第7章-知恵-
「俺の番かぁ・・・」
矛人は緊張してる反面、楽しみとすら思っていた。
俺の能力がどこまで通じるのか、俺の力は兄妹の中で何番目だとか。
「ふぅ・・・」
深呼吸しているとゼウスが話しかける
「グァッハッハッハ!このお嬢ちゃんたちの能力は凄かったがもしかしてお主はもっと凄かったりするのか?」
「なわけ、俺の能力は氷と炎だよ」
「・・・へ?」
ゼウスは目が点になるというアホっ面で驚いていた。
そんなに驚かれると傷つくぞ流石に!
「ガッカリしたか?」
「ガッカリというか、珍しくない能力じゃのぉ思ってな。まあ、神々の炎とかは炎の領域越してるからのぉ」
「アポロンやベルゼブブ、アモン、トナティウとかか?」
「お主詳しいのかこの類の物は・・・?確かにその部類になると太陽などという馬鹿げた力になるからのぉ。悪魔達は単純な強さだが」
「詳しいというか、好きなだけさ。俺の主体は氷だから安心しろ。」
「手の内を晒していいのか?」
「勝とうとはしていない、ビックリはさせてやる」
「なるほどな」
実際に矛人は勝とうとはしていないなどという事は一切思ってもいなかった。もちろん勝つつもりでいた。
だがどうもやる気がないような発言をしてしまう癖がある。
「んじゃ始めるか」
「では、始め!」
紳士が叫ぶ。
その瞬間矛人は氷の刃を無数に飛ばす。
ゼウスはそのスピードと数に驚いていた。
こやつ・・・案外できるかもしれん・・・
ゼウスは全てを簡単にかわすが本能がそう察していた。
その時ゼウスから半径2m位の氷のドームが作られた。
「実は俺の得意技は指定したものを凍らせることだ」
ドームの中にいるゼウスは
「だからどうした?」
と答える
「実はこの氷、酸素以外を凍らせてある。もちろんしなない程度に空気は残しているけどな・・・!」
イタズラに矛人は笑う。
ゼウスはさっき自分の感じた本能に確信した。
空気を選択して凍らせるなんて馬鹿げた話誰が聞いたことあるのだ・・・!?
ゼウスが心底驚いていると
「どうだ、驚いたかぁ?あまり喋らない方がいいぜ。死んじまうからなぁ・・・!」
「そっちから何もせんなら、こっちから壊すぞい・・・!」
ゼウスは右拳に力を溜め、ドームを壊そうとする。その時。
「まぁまぁ、酸素が沢山ある空間に炎を発生させたらどうなると思う?」
ゼウスは気づいた、この癖のある戦い方に真っ向から挑んだらヤバイと。
即座に振り切ろうとしてある拳を止め、全身に力を入れる。
その瞬間ドームのなかで爆発的な激しい炎が発生した。
「やったの・・・?」
麗奈が呟く。
聖音も息を呑む。
紳士も唖然としていた。
誰が予想していただろう。たかが氷と炎を操るだけなのに、これ程変則的な戦い方をすると。
炎のなかからゼウスが現れる。
「こんな戦い方聞いたことないぞい」
その声を聞いたこの世界の全員(4人)は恐怖が全身に貫き鳥肌が立った。
そして無傷である。
ゼウスは本気だった。
逆立つ白髪、全身に宿る雷、強靭な肉体。
いままで白い髪の只のオッサンだったゼウスが、まるで別人の様な覇気を纏っていた。
「私達のは手加減だったという事ね・・・」
「そ、そんな・・・」
妹達は落胆しているが、この世界に適応している能力では無かったため仕方の無いことだと思っている。
「あの中で無傷とは、本気は怖いねぇ~」
「殺しに来てるよりはマシじゃよ」
クハハと笑う矛人に対しガッハッハと豪快に笑う。
「んじゃ、本気としますか」
「いつでも来い!」
「喰らえ!怒槌・・・!!」
矛人の頭上に星ほどあるような氷が出たかと思いきや、いきなりゼウスに空気が割るような音と共に雷が襲った。
しかしゼウスは右手で弾く。
「なっ・・・!?」
矛人は呟くが驚いている暇はない。
次の攻撃に移さまいと、頭上に存在する雷を纏った氷をぶつける。
ゼウスは驚いていた。
氷と炎しか操れないはずなのに、雷を出してくるとは思ってもいなかったからだ。
「そう、戦いってのはこう言うのじゃないとなァ!!!!!」
無数に飛んできた氷を自分の右手から発声させた雷で全て打ち砕く。
そしてゼウスは一気に矛人へと駆け出す
「お主、弱点は近接だな・・・?」
そう言い終わった頃には、拳を構え矛人の目の前にいた。
「バレちゃったか・・・へへ」
クハハとイタズラに笑みを浮かべながら、右手を下に、左手を真上へと構える。
「これで終わりかのぉ」
たがしかし、ゼウスの渾身の拳が「ブンッ」という音と共に空を切った。
「いない・・・じゃと・・・!?」
そして矛人の姿を見つけた全員が口を揃えて驚いた。
「「「浮かんでる!?!?」」」