第五十七話「読めない気配:中編」
19:00
スルイ城塞、
サラの部屋にカミラが来た。
「サラさ~ん」
ドアがノックされ
サラが応対する。
「はーい」
「もう食事の時間にしたいんですけど
ルーカス君しら・・・・」
ルーカスを探して、
ドアの隙間から覗き込むカミラ。
「あっちにいるっすよ」
サラが指さすことで
ルーカスは発見された。
「どうも」
軽く挨拶すると
彼女は手を振ってきて、
「二人ともついてきて
案内するわ」
二人を外へ連れ出した。
カミラが先頭を歩き、
その後ろにルーカスとサラが続く。
「二人で何してたの?」
「カードで遊んでたよ」
そんな話をしながら
連れてこられた部屋には
白いテーブルクロスが敷かれた
大きなテーブルが一つあり、
まだだれも来ていないようだ。
「じゃあ、ここで待っててね」
そう言われ、二人は手前の席に着く。
そこから少し時間が経って、
二人がこの部屋に通された。
リリーはルーカスの前に
ゼノはサラの前に座る。
そうやって四人が向かい合い、
カミラは
「じゃあ、食事を運んできますね」
と言って外へ出ていった。
「ゼノさん、もう大丈夫なんすか?」
「多少はましになったよ
でも、まだまだ本調子とはいかないかな」
暇になった
サラはゼノと話し始める。
「そうっすか、あの・・ミアさんはどうっすか?」
「ああ、あの娘は、本当に疲れて奥に籠っちまったよ
まあ、しばらくは出てこないだろうね」
そのミアと言う人物が気になり
ルーカスも話に入ったが、
「そのミアってのは誰なんだ?」
「ああ、そうっすねえ」
「まあ、そのうち会えるよ」
何やら意味ありげな言い方で
はぐらかされてしまった。
(誰なんだよ・・・・)
どんどんと疑問が
積み重なっていくルーカスであったが、
他の面々は夕食前と言うこともあって
すっかりを気を緩め、
運ばれてくる食事を心待ちにしていた。
そんな時、
その部屋のドアが開く。
台車に料理がのせられて運ばれてきた。
いい匂いが中から漏れ出ている
銀色の半球を乗せた
台車がぞろぞろと部屋に入ってくる。
(誰だ?)
ゴロゴロと音を立ててる
台車がテーブルの横に止まり、
それが誰なのかが判明した。
子供である。
十代前半ぐらいであろう美少年がそこにいた。
小さな紳士服に身を包み、
水色の混じった白髪のその子供は
少年らしくも言い慣れた様子で口を開く。
「はじめまして、こんばんは
僕はウィリアムと言います。
ここではカミラさんの補助をさせてもらってます。
今後ともよろしくお願いいたします。」
畏まった挨拶を済ませ、
ペコリと頭を下げる男児は
礼儀正しく腰を曲げ、頭を直角に下げた後、
「はい」
両手を上にあげた。
すると、
その動きに伴って、お盆が浮き上がった。
銀色のお盆と半球は
優雅に宙を舞い、テーブルへと降り立つ。
バチン
という指を鳴らす音と共に
半球が浮かび上がり、
中にある料理が露となった。
「まずは」
そこから料理の説明が始まる。
ここで使われている肉はどうの、
野菜はどうの、ソースは何味だの
きっと何度も繰り返し
言ってきたのだろう。
淀みない解説が終わると
「それではごゆっくり」
と言って、少年は後ろに下がっていった。
(あれ、アイツどこかで・・・・)
突然現れたその少年に既視感があったルーカスは
彼の注視するが、上手く思い出せない。
その頃には、周りが夕食を食べ始めていたため
彼もその料理に目を落とす。
(おお、すげえな)
目の前には少量ではあるが、
もう芸術品と言って差し支えないような
綺麗な料理が置かれていた。
(フレンチ?のコースみたいな感じか?
色々違いとかあるんだな、ここにも)
ルーカスはその小綺麗な料理を
何の躊躇もなくあっという間に平らげる。
彼にそういうものを鑑賞する能は養われていない。
それどころか、あまり考えたいものでもなかった。
(これ、リリーとか絶対足らねえだろ)
そう思いながらリリーを見ると
彼女はなんと、それをちびちびと食している。
むしろあのゼノと言う女のほうが
さっさと食べてソワソワし始めていた。
(アイツにこういうのを楽しめたのか・・・)
何て失礼なことを考える彼だったが、
そこからしばらくして、
またウィリアムが中に入り、
同じように料理を運んで来る。
別々に運ばれてくる
品々はそれぞれが一つの皿の上で
完成されていた。
匂いも、見た目も、味も
その一品以外が入る余地はなく、
一つの作品としてまとめられ、
作り上げられていたのだ。
(こんな凝ったもん出す余裕はあるんだな
カミラが作ってんのか?)
その真偽を探るため、
感覚を研ぎ澄ませていく。
が、元よりこれがあまり得意でない彼では
初めて来たこの建物の中を把握することなどできなかった。
(俺じゃわからないか・・・・
出来ないことがこんなにむず痒く感じるとは・・・・
前はやれることの方が少なかったのにな)
そんな感慨に浸りながら
彼は暇そうにしている。
運ばれてくる料理はどれも少量で、
食べるのにまるで時間がかからないのだ。
(喋る気にはあんまりならんが、
リリーもサラも畏まってしゃべらないし、
ゼノってのも・・・・)
彼女は終始下を向いたまま、
運ばれてくる料理を少しずつ食べている。
(・・・・顔色が悪いな)
ゼノを注視していた彼には、
彼女が脂汗をにじませながら
顔を歪めている様子が見えていた。
(まあ、倒れたぐらいだし
顔色ぐらい悪くて当然か?)
そう思いながらも
彼は視線を皿に落とす。
残ったソースを見て、
匂いをかいだり、
触ったり、なめてみるが、
(うまい・・・・・)
それしかわからなかった。
「まだ、食べたいんすか?」
「いい」
そんなことをしていると、
何やらあらぬ誤解を
招いていしまったらしい。
「ほら、遠慮しないで」
サラが彼の肩を叩く。
何やらいい匂いが彼の鼻をつつき、
ルーカスがたまらずそちらを向くと
サラが料理の一部をフォークで口元まで運んできていた。
「あーん」
「・・・・・・・」
一体、自分と彼女の間に何があったのだという
疑問が膨れ上がっていくルーカスであったが、
やはり言う通りにした方がいいのだろう。
彼は口を開けて
彼女から与えられたそれを頬張った。
「ふふふ、今度は逆っすね」
サラが随分楽しそうにする一方、
ルーカスは何とも言えない顔で咀嚼する。
(なんか・・・・不本意だ。)
その食事会はそうやって
何事もなさそうに終わっていった。




