第4話:記録係との接触と世界の歪み
夜の学院図書室は静寂に包まれていた。
月明かりが窓から差し込み、薄暗い室内に淡い影を落としている。
ユリア・セレスタインは机の上に広げた古い書物を前に、深い思索に沈んでいた。
その時、扉の開く音が静かに響く。
「ユリア・セレスタインさんですか?」
穏やかだがどこか謎めいた声が彼女の耳に届いた。
振り返ると、そこには見知らぬ少女が立っていた。
「私は記録係のルナ・ヴェルナー。あなたにお伝えしたいことがあるのです」
ルナは慎重に言葉を選びながら話し始めた。
「この世界は、ただの物語ではありません。シナリオという枠組みの中で繰り返される虚構――しかし、あなたの存在がその枠組みを揺るがし、世界に歪みを生じさせています」
ユリアは眉をひそめる。
「具体的には?」
ルナは古い文書を差し出した。
そこには、何度も繰り返された世界の記録と、その中で起こった例外の事象が書かれていた。
「あなたが“破滅フラグを論破する”たびに、物語は再構築され、シナリオの整合性が失われていくのです」
ユリアは静かに息を吐いた。
「つまり、私の行動がこの世界の均衡を崩していると?」
「はい。しかし、それは必ずしも悪いことではありません」
ルナの言葉に、ユリアは戸惑いながらも心を動かされる。
その夜、ユリアはアルベリクの言葉とルナの告白を思い返していた。
「私たちの世界は、決められた筋書きの上で動いている――だけど、私は自分で未来を選びたい」
その決意は揺るがなかった。
翌日、ユリアは学院の庭でハルと語り合った。
「君の存在が世界を変えている。だが、それが正しいことなら、僕は君を守りたい」
ハルの真摯な言葉に、ユリアは心の奥底から感謝した。
その時、遠くから影が近づいてくる。
アルベリクが静かに彼らの前に現れた。
「君たちの行動次第では、この物語は壊れてしまう。慎重に進むべきだ」
警告と忠告を込めた彼の声に、ユリアは決然と答えた。
「物語は私たちのもの。誰かの掌中の駒ではない」




