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evil tale  作者: 明間アキラ
第四章 「戦争」 ークリ平原の戦い編ー
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第五十一話「二人の食事会:後編」

「ああ?なんだ?狙ってんのか?

別に俺は保護者でもねえし、好きにしていいぞ」


上品な所作から繰り出される

下品な物言いに若干困惑しつつも

ルーカスは答える。


「違げえよ。」

「・・・・違うのか?」

なぜか少し残念そうな顔をするテオはそう答えた。


「ああ」

「別に何にも言わんぞ」


「何だよそれ。

行って欲しいのか?」


「・・・まあ、どうだろうな

アイツ次第か・・・・」


少し困った顔をする彼を

ルーカスが眺めていると

(ん?)

彼の左手薬指に光るものがあった。


(・・・なんか意外だな。勝手だが。

そういう心配もするのも、凄い意外だ。)


数回しかテオに会っていないルーカスにとって

出会ったときの第一印象が相当のもので、


(正直、もっとイカれた奴だと思ってた)


こうやって、

気の抜けたテオに会うのは初めてな上に

そんな印象を持っていたものだから


(なんでだ、普通の事のはずなんだが)


彼は相当困惑していた。


が、誤解はちゃんと解いておかなればならない。


「いや、あっちこっちに行かせるし

アイツも何の疑問ももってないし、

どういう関係なのか気になっただけだ

主従関係とかなのか?」


「んん?ああ~・・・いや?

先祖はそうらしいが

今はもう、家族というか、

俺からすれば妹か?アイツは。」


歯切れの悪い言い方だがテオはそう答える。


「そう言えば、お兄様とか言われたな。」


「まあそういうことだ。

別にそんだけだよ。

そこらにいる兄妹と大して変わらん。」


「それにしちゃ

結構な大役任せてるみたいだけど」


「そりゃあ、アイツ以上の適任がいないってだけだ。

アイツは自分に自信がないらしいが、

クラス4のハンターよりもよっぽど有能だよ。

魔力じゃ見劣りするかもしれんが、

機転も効けば、頭もいい。

武器だって器用に使いこなすし

何よりアイツの感覚強化は多分この国で一番だ。」


「へえ、そうなのか?」


「ああ、あいつは過剰感覚とか言ってたが

アイツの感知範囲の広さに勝てる奴は多分いないし、

相手の動きを読むことだってできる。

これとアイツの頭、武器遣いのうまさがあれば

ギリギリクラス4ぐらいの奴なら足止めもできる強さもある。

的確な状況判断に作戦の立案から実行、そして索敵から戦闘まで、

大概人並み以上にこなしてくれる。

アイツ以上に優秀な奴はなかなかいないのさ

それに身内だから比較的信頼がおけるしな。」


横にあるワインもガブガブ飲んでいる

彼はいつも以上に饒舌になっていく。


酒で機嫌がよくなったのか、

元々こういう人物なのか

ルーカスにはわからないが、

とりあずこのテオと言う男の素に近づいたのだろう。

そう彼は思い、

そして、それは実際そうだった。


更に、ルーカスは

これがただの食事会なのだと気づき、

今後のためにも色々聞いてみることにした。


「だからリリーとくっつけてたのか」


「ああ、リリーはああ見えて、

人との戦闘と食うこと以外、何も頭にないから

サラをくっつけてやっと作戦で機能する。」


(リリー、突然来たりしないよな)


「最近はやけに不殺にこだわってるしな。

まあ、それでも十二分に強いが」


「それも聞きたい

リリーはどういうやつなんだ?」


「どういうってのは?」


「そうだな・・・リリーはこの国じゃどれぐらいの強さなんだ?」


するとテオは少し考えた後、


「・・・・・まあ、対人戦に絞るなら

アイツが最強だな」


そう結論付けた。


「隕石を吹き飛ばしたとか聞いたけど

アンタよりも?」


「ああ」



「『お兄様は魔術師で最強っす』

とかサラが自慢げに言ってたんだが

そういう訳でもないのか?」


「俺が?」

「ああ」


彼は首を傾げる。


「まあ、そう言われることもないわけじゃないが・・・・・

まあ、そうでもあるか?」


「結局一位じゃねえか」


「魔力量やら魔法の規模でいえばな

殺し合いなら、リリーと、まあその」

「アイツには勝てんなあ」


「アイツ?」


「まあ、ここばかりは勘弁してもらいたいな」

「何だよ急に」


「事情があんのさ。

まあ、必要があったら話すよ」


「まあ、いいけど、

で、魔術師の格ってのは殺し合いで

決まるわけじゃないのか?」


「まあ、そういうことだな

新しい魔法の発見とか、

扱える魔法の種類とか

その規模とか

そういうので魔術師内のヒエラルキーはできてるから、


魔術師として『最高だ、最強だ』って言われてるからって

別に現実の戦いでも無敵です、ってわけじゃない」


「隕石ふらせりゃ勝てそうなもんだがな」


「案外そうでもないぞ。

魔術師の攻撃って言うのは

自然現象とかそれに基づいた現象だ。

俺が魔法で攻撃したところで

最終的に相手を倒すのは俺じゃなくて

俺が出した炎や爆発だ。

派手で、規模も、範囲も、デカい攻撃を出せるのは良いが、

結局のところ、魔法は出し終われば

技術も魔力も介入する余地がない。

出した現象と相手の魔力抵抗との

真っ向勝負なることがほとんどだ。


だが、近接武器や素手で戦う場合

そうじゃない場合が出てくる。」


「へえ」


「武器や素手の達人にもなると、

抵抗力のどこが薄いか分厚いか、

どこに出やすいか、相手の癖はないか。

それを見つけることに長けてるし、

それを引き出すことにも長けてる。


加えて抵抗力の強弱を操んのも

そういうやつらの得意とするところだ。

リリーはそれの最高峰らしい。」


「じゃあ、アンタとリリーが殺しあったら

負けるのはあんたなのか?」


「前、戦った時は

決着がつかなかったが、

まあ続いてたら、俺は死んでたろうな」


「へえ・・・って、アンタら戦ってたのか?」


「ああ、いつだったか、

2年前ぐらい?

第四地区で起きた

魔導銃賛成派のデモが暴徒化した時、

アイツが出てきたのさ。


それこそ

あっという間に何人も倒れていったらしくて、

俺に応援要請が来たのさ。


本当にあの日ほど転移が使えてよかったと

思ったことはないな」


「それで

何で仲間になってんだ?」


「さあ」


「知らないのか?」


「ああ、俺らが戦った半年ぐらいにこっちに来たんだ。

無口な奴だろ?

別にサラの下で特に問題なく動いるから

無理に聞くこともないし、

そもそも会わないし、よく知らん。

まあ、気になったらアンタが直接聞いてくれ」


「気が向いたら聞いとくよ」


二人の語らいは案外長く続く。

意外に気が合うのかもしれない。


そんな二人の食べる速度は

落ちていったが、順調に料理は消えていった。


次々と空になる大皿を

給仕係が代わる代わる持って帰り、

新しいものを持ってくる。


「あんたと話してると

教師になったような気がしてくるよ」

「そうか?」


「あんたの経歴は知ってるから

何にも知らないのは仕方ないが、

俺はそういうやつに会ったことなくてな。

こうやって、人に教えてると弟子でも取った気分だよ」


余り顔色の変わらない彼だったが

いつもより明らかに雰囲気が和やかだ。


「・・・あっそう」

「態度の悪い弟子だな」


あの邪悪だと思っていた笑顔も

今のルーカスには

(案外普通だな)

そう思えた。


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