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黒い悪魔

避暑から帰って2週間後の今現在。相変わらず捕虜となった刺客の女は頑として話さない。祖国のためだとか愛国心があるようだ。


さらに避暑から基地へと戻る途中、無線で緊急通信がはいった。どうやら、帝国からのベルくグの竜騎士が爆撃をしたとの連絡が。俺らがいない間にそんなことがあった。主要都市ばかりを狙った無差別爆撃だ。戦時中の日本と同じ境遇だな。


いま、公国では復興作業とベルグ対策に力を注いでる。反撃しようにも公国にはベルグは住んでいない。そのため、同じ手は使えない。


さらに最悪なのは、貴族の態度だ。同盟を結んでいるというのに俺らがまるで傭兵扱いだ。あれしろだとか、これしろと雑用同然の命令をされる。うちの女性兵士もいやらしい目線を感じたとか証言もある。何度ぶっ殺そうかと思ったな。


「それでカオル。ベルグにはどう手を打つのだ?」


セニアはしばらくここに住み込みだ。女王の護衛はラファールら、メイド部隊が引き受けてくれた。メイド部隊とは騎士同然の戦闘訓練を受けた護衛集団だ。家事もできて護衛も出来る。ほら、よくアニメや漫画で武器をもってるメイドがいるだろ?あれとおんなじだ。


「ベルグは空を飛べる。バリスタなどあるがベルグの飛行速度には追い付けず外すばかりだ。これにどう対抗するんだ?」


聞いたところ、ベルグは高度1000メートルまで飛行可能でバリスタでは太刀打ちできないらしい。こちらも銃の射程範囲だと思うが飛んでいる物体目掛けて当てるのほ至難の技だ


「あいつらに任せる。今の時間帯ならガレージにいるな。」


「はい。」


空には空で対抗する。



/※/



「はい、そこ!さっさと部品もってきな!」


「はい!」


「弾薬庫から新品のAIM―9Lサイドワンダーを5基持ってこい。あと、Mk83もな。」


「頑張ってるな~。」


「まだか!おそいぞ・・・閣下!?」


「悪いな。お邪魔してるぞ。」


「いいいいえ!とんでもありません!どうぞ心行くまでみてください!」


「そう畏まるな。ミアン少尉。」


ここは戦闘機、爆撃機、偵察機、輸送機などのドックだ。その数あるうちの一つである第一ドック。主に戦闘機の点検や管理を任してる。


「総員、閣下に敬礼!」


皆が作業を中断にして敬礼してくる。クルーは皆、作業服を着こんで油で汚れていた。


「そういえばエーリヒは?」


「隊長ならあそこに」


「ぐぅ~・・ぐぅ~・・・」


大いびきをかきながら寝ている女性が。へそ丸出しで顔に本を重ねて仰向けで寝てる。


「またか」


「ええ。またです」


「たく・・・おい、起きろ」


「・・・むにゃ・・・うん?なんだお前か」


「よく寝たか?さあ、仕事だ」


「ああ~。ちょっと起こすの手伝ってくれ。体が怠い。」


「しかたねぇな」


無理矢理起こしてやる。普段から堕落した生活してるもんだからこんな廃人になったよ。


「あとタンクトップで過ごすなと言ったろ。胸が半分見えつつあるんだよ。」


「見えるじゃなく見せてるんだよ。まったく鈍感だな」


「いいからさっさと起きろ。」


黒っぽい紫色のショートカットの彼女はエーリヒ・ハルトマン。ドイツ空軍のエースパイロットで第二次世界大戦では空中戦での撃墜機数は戦史上最多で未だに破られていない。まさに伝説のパイロットだ。


「エーリヒ、カオル様に向かってお前とは失礼きまわりないですね。」


「別にいいだろ。こいつがいいっていうんだからよ。」


そう言いながら俺の首に手を回して抱きついてくるる。なんだろうドックの気温が2度くらい下がった気がする。


「なあ、カオル。オレらはラブラブだよなぁ?」


また2度下がった気がする。


エーリヒはこんな性格だ。相手の身分立場など関係なく接する奴だ。たしか名誉な授与式に酔っぱらって参加して帽子がないのでナチス総統ヒトラーの帽子を勝手に拝借したほどの度胸がある。


「え、えっと・・・」


「まったく照れるなよな~。このこの~。」


ピシッ


なんだろう。大切ななにかを失った気がする。


「そ、それより!任務があるんだったなぁ!」


「いきなりどうした。それよりオレの下着知らねぇか?そこらへんに脱ぎ捨ててきて・・・」


「任務はベルグの討伐!それだけです!お願いだからもう黙って!」


口で無理ならあとは誠意を見せるだけだ。土下座は最上級の要望を示す態度だ。



/※/


翌日。

滑走路にはベルグ討伐に向けて全機がエンジンを蒸かして続々と離陸準備に取りかかる。


機体は格闘戦を得意とするF―15イーグルを。AIM―9Lサイドワンダー、AIM―7Fスパロー、Mk83を搭載。ベルグ相手なら機銃で充分だと思われるが万が一に備えてミサイルを保持させた。


エーリヒ少尉は愛機のメッサーシュミットBf109で出撃する。最新機のF―15イーグルには性能も格闘能力も劣るが最新機器に頼らないエーリヒの性格からこの機を選んだ。しかし当時と同じ機体ではなかなかキツいだろう。そのため、機体の良さはそのままにいろいろ改造した。装甲には最新の装甲を用いて防御率を上げてエンジンをまるごと取っ替えた。エンジンをまるごと取っ替えた理由はメッサーシュミットBf109の最大の弱点ともいえる航続距離を改善するために燃料の消費を抑えて限界まで燃料タンクを増大させ、弱点を克服させた。


そして彼女の機の特徴のチューリップのマーキングが施されている。


「さーて、行きますか!」


ただ一人、ほかより劣る機体のパイロット。だがその目は悪魔、「黒い悪魔」そのものだった。



/※/



「あと15kmで公国だ。作戦は覚えているな?」


「もちろんだ。主要都市への爆撃、だろ?」


ドレイク公国から東へ15kmの渓谷の上空にベルグの大軍。100匹はいる。


彼らは数十分前に帝国を飛び立ちこうして公国への爆撃を命じられた。竜騎士の小型爆弾は手榴弾のように雷管を使った時限爆弾ではなく、導火線に火をつけた爆弾だ。仮に爆弾が底を尽きてもベルグの火炎放射で都市を焼きつけることもできる。


「公国の奴等に目にものをいわせてやるぜ」


「おいおい、ベルグから落ちるなよ?回収するの面倒だからな」


「ひどいぜ。まあ、あんな弱小国なんてはなっから敵とは思ってないがな」


「しかし、最近仲間が次々と殺られたらしいぜ?あのヤタガラスさえも女王暗殺を失敗したほどだ。」


「ああ、投入された刺客全員が戻ってきてないんだ。多分全員が殺られたか、捕まったかだな。」


「俺はあんな弱っちい集団とは違うんだ。見てろ、俺が公国を滅ぼして・・・」


ドォン!


爆音がする。自分らの小型爆弾とは桁が違う轟音と威力が混じる。

前方のベルグ隊を見れば数匹が謎の爆発をもろに受けて灰と化した。


「な、なんだ!」


「爆発だ!爆弾の暴発か!?」


「おい見ろ!あそこから何かが来るぞ!」


とある竜騎士がそらの彼方を指さす。たしかに鳥のような形をした何かから放たれた物体がこちらへと向かってくる。


「ありゃなんだ?」


そう思って首を傾げたところ、激しい爆発とともにその男の姿は消えた。



/※/



『こちら、シュバルツ5。ミサイル命中』


「了解。引き続き、攻撃を続けろ。」


鉄の鳥ともいえる戦闘機。グレー色の機体に混じって黒のボディーにチューリップのマーキングが目立つ機体がいた。


『隊長、すでに十数体は撃墜しました。』


「よっしゃ!ならオレも参戦だ!」


プロペラ機だが最新の機器を搭載した改造機メッサーシュミットで滑空する。


「おらおらおらおらーー!!」


機銃を乱射しながらベルグを追いかける。当然、ベルグは戦闘機には敵わないために追い付かれハチの巣となる。


『隊長!無駄撃ちは止めてください!流れ弾に当たります!』


「大丈夫だ!当たったら回収してやるよ」


『結局当てるつもりですか!』


ベルグと混戦しながらイーグルやメッサーシュミットは機銃を乱射する。戦闘機から放たれる銃撃には避けることも防ぐこともできずに空中に赤い華を咲かして散っていく。


「なんだ奴等は!」


「くるな!くるなぁぁぁぁぁぁぁあ・・・」


「逃げろ!あんな化け物に勝てるわけねぇ!」


敵わない相手と知ったのか一目散に逃げ出す。だがそれを許さんとばかりにミサイルで追い討ちをかけて爆発する。


「ははは!見ろ!人がゴミのようだ!」


『隊長戻ってきてください、人に。』


機銃を乱射してヒットしたらすぐに戦前を外れて逃げる。これぞ、エーリヒが得意とする一撃離脱戦法だ。


「おい見ろ!残り一匹だ!」


『私がやります。隊長は』


「いいや、オレがやる!」


狂ったといわんばかりに撃ちまくる。ベルグとその背の騎士は無惨となり落下していく。


「はっーはははは!やったぜー!!」


喜ばしいのかアクロバティックな飛行を魅せる。


それに彼女の部下はため息を吐きながら基地へと帰還する。



/※/



「はっはっはー!オレは65体のベルグを殺ったぜ!誉めてくれよな!」


「はいはい、よくやったな」


基地へ帰ってきた途端にいきなり撃墜数を自慢された。しかたないので頭を撫でて誉めてやる。


「さすがは「黒い悪魔」。一時間で65体も殺るとはな」


「オレにかかればちょろいもんよ!」


相変わらずエーリヒはエーリヒであった。



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