第29話kurenal(紅)
『ナンデ、オマエハイキテルンダ?』
魔黒石は機械のような声で言ってきた。
俺は魔黒石を睨み付け、何も言わずに構える。
真紅の大剣はすでに黒い炎の色となり、まるで地獄の業火のようだった。
俺の推測だがこの真紅の大剣は魔術を吸い込んで、自分の力に変えられるらしい。真紅の日本刀は吸収だけだったが、イフリートの力の解放をしたからだろう。
「ひとついいか?」
『ナンダ?』
「お前は運命を変えることができるか?」
『デキルゾ』
「分かった………いくぞっ!」
俺は魔黒石に向かって走りだした。魔黒石は五つの黒い球をまた作り出して、黒い球が襲ってきた。風を切る音と共に球は勢いをつけて、針へ姿をかえる。
俺は四つを叩き落とし、一つは避けたつもりだったが、肩をかすめた。肩から血が吹き出すが気にせずに、魔黒石の方に向かう。
俺は魔黒石に向かって跳び、真紅の大剣を上から縦に斬り下ろす。魔黒石は尻尾の鎌の部分で抑えてくる。火花が散り、俺は魔黒石の横腹に蹴りを横からいれた。魔黒石は防ぐこともできず、吹っ飛ぶ。
煙を巻き上げながら、魔黒石は四つん這いになりながら十字の口を開き、黒い光線を吐いてきた。俺はそれをも斬り払う。真紅の大剣はまた黒くなっていく。
『ナゼダ、ナゼキカナイ』
「悪い…お前の力はもう吸収させてもらった」
魔黒石の尻尾と真紅の大剣がぶつかったときだ。魔黒石はもともと魔術で作られた生き物なのだ。
『ナルホド…コレハドウカナ』
魔黒石は尻尾を引きちぎり、撫でると尻尾は真紅の日本刀が黒くなった感じになった。
『ソノケンニ、スワレナケレバイインダロ?』
魔黒石は一瞬の内に俺の前に立っており、黒い剣を右肩から斜めに斬ろうとしていた。俺は黒い剣に向かって横切りをする。しかし、魔黒石は待ってました言わんばかりにしゃがみ、俺の真紅の大剣が空を斬るのを見たあと、下から上に右足の付け根から左肩の方向に斬りつけられた。魔黒石は距離をとり、黒い剣を黒い斧に変化させた。黒い斧はゆうに二メートルをこえていた。
「はぁ、はぁ…」
俺は息を乱し、左肩を右手でおさえながら、左手だけで真紅の大剣を持ち、魔黒石をにらむ。
「やっぱり強いな…」
『ソンナコトヲイッテテ、ダイジョウブナノカ?』
一瞬にして、俺の全方位に黒い球が数百個できた。
『コノカズハ、フセギキレナイダロ』
「くそっ!」
俺は真紅の大剣を振り回すが、無惨にも突き刺さっていく。
痛い…
体が動かない…
もう終わりかな…
もう死ぬのかな…
もう皆を助けれないのかな…
独りで死んでいくのか…
―――独りじゃないよ
頭に声が響いた。
紅の声だ。
―――勝ちたい?
「…当たり……前……だろ…」
―――分かった
すると、真紅の大剣が紅に戻っていた。
紅の顔が妙に寂しげに見えた。
「これを斬って」
紅はそう言いながら、赤くなった鎖を指差した。
「…斬ったら…あいつに……勝てんのかよ」
「うん、決まってんじゃん」
なぜか、紅は今までに見せたことがないほど綺麗な笑顔をみせてくれた。
しかし、その笑顔は一粒の涙と共に消えていった。
「早く、斬って」
「なんで…泣いてん…だよ……」
少しずつ、紅の顔が歪み始める。
「陰と出会えて、嬉しかった」
紅の目に涙が溢れて、こぼれる。
「なに…言ってんだよ……別れの…挨拶…じゃあるまいし…」
「ううん、別れの挨拶だよ」
紅は腕で涙を拭き取り、笑顔を見せてくれた。
「じゃあね」
紅が鎖を手刀で断ち切った。
ぽつぽつ、と紅から崩れていくように光の粒子が夜空に飛んでいく。
消えていく紅を見て、俺は本当に最後なんだと思った。
そして、今まで俺の内に秘めていた叫びが口から出ていた。
「意味がわかんねぇよ……なんで皆、俺のために傷ついて、俺なんかのために気をつかってくれて、なんで、なんで!俺はなんにもできねぇんだよっ!」
少しずつ無くなっていく紅に向かって、泣きながら叫んだ。声の出る限り。紅には聞いてほしかった。
「陰は皆を笑顔にさせたよ」
最後に消えていく間際に言った、紅の言葉。
題名は一様名詞なので、ローマ字にしました。




