、好意的な熱狂であることは分かる。

「あの人たちが今回召喚された勇者様なのね」

「あの背の高い勇者様、素敵!」

「女の子が3人もいるぞ。皆可愛いなあ」

「邪妖族が出るのは森の近くだから、戦う姿が見られないのは残念だな」


 ざわめきは、国王がすっと右手を挙げると、潮が引くように静かになった。

「親愛なるファズマ王国の民よ。こたびの召喚の儀で呼ばれた勇者たちを紹介しよう」

 国王の左手には声を遠くまで届ける魔道具が握られている。ちょっとしゃもじのように見えなくもない。


 6人の紹介が終わると、花火が打ち上げられる。大きく6つ。その後は小さな花火が無数に打ち上げられた。

 歓声と「勇者様」の声がわき起こる。


 召喚主たちは、にこにこしながら「魂を縛る契約書」などというものにサインさせるような人物だ。

 しかし陽気に手を振る国民から邪心は感じられない。


 きっと召喚されたのが自分1人だったなら、何を信じていいか分からず不安に押しつぶされていたかもしれない。

「皆がいてくれて、本当に良かった」

 誰にともなくつぶやいた言葉だったが、皆にも聞こえていたようだ。


「なーに最終回の1話前みたいなセリフ吐いてんのよ」

「そうそう。ボクたちの冒険はこれからだよ」

「智っち、それ打ち切りの最終回じゃん」


 楽し気な会話に凛太郎は口元をゆるめ、眼下の人々への脅威度チェックを続ける。

 脅威度が高い存在がいれば、赤いオーラのようなものに包まれて見えるはず。ドラマの中ではそうだった。

 しかしこの異世界に来てから、そういった反応は見たことがない。


 舞は城の外へ擬態シノビを放つチャンスを逃さない。

(できれば町の人が大勢集まる場所で、色々な話題を拾えたらいいな。貴族の館もあるみたいだし、貴族の会話も探ってもらおう)

 忍び装束の裾をさりげなく払い、擬態シノビを2体放つ。


 6人が民衆に手を振ると、熱狂的に降り返してくる。


 お披露目式は大きな盛り上がりとともに終了した。


 ***


「魔力花火は6つ上がった」

「こたびの勇者は6人ということか」

「今度こそ憎き魔王を倒してくれればいいのだが」


 3つの耳障りな声が、広い部屋の中で響く。

 1人はバクのような見た目。細く吊り上がった目。長くしなびた鼻。曲がった背中。

 名はバ・クー。宰相を務めている。


 1人は青黒い肌の老爺。頭髪はなく、目はぎょろりと大きく、耳は長くとがっている。背中にはいびつで小さい羽。しっぽはトカゲのよう。

 名はメイ・ジイ。魔法士長を務めている。


 1人は頭部が馬、胴体が人間。軍服に包まれた体は、筋肉で盛り上がっている。

 名はホー・ズル。騎士団長を務めている。


「早速明日、近くの町に戦士を送り込むとするか」

「もちろん弱いヤツから送るのじゃぞ」

「オレが直々に力を試してやりたいが、あまりの強さに恐れおののき戦意喪失されてはかなわんからな」

 馬頭人間が、筋肉を誇示しつつ高笑いする。


「まずは牢に捕えてある囚人の中で、弱っちいヤツを選定しよう」

「逃亡防止のために、誓約書にサインをさせるのじゃぞ」

「心得ておるわ」

 3人は連れ立って執務室を出ていった。


 ***


 魔力花火の音は、その城にまで届いていた。

 その数は6つ。


 魔王フィアードは作業の手を止め、眉間にかすかなしわを寄せた。

「また異世界より『勇者』を呼んだのか。あの国も、いつまで罪なことを続けるつもりか……」

 赤い瞳が物憂げに細められる。

「いや。私がこの世界を去れば、この茶番も終わるはず」

 魔王は目の前の魔法陣に集中する。


 ***


 石造りの塔の中には、快適で乙女チックな空間が広がっている。

 居心地のいい1人用のソファに座り、ふかふかのクッションを抱きしめ、1人の乙女がもだえている。


「はあああ。ミツキ様ステキ~」


 眼前にはお披露目式の様子が映し出されている。

 塔の中で退屈しないようにと、老魔法使いが外部の映像を見られるよう魔道具をセットしてくれているのだ。


 仲間たちと楽し気に語らい、民衆に手を振る光希の姿が見える。


「それにしても、いつも隣にいる髪の短い女、邪魔ですわね」

 単にスクウンジャーの並び順でそうなっているだけなのだが、アンジェラ姫にはそのような知識はない。

 何か適当な理由をつけて追放してやろうか。勇者は6人もいるのだから、1人いなくなっても問題ないはず。そんな考えが浮かんでくる。

「そうだわ。お父様にお願いして、あの女を……あら?」

 自分が今言おうとした言葉が霧散してしまった。

 考えれば考えるほど、記憶が薄れていく。ついには舞を邪魔だと感じたことすら忘れ、再びお披露目式の映像に見入る。


「ミツキ様って本当に美しいわ~。それにしても近くにいる女たち本当に邪魔ですわね。じいにお願いして……あら?」

 プリンセスの悪態からの物忘れ現象は、式典が終わるまで続いた。


 塔の中にはアンジェラ姫1人しかいないため、幸か不幸か突っ込む者は誰もいなかった。

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