第23章-出会いと決意-
矛人と聖音がボロボロになる前の日、そう麗奈が旅立った日だ。
これは、麗奈の旅の話なのである。
「うーん。さて、旅立つことを決めたもののどうしようかしらね」
お城を出て、30分。大体11時くらいなのだが行き先を決めずに出てきたため、とりあえず神器についての情報収集しに街へと来ていた。
「情報収集と言ったら、やっぱり酒場かしら」
人混みを掻き分けながら、酒場の場所もわからずに酒場を探す。
「酒場というくらいだから、やっぱりビールみたいな看板なのかしらね・・・。とは言ったものの、文字が全く読めないわ・・・」
あちらこちらで主婦や、ドワーフ、エルフなど様々な人種が仲良く話していたり
「あらまぁ」
「今日は客がこんのぉ・・・」
「うっし、繁盛繁盛!」
などと、様々な会話が聴こえてくる。
言葉はわかるのに、文字がわからないとはこれいかに。
なんだかなぁ、なんて思いながらも看板をひたすら探す。
すると、ふと視界にベッドのマークのようなものを描かれた看板が映る。
「宿屋・・・かしら」
周りをよく見てみると、ベッドしか描かれていない看板と、ベッドの隣にハートが描かれている看板があることに気がついた。
「ハートない方が宿屋よね」
ハートがついてるのは多分、俗に言うあのホテルを示しているのだろう。
とりあえず・・・宿屋で今晩泊まる予約してからにしましょうか。
「すみませーん」
挨拶しながら扉を開けると、目の前にはフロントらしき空間が広がり、向かいのカウンターから
「はーい」
と言う声とともにその声の主であろう人物が出てきた。
見た目は年齢が大体60後半くらいであろうと推測できる外見のおばあさんだった。
「おばちゃん、私ここ今日泊まりたいんだけどいいかな?」
「はいはい、今から泊まりにするのかい?それとも後からかい?今は午前中だから後者だとは思うけれど」
「ピンポーン、後者ね。」
「わかったわ、ならこの紙に名前と大体戻ってくるであろう時間書いておくれ」
そう言いながら目の前のおばあさんは紙に指さし「ここここ」と促すのだが、そもそも麗奈は字が書けない。
ただ、数字はここでも共通らしく、どうしようかと少し悩んだあげくに
「外国人の名前の文字だってわからないんだから、私が日本語書いたって同じでしょ」
なんていうお気楽なノリで漢字で名前を書き、時間のところは数字だけ書いた。20:00と。
「あんた、これなんて読むの」
当たり前の反応だが、見たことの無い文字に驚いたおばあさんが聞いてくるので説明する。
「あのね、こう書いてかみがみね れいなって読むのよ。私はここ生まれじゃないから」
「へー、了解したわよ。んじゃ料金は銅貨4枚ね」
「あっ・・・」
ここの世界のお金は金貨、銀貨、銅貨で分かれており日本円に例えると銅貨が1000円、銀貨が10000円、金貨が100万円位らしい。結構差が激しい様な気がする。
まあ実際には、穴銅貨、銀貨、銀貨やアルミ製の通貨や紙幣など沢山あるのだが。
そしてさっき麗奈が「あっ・・・」と言ったのかというと、実は情報収集のことだけ考えていたためお金のことは考えておらず、無一文だったことをたった今思い出したからだ。
生憎、金貨等はそのまま円形状に加工したもののため作ろうと思えばすぐ作れる様なものだ。
絵柄などはなく、ただ単に質で判断するというものである。
仕方ない、自分の能力なのだから作ってしまえばいい。活用するだけなのだ、とそう思い、手を背後に隠し必要な分をこっそり作ることにした。
その時である、女性の手や子供の手ではない男の人特有の大きな、男らしい手が麗奈の腕を掴んだ。
「おばあちゃん、お金はこの私が払うよ」
「えっ・・・?」
頭上より少し後ろの方から、その男であろう人の声がその言葉を発したため、払うと言う感謝よりも先に混乱と言う二文字が濁流が渦巻くように脳内をかき乱した。
何を企んでいるのか、初めて会った人にどうやったら奢ってくれるのか、ナンパなのか、いろいろ考えたが結論が見えてこない。
こうして少しの間固まっていた麗奈だが、その゛人゛を確認するために後ろへと振り向く。
するとそこには顔立ちがキチンと整った、美青年がいた。
目はキリッと、だけども少しタレ目で優しそうな雰囲気があり、男性なのに艶のある白く輝く銀髪は肩くらいまでありシルクのように透き通っていて同じ銀髪の麗奈自身も負けたと思うほどだった。
もし自分じゃない他の女子達だったら、「キャーー!こっち向いてーー!」と言われるような絵に描いた様な男性にうっとりするまでは行かなかったものの、あまり男に興味が無い麗奈でさえ息を呑むほどであった。
とりあえず礼をしなければ、と思い
「あ、ありがと」
とだけ伝えた。すると美青年は
「いいよこれくらい。それより、能力の乱用は控えめにね」
「っ!・・・わかったわーよ。」
美青年は優しく微笑んでいたが、麗奈は自分の能力を気づいたその青年に恐怖を感じた。
何故ならば、手を背後に隠したと言っても拳を握っているし、そもそも生成している所が見えないのだ。
そんな中、この青年は気づいたと言うよりまるで゛知っていた゛様な雰囲気すら出している。
気になった麗奈は手続きを終えた後、青年に問い出す。
「あんた、神でしょ」
すると青年はハハっと笑ってゆっくり口を開いた。
「ちょっと違う場所に行こうか、ここだとちょっとね。」
歩いて5分と少しくらいだろうか、緑が映え中央にある噴水はまさに風景とマッチしており、心安らぐ美しい公園に来ていた。
青年がベンチに座り、トントンと座ってとアピールする。
麗奈はそれに従って、ベンチに腰を下ろした。
そこでは子供たちが元気にはしゃぎ、鬼ごっこやらボール遊びなど種族関係なく遊ぶ姿はなんとも微笑ましいものだった。
麗奈もその光景を見ていると、思わず目元が和らいぐ。
そして青年がまた、ゆっくりと口を開く。
「では教えましょう。私は神、ヘルメス。少しばかりゼウスに面倒見てやってくれと言われたのでね。」
「私は神ヶ峰 麗奈。知ってると思うけど、一応ね。」
「あぁ、よろしく」
「えぇ。」
よろしくと握手を求めてきたため、麗奈は握手をする。
大体神ってのは分かっていたが、ゼウスからだというのは少しばかり驚いた。
あのおっさんも粋なことするのね。
麗奈はヘルメスに旅の理由を話す。どうやら、ヘルメスはゼウスに麗奈の旅の理由など聞かされて無かったらしい。
それで、地球(下の世界)の武器が全く通じず、どうすればいいのか考えた結果、だったらこの世界の物を作ればいいじゃないっ!という考えになったという事をヘルメスに伝えた。
するとヘルメスは聞く。
「つまり、神器を作りたいと言う事?」
「えぇ、まあそうね。実際には神器を見て、それを生成して、立ち向かう。最強じゃない!」
キラキラした眼差しで麗奈は告げると、ヘルメスから予想外の言葉が飛び出してきた。
「多分それは出来ない。神器と言うのはその神が最大の力を発揮するための物であり、例え生成出来たとしても麗奈じゃただのなまくら物になってしまう。」
「それじゃあなに!私が弱いってことなの!?私が弱いから無理だと言うの!?」
「違う、例え神の私がゼウスの神器ケラウノスを手に入れたとして、それを使おうとしてもそこら辺の錆びた刀程度の武器にしかならない。」
「なら・・・なら私はどうしたらいいのよ!弱いままなの・・・?」
麗奈の目尻には涙が溜まっていた。
「それを導く為に、ゼウスに頼まれたんだ。他神の神器が使えないなら、自分専用の神器を作ればいい。少しばかりアテがいるんだが・・・どうする?」
ヘルメスの真剣な目元が和らぐ。
「そうね・・・分かったわ。」
麗奈は袖で涙目になった目を拭う。それから深く深呼吸をし、覚悟を決めたような、そんな鋭い真剣な眼差しをしてヘルメスに言葉を放った。
「分かった・・・やってやろうじゃないの。私が作る私のための私の神器・・・絶対に作ってあの狂神と兄妹を見返してやるんだからっ!」
後にヘルメスが言うにはその時の麗奈の顔は美しく、立派に輝いてた姿はまるで太陽神の様だったという。




