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ゾンビになったと追放された俺は人類を救えるかもしれないけど人類は救いようがない  作者: しゃぼてん
6章 終焉前夜の無法地帯

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60 チンピラ

 俺が敵を挑発するために立ち上がろうとした時、突然、チンピラ男の一人が怒鳴った。鼻に大量のピアスをつけたチンピラだ。


「チクショウ! こいつ突然暴れだしやがった」


「女相手に何手間取ってんだ。おとなしくさせて服毟れ」


 ごっつい金ネックレスをつけた坊主刈りチンピラが、鼻ピアスチンピラに怒鳴った。

 その後で、ちょっとえらそうな金髪刈り上げで首に蛇のタトゥーがはいった男が、拳銃をいじりながら言った。


「おい、まだ殺すなよ。死体は気持ちよくねぇ。やり終わったら、地下に捨てて避難する。それまでは生かしておけ」


「死なない程度にボコれ」


 金ネックレス坊主が下っ端に命令した。

 たぶん、この6人の中では蛇タトゥー金髪が一番えらくて、次が金ネックレス坊主なのだろう。

 全員、極悪そうで、かつ、屑オーラをまとっている。

 自分の欲望を満たすことしか考えてなさそうな奴らだ。


 結生の姿は見えないけど、チンピラ達の動きを見る限り、結生が抵抗しているようだ。

 一刻の猶予もない。


「やめろ! 人間の屑め!」


 俺は叫びながらボウリングのボールを一つ掴み、チンピラ達の方に向かって転がした。

 もちろん、床をゴロゴロ転がっていくボウリングのボールは敵になんのダメージも与えない。

 どころか、かすりもしなかった。ボールはソファにぶつかった。

 チンピラたちの気を引くために投げただけだから、別にいいんだけど。


「なんだ、あのバカ?」

「変な格好しやがって」

「変態か」

「オエッ。吐き気がするぜ」


 チンピラ達は俺を見ながら、全員、心からバカにしている様子で言った。

 マルパンマンのお面がバカにされているのか、お面+白衣+ヘルメットのファッションがバカにされているのかよくわからないけど、散々な言われようだ。

 でも、俺はへこたれず、堂々と名乗った。


「俺はマルパン研究員だ。大人しくその少女を放せ。このばい菌どもめ。じゃないと、俺がマルパンチで成敗してやるぞ」


 即座に、ケンカを売られたと理解したチンピラ達の怒鳴り声が響いた。


「ふざけやがって! ぶっ殺してやる!」

「こっち来いヤァ!」

「そのふざけたお面、引きはがして、お前のツラをマルパンにしてやるよ!」


 来いと言われたけど、俺はあっちには行かずボール棚の手前にとどまった。

 蛇タトゥーの男は拳銃を手にしていたから、壁になるものがない場所にはいけない。

 そもそも俺の目的は、あいつらをこっちに引きつけることだし。


 金髪蛇タトゥー男は、結生の方に向けていた銃を俺に向けた。


「貴重な弾だが。そのふざけたお面に免じて使ってやるよ」


 俺は即座に棚の影に身を隠した。

 銃弾もボウリングのボールは貫通しないはずだ。たぶん。


 銃声が響いた。

 同時に、何かが床に落ちるような音がした。

 チンピラ男の舌打ちが聞こえた。


「クソッ!」


(何が起きたんだ?)


 俺は棚の影から顔を出し、何が起こったのか様子をうかがった。

 黒髪の少女が立っていた。

 少女は蹴りを繰り出した直後のようだった。

 少女は、さっきまでいたはずのソファとは結構離れた場所に立っている。一瞬で間合いをつめたようだ。

 拳銃を持っていた金髪蛇タトゥー男は手をおさえていて、拳銃は床に落ちていた。

 金髪蛇タトゥー男は憎悪のこもった声で言った。


「ただじゃおかねぇ。このアマ。生まれてきたこと後悔するまでみっちり調教してやる」


「ぶちのめせ」


 金ネックレス坊主が鉄パイプを少女へ向けてそう命令した。

 チンピラ男達は鉄パイプの他に、金属バット、バール、ナイフをそれぞれ手にしていた。

 少女は無謀にも6人の武器を持ったチンピラ相手に素手で格闘しようとしている。

 俺はそこで遅ればせながら気がついた。


「あれ? 結生じゃない……」


 そこにいたのは、高木寧音だった。

 寧音のゴーグルとマスクがはずれていたから、見間違いようがない。

 俺はてっきり結生だけが捕まっているのだと思いこんでいたけど、そもそも結生は寧音と一緒にいたのだ。一緒に捕まっていてもおかしくない。


(結生はどこだ?) 


 俺は寧音の周囲を探した。

 きっと結生も一緒にいるはずだ。ここからは見えないけど。

 たぶん、近くにいるはず……。でも、いる気配がない。


「結生! いたら返事をしてくれ!」


 俺は呼びかけたけど、返事がなかった。


(いない? 気絶しているのか? それとも……まさか、既に……)


 ぞわぞわと不安と心配の塊が俺の胸の中で広がっていった。

 建物の外にあった死体、地下にあるだろう死体……。

 俺は嫌な想像を振り払うように頭を振り、(冷静に状況を考えろ)と自分に言い聞かせた。

 結生がどこにいるにしろ、この状況じゃ俺が最初に考えた計画は実行不可能だ。

 どんなに挑発したって、すでに寧音相手に怒り心頭のチンピラ達が俺を追いかけるはずがない。


(どうする……? とりあえず寧音を助けてチンピラを倒すか?)


 その時突然、俺は背後から話しかけられた。


「こんにちは。なにかお困りですか? こまっていることがあったら、ボクにえんりょなく言ってね?」


 振り返ると、俺の後ろでペッポー君が目をぱちくりさせていた。

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