新・アルカンディアの正体・地球に彼らが来る理由 後編
僕は、より踏み込んだ質問に斬り込んで行くことにした。アルカンディア人という宇宙人達の現実の政治の状況について調べてみることにした。
「アルカンディア人が直接地球を攻めようと考えたキッカケみたいなものはあるの? 」
「一番大きいのはマゼラン戦争ね」
「マゼラン戦争? 」
「少し、複雑な話になるけど…良い? 」
「別に構わないよ」
「アルカンディア人のルーツは今だに分からないのが現状なんだけど…一番有力なのは幾つかの元種族が交配した結果生まれたと言われている、その後、エネルギー文明として繁栄したアルカンディア人は外宇宙に進出して…」
外宇宙に進出したという言葉を聞いた時点で物凄く現実離れした話になってるなぁ…というのが僕の感想だった。
「マゼラン星雲に到達した、そこでマゼラン星雲の環境に適合するためにマゼラン星雲の生物の血を取り入れて現在のマゼラン人の原形が登場したの……さらに、その後、地球へと到達して地球の生物の血を取り入れて地球人が誕生した。」
「で地球人を奴隷にしたの? 」
何気なく僕がミラさんに投げかけた言葉はミラさんの怒りを買うことになってしまう。
「そういう考え方は本当に野蛮だと思う! どうして、そういう勘違いをするの? 」
「ごめんなさい」
何で怒られたのかよく分からないが謝ってみた。
「ここからが重要なんだけど! 地球人の存在は画期的で他惑星への移住をするのに環境への適合に悩まされていたアルカンディア人には魅力的に見えたのよ、だから地球人の血を受け入れたし、地球人を本国へ移住させたりしたの…」
ここで怒った理由の一つが見えてくる。地球人がアルカンディア人の血を引き継いでるのと同じく、アルカンディア人も地球人の血を逆輸入している実態があることが地球人を単に奴隷と表現することに怒る理由なのである。
「それで、マゼラン戦争とは? 」
「マゼラン人という表現は実は最近に出来た表現で以前はマゼラン人も地球人も同じ呼び方だったんだけど……マゼラン人はアルカンディア人と同じで遺伝子を操作する能力があったせいで自らの遺伝子を操作し過ぎて遺伝子に欠陥を作り、それが病気となって発症したの……それが原因で一時は地球の傍まで広がったマゼラン人の勢力は衰退した。」
ちなみにアルカンディア人から見ても地球は大地が多かったために地球と呼ばれていた。特に「地が果てまである地域」という公称が一般的だった。この呼び方は太陽系全体を指していた。つまり大雑把な括りだったのである。それが近代に入ると細分化する必要が出てきた。その時に地球人との名称の統一が図られている。(地球人は地球や宇宙の名称は自分達が決めたと思っているが……それは必ずしも正しいとは言えないのである。)
「へぇ……」
「そしてマゼラン人は減った人口分を補うために地球から人間を連れてきたり、アルカンディア本国からの移民を受け入れたりするなどして勢力の回復を図った。」
「よくあるパターンだね」
「連れてこられた地球人達が自分たちと区別するためにマゼラン星雲に住んでいた人という意味でマゼラン人という名前で彼らを呼ぶようになった。」
「で戦争になったの? 」
「まぁ端的に言えばね、ただ簡単な話では無いのだけども……地球に関係する部分だけを話すと……」
「うん」
複雑な話よりも、今は地球に関係する部分だけを聞きたいので素直に同意する。
「この戦争は当初、アルカンディア側は簡単な戦争だと認識していたのだけど、予想以上に長期化し犠牲者が出たために大マゼランに軍を駐留させるようになった。」
第一次世界大戦やベトナム戦争のようなものだと僕は考えた。
「こうして地球の傍まで基地を直接持つようになれば、今まで何度も計画が浮上していたけど、遠過ぎて妄想の域を出なかった地球侵攻が現実味を帯びてきたということね。」
何度も浮上していた計画ということは一時の思い付きで地球にミラさん達が来ている訳では無いことが伺えた。
「何でアルカンディア人は奴隷制を採用していないの? 」
この種の話も既に何度かしている話のような気がする、だが重要な話であり、するたびに人は無意識にしろ同じ話を避ける傾向がある、またはシュチュエーションやお互いの距離の縮まり、お互いの意思疎通の違いによる齟齬が原因での勘違いが生じている可能性がる。だから同じ話を何度もするのは重要なのである。だから僕は執拗にミラさんに同じ質問をした。
これに対してミラさんも回答を変えてきた。
「うーん、理由は沢山あるけど、君主制を維持するためにワザと奴隷制を廃止したとも言えるわね」
「君主制を維持するため? 」
「そう、奴隷制があると奴隷が反乱するリスクがあるでしょ? 市民に奴隷を与えると市民の力が強まるのを阻止するという意味合いが強いともいえる、階級の移動を自由化しているのも君主制を維持するためね」
「自由を認めれば不平等な君主制は無くなるのではないか? 」
「それは、どうかな、日本にしたって自由で民主主義なのに天皇制は無くならないでしょ? 外圧で消されない限り、君主制は基本的に無くならないものだと思う。SPQAを構成する国々は元々君主制で君主と臣民という区別が中心の国が多いのも奴隷制を無くしている要因になっているわね」
奴隷制を採用している国は実は都市国家などの市民制の国が多い、例えば日本や中国は奴隷という単語は古代に何度か出てくるもののアテネやローマのように明確な奴隷制度の存在は希薄である。これは集団で一定以上の技能が必要な農業を社会の中心に据えているだけに欧米のような制度としての奴隷制度は作るのが難しかったということ、そして、それ以前に絶対的な君主という存在がいる以上は身分が低くても出世する代わりに地位が落ちる可能性も高かったからだと思われる。だから君主と臣民(平民)という区別が最も良く使われている。
※特に中国は漢の劉邦(小役人)、明の洪武帝(農民で反乱軍総帥)、共産党の毛沢東(農民)など平民出身の皇帝も多数存在している。または蜀の劉備など皇族の血統者でも平民と言っても問題無いレベルの出身の者もいるなど多彩である。日本の場合も豊臣秀吉など平民出の天下人が存在している。
「奴隷制が無いのに君主がいる、つまり実際は差別があると? 」
この質問はミラさんとしても答えにくい質問に思えたが……
「そうね、でもそれは日本も同じでしょ? どのような世界であっても富めるものは富めるし、学歴や経歴がモノを言うし、実力よりもコネが通じるのは世の常よね」
「簡単に言うんだね……」
「貴方が私を、どう思っているかわ知らないけど、私は武家の血が入っているからワンランク落ちる人間扱いなのよ」
この辺は難しい話になる、あまり言うと『世の中への批判になるからだ!』なので愚痴の域にならない程度に説明したいと思う。 差別というのは難しい、自由で民主主義的な国ほど実は格差が広がる、格差は『実力』という言葉の元で正当化されるのである。この現象は皮肉にも自由で民主主義的な制度を蝕み、国の結束を弱めるのである。だから歴史上、グラックス兄弟やカエサルなど有能な人物が改革に挑んだが根本的な問題の解決には至っていない。
つなみにSPQAでは武家の血を引いていてもカルケディウス総参謀長のように出世している者がいる、ミラさんの上司のサザーランドは名門出だが誰にも気さくで威張らず差別とは無縁の人物である。そしてミラさん自身が成功者の分類に入るので、この発言が実は青葉が思うほど簡単な発言では無い、むしろ『私は差別主義者では無い!』という強い意志からきたミラさんの自己主張であった。
「ふーん」
「意味が分かってないのね!」
ミラさんは自分の意図が青葉に伝わっていないことを感じたのか急に不機嫌になって話を止めてしまうのであった。冷ややかな目でミラさんに見られて青葉も気分が悪くなったりしていたが、これは完全に青葉の理解不足が原因だった。
とりあえず必要なことを書いたつもりです。




