第27話Conclusion(決着)
遠くから陽じいさんの声が聞こえる。
もしかして、俺は死ぬのかな…
生きたい、このまま死んだら望美達に見せる顔がねぇ。
俺は生きたいという一心で真紅の大剣を後ろに振り回す。
後ろが見えた時には、源三郎の手から黒い光が見えた。
「うおおぉぉぉぉっっっ!」
俺は諦めずに真紅の大剣を源三郎に向かって振る。
ものすごく大きな衝撃が前から真紅の大剣を伝って、俺に伝わる。俺は一気に十メートル程吹き飛ばされた。何度も何度も転がりながら精一杯止まろうとするが壁にぶつかり、血を吐き出した。
よかった、生きてる。胸を撫で下ろした後
、源三郎の方を見る。真紅の大剣を両手でもち、体の前で構える。
真紅の大剣の色が変わっていた。さっきまでは綺麗な赤色だったのに、今は少し黒ずんでいる赤色だった。
「運が良かったな」
源三郎の声が十数メートル奥から聞こえた。真紅の大剣から目を離し、源三郎の方を見る。
「これなら、どうだ」
源三郎の手に闇極槍が作られた。
陽じいさんにしたことと同じことをするつもりだ。
俺は両手に力を入れた。一つ深呼吸をする。
闇極槍が飛んできた。真っ正面から受けるのは無理だが、軌道をずらすことくらいならできるはずだ。
「こいっ!」
俺は真紅の大剣を縦に持ち、膝をついて刀身を斜めにする。
両手が痺れたと分かったときにはもう、闇極槍は消えていた。どうやら防げたらしい。
「手加減はなしだ」
源三郎が上位魔術の光ペガサスと闇ユニコーンを作りだした。
源三郎が俺に向けて指を指すと、二体が俺に突進してきた。
中位魔術だから防げたものの上位魔術は防げるか分からない。
「よっと」
陽じいさんが俺の前にきて、二体を光の粒子に変えた。
今は感謝という気持ちより、自分の不甲斐なさに嫉妬していた。
「さがっておれ」
「待ってくれ、俺も戦う」
陽じいさんは一瞬驚いたが、すぐに笑顔になった。
「いいぞぉ」
俺は立ち上がり、真紅の大剣を構える。陽じいさんが隣から消えると、俺も走りだした。
陽じいさんと源三郎が近距離で魔術の応酬をしていた。俺は流れてきた魔術を真紅の大剣で防ぎながら機会をうかがう。
「くそっ」
源三郎が攻撃に耐えかね、後ろに飛ぶ。
ここしかない。
「うらあぁぁぁっっ!」
俺はここぞと言わんばかりの大声をあげながら源三郎の腹に横から斬りかかる。
しかし、大声をあげたのが悪かったのか、源三郎が俺に気がついてしまった。俺はもう戻ることもできず、そのまま斬りかかる。
源三郎は余裕の顔で、水極盾を真紅の大剣の軌道に作る。
俺は足に力を入れ、踏ん張りながら全力で振る。
「うおりゃああぁぁ!!」
真紅の大剣は勢いが死なずに、水極盾を壊した。そして、源三郎の腹を斬りつけた。
「うっ!」
源三郎は痛みに顔を歪ませながら、距離をとるために後ろに下がる。このチャンスを逃してたまるか。
「みんな!追撃を頼む!」
いつのまにか、俺はそう言いながら源三郎に向かって走り出す。
「群馬さん、すみません。風極壁!炎極壁!水極壁!土極壁!」
龍刃先輩がぼろぼろの格好で謝りながら、四つの壁を源三郎の周りに作り出し源三郎を囲んだ。
「お父様、いきます。風極針」
決意をした揺るぎない目で静香先輩は言った。
一気に数百本の風でできた一メートルの針が龍刃先輩が作った箱に突き刺さる。
「こんどは、わしの番かのぉ」
陽じいさんは針の突き刺さった箱に向かって、手をかざすと光のリングが箱を中心にできあがる。手を握ると、光のリングが一気に小さくなり爆発した。
煙が立ち込めるなか、俺は最後の追撃をするために源三郎のもとへと走った。
源三郎は血だらけでよろよろしながら立っていた。俺は真紅の大剣を天にかざし、そして、振り下ろした。
源三郎の裾の中にある魔黒石向かって。
ガラスが割れたような音が聞こえた。源三郎の裾からでてきたのは、粉々になった魔黒石だった。
煙が消えていき、周りが見えてくる。源三郎は地面に膝をつき、ただ茫然と空を見ていた。
勝ったのだ。
「陰……よくもしてくれたの」
陽じいさんは険しい顔をしていた。もしかして、やってしまったか?
粉々になった魔黒石の欠片から黒い煙が立ち上った。




