戦乙女の楽園 ~paradise of war maiden~
暑さに疲労困憊した夏はもう終わり頃。山は赤く紅葉で染め上がり、肌寒い凩が吹き荒らして秋の訪れを強調している。
障子を掻い潜り、道場にも風が訪れる。紅葉を運んで基地のあちこちに色彩を巻き、コンクリートを茜色に包んでいく。
道場では武蔵の指南の元、兵士達に剣術を学ばせている。皆、短期間で上達してるがまだまだ武蔵にはほど遠かった。それでも鍛練を怠らず、今日も一心に木刀を振っていた。
「ではこれで終了です。休憩の後、各自持ち場に戻りなさい」
「「「はい!」」」
今日の鍛練は終わったようだ。各々が持参したタオルで汗を拭き取り、水分を補給する。武蔵も同様にタオルで身体を拭いていく。
「ふぅ~。武蔵は乱暴だな」
セニアも疲れが増して壁に寄りかかっている。
彼女は己を戦力を鍛えるためにこうして武蔵に手解きさせてもらっている。避暑地での暗殺者との対決で敗けを決したセニアは自分の弱さに自負する。そんな彼女を見かねてか、武蔵が自らの道場に招いたのだ。
「このくらいでへこたれるとは、まだまだ精進できる余地がありますね。」
「これ以上、ボコボコにされるか」
武蔵の指南はじつに乱暴だ。我流ではあるセニアとの一戦は容赦なく叩き潰し、腕の違いを証明させた。あまりに強い打撃なのでその清廉とした肌には赤晴腫れたアザが浮かび上がっていた。
「いてて。風呂でもはいるか」
「あら、ですなら私も」
二人の共通点は風呂好きなところだ。一生風呂に入らなかった噂がある宮本武蔵はじつは風呂好きである。一方セニアもヒノキ風呂に病みつきになってしまい、1日1回は入らないと不機嫌になるのだ。
「ふぅ~。」
疲れが残っている身体を晒すように服を脱いでいく武蔵。その際、ぶるんとナニかが大きく揺れてセニアを嫉妬の渦に巻き込む。
「・・・武蔵はやはり大きいな」
「? なにがですか?」
首を傾げてキョトンとしている武蔵とは別にセニアは自分の胸を見る。そこにはあまりにも平らで淋しい丘があった。
セニアのバストサイズはB程度なのに対して武蔵はDカップ。平均的なサイズだがセニアはそれが羨ましいのだ。
「もしかして胸のことかしら?」
ここでセニアの悲願に察したようでウフフと笑いながらからかう。
「ええい!うるさい!さっさと風呂に入るぞ!」
セニアはあまりの恥ずかしさに頭を沸騰しながら湯船へと向かう。
門扉を開けるとすでに先客が湯船へ浸かっていた。
「おっ!武蔵にセニアか。」
「ん?ケリーか」
ケリーは湯船の縁に肘をかけてだらけそうに浸かっている。しかもその隣には
「シモもいるのか」
「・・・うん」
シモは湯船に体育座りでじっとしている。さらさらの長い銀髪は湯の水面に浮かんで白く輝いている。
「ふむ・・・」
やはり、ここでも嫉妬の渦が旋風する。それもそのはず、
「いや~。やっぱ訓練の後は風呂だよな~。」
ぶるん
ケリーの胸元にセニアの非念が降り注ぐ。目測でもF。
年もそんなに離れてないのにこの差はなんなんだ。とおもわず神様を呪いそうな勢いである。
それに比べてシモは真っ平ら。自分に少し劣ってる淋しい胸だ。これは勝った!
「ふふふ、そんなに胸が欲しいですか?」
武蔵は腕を組んで胸をさらに強調するような体勢だ。なんだろう、殺気が半端ない。
「なんだ、セニアはおっぱいが欲しいのか?」
「うっ・・・」
当たってるだけで反論出来ない
「・・・私も欲しい」
ここに同士が!
おもわずシモと意気投合してしまうほど気があった。
心中ではフィンランドとドレイク公国が同盟を結んでいる妄想が映えた。
「・・・胸があれば総督を誘惑できる」
「はっはっは!あいつは巨乳好きだからな!お前には無理だ!」
どこでそんな情報を掴んだのだろう。しかも明らかにシモに喧嘩を売ってる。一方間違えばフィンランドとアメリカで戦争が起こるぞ
シモはプクーと可愛らしく頬を膨らませて怒ってる。貧相な胸をバカにされたからだろう。
「・・・そんな脂肪の塊なんてただ邪魔になる。それでは匍匐姿勢も出来ない。」
「やーい!負け惜しみ!悔しかった・・・イテテテテテ!」
とうとう噴火したのかケリーの頬を思いきり捻る。歯と歯茎が露になるほど伸びる餅肌だ。
「たくっ・・・なにすんだよ」
「・・・私は悪くない。」
つーんと顔を背けるシモとは対照にセニアは満足だった。
貧乳をバカにされたから。
ガラガラ
と、ここでまた新たな入浴者がお邪魔してくる。湯気で誰かは見えないがどんどん姿が・・・
「おや、先客がいたさね」
「な~んだ。一番風呂かと思ったのにな~。」
爆撃隊と戦闘隊のエース、ハンスとエーリヒがバスタオルで身体を隠しながらこちらへと向かってくる。
「負けた・・・」
ケリーが悲観的になるのも無理はない。なぜなら
ばいんばいん
ハンスの爆乳へ目がいくからだ。巨乳のケリーとは勝負にならないほどの大きさだ。バスタオル越しなのに充分デカイと分かる。目測でもG、いやHはあるかもしれない。
ちなみにエーリヒはEぐらい。武蔵とはほぼ互角だ。
「そんな所でなにしてるさね。
」
「いいんだ。気にすんな・・・」
先程までの威勢は消え失せ、見事に撃沈したケリーがいた。その横ではシモとセニアが彼女が負けたことを喜んでいた。
だが、
「やはり凄い胸だな」
「・・・欲しい」
「まったくだぜ。栄養のほとんどが胸に集中してるんじゃないか?
「3人ともなに言ってるさね。あっても邪魔なだけさね。」
喧嘩を売ってるな。
そう確信した。
「朝起きると肩がこる。胸のおかげでコックピットにも入りづらい。ブラもすぐ壊れる。悪いことばかりさね。」
それぐらい我慢する!巨乳とデメリットを天秤にかけたら間違いなく巨乳を優先したいほど欲しい。
「まあ、総督が巨乳好きと聞いたときは嬉しかったさね。」
照れながら笑みを浮かべるハンス。なかなか見られない乙女の表情だ。
「またカオルか・・・」
この基地の人間はどいつもこいつもカオルが基準値なのか。
それともただアホの集まりなのか
しかし、
「・・・私ではダメなのか?」
巨乳好きと聞いて落胆してしまう。この胸ではカオルに奉仕するどころが目を向けてもらうことさえ出来ない。
セニアは自分でも知らないところでカオルを好いている。だが、恋を知らない彼女はこの胸のモヤモヤがなんなのか分からない。
「落ち込むことはないわよ。」
武蔵が肩にポンと手を置いて励ましてくれる。
「カオル様なら巨乳も貧乳も受け入れてくれるわ」
「・・・ほんと!?」
シモが凄い勢いで食いついてくる。それには私も同感だ。これで希望が生まれた。
その日からセニアは少しでも胸を大きくするために牛乳を飲んだりと数え切れない努力をすることを決意した。
そのことを知らないカオルは、
「えっ?女性の好きなパーツ?」
「うん。そう言えばボク達、総督の好物とか知らないからね」
自室でカルロスに好きなパーツを質問された。目をランランと期待しながら見つめるカルロスに対してカオルはうーんと深く考え、結果は
「足かな?」
以外にも足フェチなのが発覚した。
これを知らないセニアはひたすら牛乳を飲み続ける努力をするのであった。




