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第十話 高原の駅 -3- トゥクトゥクという三輪車  

十話-3- トゥクトゥクという三輪車



茶色い宿泊施設の中で、着替えをした。


 「こっち、こっちだ」


外で星鐘さんの声がする。伊之助が私より先に着替えが終わってヘルメットとシートベルトをつけて固い表情で乗り物の中にいた。


 「さあ、乗って」




 乗ってと言われたそれは、高原にはちょっと似合わなく、なんか扉がついてない。それに車輪が三つしかついていない。風通しが良すぎる。車体の色は赤と青のメタリック。高原というよりどことなくトロピカルなのだ。さっき描いていた星鐘さんの印象と違って派手な物が目の前にあるのだ。嫌な予感がよぎってくる。




 「あの、これは」


 「珍しいかな、カスタイズもばっちり。トクゥトクゥって言うんだ」




星鐘さんはニコッとお茶目に笑っていたが、私には不安がわいてくる。




 「伊之助大丈夫?」


 「大丈夫であってほしいです」




 星鐘さんが最後に乗り込んでエンジンを起動させた。なにやら勢いのいい音がする




 「排気量は、軽自動車だけど、エンジンはスポーツバイクのを載せているんだ」




 星鐘さんはいたずらっ子のようにニコった笑みを浮かべた。いや私は普通車でなにごともなく元の時空に戻りたいだけなのでとはなかなか口に言い出せないまま、高原の道路を走り始めた。




 ときおり、反対車線の視線が気になる。目立っているんだろうな。隣の伊之助はなにも言わないまま座席の前についている手すりをガッチリにぎっている。


 「いや天気がよくてよかった。ここら辺は、野菜畑と牧場で、君らを邪魔するヤツラもこないだろ。」




 本当にそうなのか。




「大丈夫、君たちを狙ってくるヤツラがいたらコチラでなんとかするから」


本当に何とかするのですか。と言いそうになったのだが、じっとこらえた。隣にいる伊之助はじっと固まっている。なにか恐怖に備えているように見える。


「どうやら平穏そのものだろ、いるのは農業機械の車だけだし」


 正面に見えてきたのは大きな車両。星鐘さんの言って車がこちらに向かってくる。こちらの目立つ三輪車を見つけると黒煙を吐いてスピードを上げて近づいた。


「トラクターとはね。牧場で使うやつか」



 けどソイツは獰猛な重低音の排気音を立てて真正面からこちらに突進してきた。




「お、おいおい」


「げっえっー」


私は思わず声を上げた。隣の伊之助は…下を向きになり、けっえーっといった後、座席の背面の手すりをガシっと握っている。




「仕方ない、な」


そういうとハンドル横にあるフタがしてあるボタンをカチっと上げた。


「リミッター解除」




この人たちは、と言っていいだろう。今まで私たちをエスコートしてくれる人たちはなにかズレているところがある。果敢に立ち向かうのはいいのだけどリスクを避けるということを全く考えないのだ。




「予定では直進だったけど途中で脇道に入る。多少乗り心地悪くなるからね」




のどかな野菜畑の続く道。私たちのトゥクトゥクは、躊躇なく直進している。




「相手は大型、こちらは小型。逃げ切るよ」




星鐘さんはスピードを緩めることなく直進。




「ぶ、ぶつかる」


「いいか、しゃべるな舌噛むぞ」


「うぉぉりゃやぁぁ」


いったん左にハンドルを力任せに星鐘さんは切った。向かってくる車もぶつけ来るつもりか、こちらの車を妨害するようにハンドルを切る。




星鐘さんはぶつかる直前に今度は右にハンドルを切る


車体中央に積んでいるエンジンが悲鳴のような雄たけびを上げて回っている。


「うっ」


山林者、トゥクトゥク、片側の車輪、左が少し浮いてドスンと地に着いた。




「うあっ」


「んぐっ」


私と伊之助は短い声を出した。




「もう少し、脇道に入ればウチの仲間が来る」


「どこ、どこにもいないじゃないっ」



「伝令がいる。彼らはこっちが時間に通過しなくて脇道に入ったとき助けに来るようにしている」


「初めからついてくれればいいのに」


「いや、この季節渋滞で身動きが取れない。必要なところに居る」




背後にいる大きな農業車両は何回か切り替えししてこちらに向かって来る。



「この先細い道だよ」



アスファルトがだんだん心細くなり、人家が少なくなっている。こんなところに助けてくれる人がいるのだろうか。


ガツンともう一回バイクのようなハンドルを星鐘さんは切り込んだ。


「どこ行くの」

「今考えている」

「さっき言ったじゃん、伝令がいるって」

「ここにはいないむ

「ちょっと」


片側交互通行一本道を激烈走行モードで走っている。

伊之助はすでに一言も声を上げず固まっている。


前方にゆっくりと走っている軽トラがいる。



「あっあっあー、ぶつかるぶつかるっ」

「よく見てろっ」


前の軽トラ荷台の上に旗がヒラヒラついている。

二人乗っているのか。



軽トラの窓からヒューッと音を立てて飛び出した。

ちょっとして上のほうでパンと破裂音。


「ロケット花火が反撃の合図だよ。お仲間だ」


軽トラがクラクションを長く三回鳴らして加速始めた。


「じゃついてく」

「どこ」

「さあ」


行先不明、予定は未定は決定事項なのか。


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