中編
フランチェスカは自らの直面する問題を解決すべく、静かに、そして苛烈に動き始めた。
まず手を付けたのは、揺るぎない絶対的な家臣団の形成である。
情報漏洩や細作の存在を最初から計算に組み込み、公爵家の古い保守的な家臣たちはあえて父の側にそのまま配置しておいた。
残るは、フランチェスカの命令のみを直接受ける有能な側近たちと、帝国のお祖父様から密かに遣わされた精鋭の人材である。
これまでは「国家の自浄能力」が働く可能性を考慮し、事態を穏便に解決するため彼らには現状維持を命じていた。
しかし——もはやこの状況は、甘い希望を捨てて「排除・破棄」すべき局面であると判断せざるを得ない。
純愛という名の感情論に酔いしれる王太子と、徹底して貴族的な現実主義を貫く大帝国の血脈。この噛み合わない両者がそのまま国を動かせば、やがて王国を二分する悲惨な内乱を引き起こすだけに過ぎないのだ。
王国の最高位貴族として己の義務を鑑みるに、この破滅的な状況を黙って受け入れることなど、単なる『無能者』の選択である。
それだけは—フランチェスカのプライドとして、何があろうと絶対に避けなければならなかった。
まず直属の家臣団を、公爵家に仕える寄子貴族たちの元へと向かわせる。
学園の噂を軽薄に面白がっていた愚かな貴族たちには、徹底的な『恐怖』を叩き込んだ。
噂の肯定は公爵家への明確な謀反であり、仮にフランチェスカが予定通り王太子と婚姻したとしても、帝国との同盟を重視する公爵家およびその賛同派から徹底的に糾弾されることになると宣告した。
さらにそれが実行された場合、単なる爵位の没落にとどまらず、生存争いにおける『粛清』にまで発展する旨を静かに示唆した。
現時点で公爵家の寄子でありながら噂に乗っかったこと自体を裏切りと捉え、「明日にでも強力な盗賊団に領地を襲撃されるやもしれない」と死の匂いを漂わせたのだ。
元より、くだらない娯楽に興じるような視野の狭い貴族たちである。現実的な死と破滅の恐怖に耐えられるような肝の据わった者など、皆無であった。
一方で、噂に対して静観を保ち、冷静に対応していた良識ある貴族たちには『明確な利益』を提示した。
寄子内での格付けの格上げ、公爵家幹部への抜擢、そして大帝国との直通貿易による莫大な利権の分配—。
王太子の対応の拙さと危険性をすでに理解していた彼らは、提示された圧倒的なメリットに吸い寄せられるように、容易くフランチェスカの軍門に降った。
最後に、公爵家の絶対的な武力である騎士団への懐柔である。
フランチェスカは騎士団長の側近として、帝国から派遣された精鋭の騎士たちを密かに配置した。その上で、「自分と王太子殿下との反目が最悪の内戦に発展した場合、反対派を叩き潰すために帝国軍の精鋭を投入することになる」と冷酷に脅しをかけたのだ。
本来、現場の騎士団とは極めて現実主義的な組織である。現実(戦場)を見誤れば即座に死に直結する職種だからこそ、無益な内戦の愚かさを誰よりも理解していた。
脅しとは、最悪の事態を脳裏に描かせるための『毒のエサ』に過ぎない。現実を知る騎士たちにとって、回避されるべき内戦と「平和の維持」こそが何よりの甘い飴なのだ。
(もっとも、その決断を滑らかに呑み込ませるために、いくらかの上質な酒と金貨を添えることも忘れはしなかったが)
これらはすべて、二年前から水面下で準備を進めていた構想を実行に移したに過ぎない。
相手の返答を待ってから動き出したのでは、到底間に合わないのだ。相手の出方をあらかじめ予測し、回答を得た瞬間に迅速果断に盤面を動かせるよう、あらかじめ配石を終えておいた。
仮に、いまさら父や王家がフランチェスカ側の貴族を引き剥がそうと躍起になったところで、時すでに遅く手遅れとなるだろう。
寄子や騎士団への手回しと並行して、フランチェスカ自身は、公爵家の影響力が直接届かない他派閥の貴族たちへの働きかけを行っていた。
狙うのは、学園内で一定の勢力を持つ「良識ある貴族たち」である。
フランチェスカは日頃の学園生活やお茶会、勉学の場を通じて、彼らとの交流を密かに深めていった。
王太子殿下との関係が修復不可能であるという現実は、彼女が殿下と意図的に距離を置き、噂を放置した時点で、すでに学園全体の共通認識となっている。世間では「悪女」などという安っぽい風評が主流を占めていたが、物事の本質を見極められる良識派も確かに存在していた。
それを踏まえた上で、フランチェスカは彼らに対し、憂いを含んだ表情でそっと『相談』を持ちかけたのだ。
「……卒業の日を迎えるのが、これほど恐ろしいとは思いませんでしたわ」
現在、学園内では「王太子殿下と男爵令嬢の真実の愛を阻む悪女」と蔑まれていること。
しかしその件も含め、父である公爵にも、王家にも幾度となく危機として報告しているにもかかわらず、軽んじられ放置されていること…。
「このままの状態で王太子殿下に嫁がされた場合……わたくしは最悪、王家の手によって闇に葬られるのではないかとさえ考えてしまうのです。あるいは婚姻後、どこかへ永久に監禁されるか……。もしそのような事態になれば、帝国のお祖父様が一体どのような『対応』をお取りになるか……わたくしには、想像するだけで恐ろしいのです」
フランチェスカが口にした悲痛なまでの『不安』は、派閥の垣根を超えて瞬く間に各貴族家の当主たちの耳へと届いた。
彼女の抱く危機感は、客観的に見て極めて正当なものであった。
もし帝国の血を引く公爵令嬢が王家によって害されるようなことがあれば、それは即座に「大帝国からの侵攻」を意味する。
破滅的な事態を回避し、過酷な政治的変動に対応するため、他派閥の貴族たちもこぞってフランチェスカとの接触とパイプの確立を熱望し始めたのだった。
フランチェスカは、招待状の届いた貴族家のお茶会や夜会へ、積極的に足を運んだ。
自ら主催するのではなく、あくまで「各貴族家からの招待に応じる」という形を取る。
この受動的な立ち振る舞いこそが、彼女の秘められた計画が露呈するリスクを最小限に抑え込むのだ。
表向きは「将来の王太子妃としての関係構築」あるいは「失意を紛らわせるための社交」。その完璧な淑女の仮面に騙され、父も王家も彼女の真の狙いに全く気づかない。何より、王太子の問題の放置という負い目がある彼らは、フランチェスカの頻繁な外出に疑問を抱くことすらできなかったのだ。
接触した中には、これまでセリム公爵家と激しく対立してきた反対派の高位貴族たちも含まれていた。
しかし、「王族の浅はかな恋愛ごっこによって国家が滅びかねない」という極限状態において、王国貴族としての生き残りをかけた意志共有は難しくない。
そもそも国家における『派閥』とは、利権の配分割合に過ぎないのだ。現王家の専横が崩れ去るならば、その配分は塗り替わる。
有能で野心のある貴族ほど、この絶好の投資機会を見逃すはずがなかった。
フランチェスカは彼らに対し、単なる政権批判にとどまらず、王家の独裁を排し貴族たちの意向を国政に反映させる『貴族議会(元老院)』の創設という、魅惑的な次代の統治ビジョンを提示した。
主要な貴族たちと膝を突き合わせ、王国の新たな支配体制について密かに絆を深めていく。その強固な約束の担保となるのは、他でもないフランチェスカが宿す『大帝国の血脈』である。
かつては婚約の最大の担保であった『帝国の血脈』という絶対的な権威と保障。
フランチェスカはそれを、次代の王国を共に運営するための切り札として利用し、貴族たちを完全に掌握していったのだった。
準備はすべて整った。
それでもなお、フランチェスカはしばしの間、自らの動きを止めた。
万が一にも、離宮で国王陛下が口にしたように、王太子殿下が自らの愚行を振り返り、身の振り方を改める可能性があるのか—その最後の一線を確認しなければならなかったからだ。
猶予の期限は、学園の卒業。
フランチェスカにとっても王太子にとっても、学生という保護された籍を失い、一人の貴族として責任を負う立場となる節目である。
だが、フランチェスカの元へと届けられたのは、ある意味で彼女の予測すら遥かに超えた愚劣な報告であった。
王太子殿下は卒業式という晴れの舞台で、フランチェスカを「真実の愛を阻んだ悪女」として白昼堂々断罪する計画を立てている、と。
この衝撃的な報告をもたらしたのは、他でもない王太子の側近であった。
かつてフランチェスカを『悪女』と仕立て上げる巧妙な噂を最初に流した張本人である。その政治的立ち回りの能力を認めたフランチェスカが、あらかじめ「一族の滅亡」か「完全なる臣従」かの二択を突きつけ、二重スパイとして王太子の懐深くに潜ませていたのであった。
……もはや、呆れを通り越して笑うしかない報告であった。
王太子の個人的な恋愛を邪魔することが『罪』になるというのだから。国家の契約や外交を無視し、自身の幼い感情を法の上に置くなど、狂気の沙汰としか言いようがない。
(……王太子の教育を担ってきた貴族たちには、近いうちに表舞台から消えてもらいましょう。これほどまでに無能で愚かな継承者を創り上げた罪は、もはや国家反逆罪に等しいわ)
国王陛下や王妃殿下にも甘やかしの責任はあるが、王族の人間形成と教育の実務を担うのは家臣の役割だ。その職務怠慢のツケは、等しく支払わせねばならない。
フランチェスカの胸の内に最後に残されていた、「王妃となり、この王国を支える」という最後の躊躇いと覚悟は、この瞬間をもって綺麗に砕け散った。
そして、確固たる信念と共に、国家と民に対する新たなる『真の忠義』が眩いばかりの光を放ち表に立った。自らの行いは、王国の未来のため、そしてこの国に生きる国民の生存のために不可欠な決断である。
世間が悪女と罵るならば、好きに罵ればいい。
大帝国の血脈を宿し、筆頭公爵家を背負う者として…フランチェスカは自らの絶対的な責任と矜持を胸に、刻み進むことを決意した。
◇
フランチェスカは静かに、そして確実に行動を起こした。
父セドリックは「大帝国との貿易協定の見直し」のため、国境にほど近い貿易都市アルカへと旅立った。
この協定交渉そのものが、帝国皇帝たるお祖父様とフランチェスカが密かに打っていた布石である。婚姻に伴う関税や貿易品目の再編という名目で開催されたのだが、当のフランチェスカはすでに王太子と結ばれる気など毛頭ない。
そうとも知らず、父はいつものように予定調和の公務として出立していった。
あれほどまでに言葉と書面で危機を訴えた娘に対し、何一つ疑問や疑念を抱かないとは……危機管理能力が欠如していると言わざるを得ない。
父を支持する旧来の騎士たちや、文官である執事たちもまとめて同行させた。
これにより、公爵邸内に残っていた抵抗勢力は、拍子抜けするほど綺麗に排除されたのだった。
父が出立した翌日、フランチェスカは父の後妻である義母フランカの部屋へと足を運んだ。
「お義母様。急なことで大変恐縮でございますが、おでかけのご準備をお願いいたします」
突然の訪問にもかかわらず、義母フランカは取り乱す様子もなく、静かな瞳でフランチェスカを見つめた。
「……フランチェスカ様。ロベルトは、どうなりますでしょうか?」
義母は力のない弱小伯爵家の出身である。前夫を事故で亡くし、若くして実家へと戻っていたところを、男児の生まれなかった公爵家の後妻として迎えられ、嫡男ロベルトを産んだ。
彼女は主張こそ控えめだが、貴族社会の力学を正しく理解している聡明な女性であった。
実家の力が弱いために発言権を持たない自らの立場を弁え、フランチェスカの密かな動きに感づきながらも、あえて沈黙を守り続けてきたのだ。
仮に父へ危機を訴えたところで、慢心した父が気にも留めないことを見抜いていたのだろう。
その『沈黙』こそが、彼女なりの生存戦略であり、家の決定(強い者)に従うという意思表示であった。
フランチェスカは、彼女のその賢明な沈黙を高く評価していた。
「お義母様。どうぞご安心くださいませ。しばしの間、風光明媚な湖畔に佇む別邸にて、ロベルトと共に心穏やかにご静養なさってください」
義母が唯一案じていたのは、幼い息子のロベルトであった。
当のロベルトは可愛らしい寝息を立てながら、すやすやと昼寝を貪っている。
その愛くるしい寝顔を優しく見つめながら、フランチェスカは弟の柔らかい前髪をさらりと撫でた。
「ロベルトは、わたくしにとってもかけがえのない血の繋がった弟。わたくしもこの子をとても愛おしく思っておりますわ。ですから……どうか安心してお過ごしください」
こうして義母フランカと弟ロベルトは、手厚い護衛と給仕を伴って、風光明媚な湖畔の屋敷へと旅立った。
遠くアルカの地で交渉に臨んでいる父が、この事実を知る術はどこにもなかった。
その二日後—学園の卒業式を明後日に控えたその日に、父は帰宅した。
大帝国との貿易協議を終えて戻ったセドリックは、自らの公爵邸を前にして、館全体を包み込む異様な雰囲気に皮膚が泡立つのを覚えた。
帰宅を迎える挨拶のため、使用人たちがずらりと整列して出迎えている。大きな公務で留守にする際、出立と帰還を使用人総出で迎えるのは、セリム公爵家の長年の風習であった。
だが—出立の時には、こうして整列する使用人たちの先頭に、妻であるフランカと、幼い一人息子のロベルトの姿があったはずなのだ。
(そうか……フランカとロベルトが居ない……)
セドリックがその致命的な違和感の正体に気付いた瞬間、静かに歩み寄ってきた男がいた。
フランチェスカの直属である執事であった。
「旦那様。お嬢様が談話室でお待ちでございます。お疲れのところ誠に恐縮ではございますが、直ちにご足労願います」
その言葉が耳に達した瞬間、セドリックの背筋を氷のように冷たい戦慄が駆け抜けた。
セドリックは公爵家の絶対的な『当主』である。どれほど優秀な娘であろうと、報告や会話を求めるのであれば、フランチェスカ自身が父の執務室へ足を運ぶのが絶対の礼儀。
それが逆であるということは—指示を出しているのは、もはや自分ではないということだ。
「おい、これはどういう——」
セドリックが問い詰めようと振り返った瞬間、カチャと甲冑の触れ合う硬質な音が響いた。
彼と共に貿易協議へ出立し、無事に帰還したはずの騎士や文官たちが、いつの間の間にか館の騎士団によって二重三重に完全包囲されていたのだ。
「……旦那様。どうか、大人しくご同行を」
静かに、けれど逃げ場のない刃のように突きつけられた言葉。
セドリックは全身から噴き出す冷や汗を止められぬまま、絶望的な沈黙の中にただ立ち尽くすしかなかった。
そして項垂れた状態で、執事に導かれるまま談話室へと足を運んだのだった。
談話室は、公爵家の乗っ取り—いや、事実上の簒奪を企てた現場にしては、あまりにも穏やかな雰囲気が漂っていた。
本来であれば当主である自分が座るべき椅子に、フランチェスカが優雅にくつろいでいる。
机の上には、帝国からの輸入品である質の高い珈琲が淹れられており、その芳しい香りが部屋の空気を柔らかく包み込んでいた。
「貿易協定、お疲れ様でございました、お父様。お疲れの際には甘いものが良いとお伺いしておりますわ。ミルクと砂糖をお入れしますか?」
何事もなかったかのように微笑みかけてくる娘の姿に、セドリックは背筋の凍るような恐ろしさを抱いた。
セドリックの返答を待つことなく、フランチェスカは珈琲に砂糖とミルクを落とし、銀のスプーンで滑らかに回転させる。そして、ゆっくりとカップを乗せたソーサーをこちらへと滑らせた。
「……お飲みになって」
フランチェスカは穏やかに笑いながらそう言った。言葉こそ柔らかいが、そこには一切の否を挟ませない絶対的な圧力が宿っている。
提案の形を取った、明らかな命令であった。
セドリックは、フランチェスカのその優雅な手つきや口調に、亡き妻—大帝国の第三皇女の面影を重ね合わせていた。優雅で静謐で、それでいて大帝国の皇女としての絶対的な矜持と統治者の資質を備え、常にセドリックの劣等感を苛み続けた元妻。
震える手でカップを持ち上げ、注がれた珈琲をセドリックは一気に飲み干した。
「あら、お父様。珈琲は、もっと香りと深い味わいを楽しむものですのよ」
フランチェスカはくすりと笑う。セドリックは、ここまでのやり取りだけで、すでに精神的な気力を完全に削がれていた。
「……フランカとロベルトは、どうした?」
絞り出すような小さな声で、セドリックが尋ねる。
「お二人とも、大変お元気に過ごしていらっしゃいますわ。環境の整った落ち着いた場所で、何不自由なくご静養されております」
「なぜ……なぜこんなことになっているのだ……!」
二人の無事を確認し、セドリックはわずかに正気を取り戻した。顔を上げ、正面のフランチェスカを強く見据える。
そして、即座に後悔した。
そこには、冷徹な貴族としての矜持を宿した実の娘が、まるで哀れな存在を見下ろすかのように自分を見つめていたからだ。
「お父様が、わたくしに『なぜ?』とお聞きになる。……それこそが、お父様に刃を向けざるを得なくなった根本の原因ですわ。まだご理解できませんの?」
「王太子殿下との……婚約の話か……?」
「……」
フランチェスカは無言で応じる。
セドリックは焦燥感を募らせた。王家との話し合いはすでに終わり、解決したはずではなかったのか。
「本当に、何一つ理解されていないのですね。わたくしがこうして動いたのは、お父様も王家の方々も、これを単なる『王太子殿下と公爵令嬢の婚約の不始末』としか捉えていらっしゃらないからですわ。
その致命的な認識の誤りこそが、わたくしにここまでさせているのです」
「どういう……ことだ……?」
ふぅ、とフランチェスカは小さく溜息を吐いた。
「公の場において、国王陛下にも直接ご説明することになりますので、今は詳しく申し上げませんわ。……お父様に望むことは、ただ一つ」
フランチェスカはまっすぐに父親を見据え、氷のように冷やかな声で告げた。
「ご引退なさり、公爵家の当主の座をわたくしにお譲りくださいませ。公的な譲渡契約書へのご署名をお願いいたします」
「何を……戯言を……!」
「あいにく、お時間があまりございませんの。手早くお済ませになりませんと、……まるで帝国の精鋭のような盗賊団が突如現れ、お父様や、お父様が大切にされている方々をどこかへ連れ去ってしまうかもしれませんわ」
「フランチェスカ……お前……ッ!」
セドリックは恐怖に身を震わせながら娘を見つめた。
フランチェスカの口元には極上の笑みが浮かんでおり、それは夜会に出席する完璧な淑女そのものであった。
だが、その唇から紡ぎ出されるのは、一切の容赦もない鋭利で冷酷な脅迫であった。
「わたくしを恨んでいただいても一向に構いませんわ。
けれど、わたくしは自らの正義と義務に従って事に当たっております。大帝国の血脈として、そして王国の高位貴族として、果たすべき信念に基づいた行動をしております」
そして、静かに引どめを刺す。
それが最後通牒であると、誰もが理解できる調子で。
「家督をお譲りください」
セドリックは、完全な敗北を認めた。
後妻であるフランカの静かな佇まいを心から愛した。そして、ロベルトが生まれた。
歳を重ねてからようやく手に入れた、愛することのできる妻と、待望の幼い息子。
それらすべてを失ってまで貫くべき信念など、今のセドリックにはどこを探しても存在しなかったのだから。
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とのことなので、AIラベルは表示されていないようです。
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本作はAI(Gemini)を利用し、作者が文章を書き→AIに校正を行ってもらい→それを再度見直し、修正・削除を行っています。
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