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evil tale  作者: 明間アキラ
第四章 「戦争」 ークリ平原の戦い編ー
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第五十一話「二人の食事会:前編」

1921年 1月5日


戦いから3日たった都市クリ。


今、辺りは暗闇に覆われており、

都市内には人工的な明かりが目立つが

その城壁から少しでも外に行けば周りは闇の世界だ。


クリの城壁から向こう側は

大きな大岩でふさがれ、

地表は焼き焦げている。

今のところ手つかずで置いてあるそれらが

ある限り、都市から出ることすらままならないだろう。


しかし、

そんな外のことは忘れるように人々は騒いでいた。

都市内は今、活気にあふれ

方々から人々の歓声や騒ぐ声が響いている。


街灯の周りで集まり酒を酌み交わす男たちは

傷の浅いハンター達に群がって話を聞いたり、

宴会をしたり、

それぞれがそれぞれのやり方で

戦いの終わりを実感しながら

勝利の味に酔いしれていた。


その横を通り過ぎる男が一人、

少しダボっとした黒いズボンに

皮でも毛皮でもない人工的な黒いジャケットを羽織る男。


癖のある髪に、異様な黒い血管が少し浮き出ている彼は

一人で横を歩き、ある場所へと向かっていた。


兵士たちの横を通り抜けて

あるレストランに入っていく。


「ええと、お客様は・・」


店員が彼に近づき

一体何用だと伺いを立てる。


「・・・・呼ばれたんだが」


不機嫌そうに

そう答える彼が店員をじろりと見つめる。

店員も引きはしないが

彼の迫力と醸し出される不気味な雰囲気に圧倒され、

身動き一つとれない。


「え、えと」


声を発することも

息をすることもままならなくなっていく店員の男だったが、


「おいおい

そいつは俺のお客さんだ」


いつの間にか

彼の後ろにテオがいた。


店員の肩を持ち、

宙に浮いている彼は

自身の服をはためかせながら

地面へ下りたった。


「へっ!!?

あ、ああテオ様!?」


「後で来るって言ったろ?」

「わ、わかりました」


焦る彼の肩をとんとんと叩き、


「いこうぜ、ルーカス」


そうルーカスへ声をかける。


「ああ」


彼はテオに促されるまま奥へと入っていった。


絢爛豪華と言う言葉がふさわしい

大きなレストラン内を歩いていき、

二人は個室に着いた。


テオが開け、

「さあ、どうぞ」

ルーカスを中に入らせる。


中は広く料理の乗った回転式テーブルが一つと

そこに椅子が4つあった。


テオは一番奥へと行き、

慣れた手つきで椅子を引いてササっと座る。

ルーカスは少しためらいながら

椅子に触れ、一番手前の席に座った。


「あいつらも呼んだんだが、

あんまり飯って感じじゃなかったな」


ルーカスとサラは、補給部隊を壊滅させた後、

しばらく、その場に潜伏したのだが、

逆方向へ引き返していく敵本隊を確認してから

帰還していた。


それが昨日の朝で、

二人で報告をした後、


「ご苦労さん。

気が向いたら

明日の夜、ここに来てくれ」


そう言いながら差し出されたのは

レストランの名前が書いてあると地図だった。


別に断る理由もないため

ルーカスはそれに従い、こうやってレストランに来ていたのだ。



「サラから

ついさっき断りの通信入ったし、

リリーも一人にして欲しいってさ」


そう言いながら

苦笑するテオ。


「あんまりよくなかったかな

でも、まさか、アンタだけ来るとはな」


「・・・悪かったな」


「いやいや、折角予約までしたのに

危うく一人で飯食うところだったから

ありがたいよ」


もう先にワインを飲んでいた彼からは

いつもの迫力は感じられず、

ルーカスも少し気を抜くことができた。



「それにしても

お前らどうやってこんな短時間でクリまで来たんだ?」


二人は食事を始めながら

そんな他愛もない話を始める。


「走った」

「・・・本当か?それ?」

「ああ、アイツを担いで俺が走った。」


「何時間?」

「・・・・多分、3時間ちょい」


「へえ・・・そうか」


「なんか変なのか?」

「ああ、アンタが人間だとすれば変だ」



彼の返答が意外だったのか、

少し上を見ながら考えていたテオは

目線を落とし、ルーカスのものと合わせて、

言葉をつづける。


「どんな人だろうと、

いや、クラスが高ければ高いほど

そんな長時間動き続けるのは不可能だ。

それにお前の成長が著しいのも気になる。」


「成長?」


「実感ないのか?

前会った時よりも強くなってる。」


「なんでわかるんだ?」


「いや、まあ、何でと言われると困るが、

感覚でわかるんだけど・・・」


「ほ~ん。」


「こんな短期間で魔力そのものが上昇する奴も

ここからあの森まで3時間で走破する奴も

これまで見たことないし、聞いたこともない。

・・・まあ、アンタが人かどうかは俺には分らんが」


テオは口には出さないが

ルーカスの変化は続いていた。


黒い管は以前より、

くっきりと浮き出ていて、

片眼はたまに黒と白が入れ替わっている。


いよいよ普通の状態でも

人とは呼べなくなってきていたが


「多分違うんだろ」


彼はあまり気にしていないようだ。


「結構あっさり受け入れるんだな」


「別に俺がなんだろうと、

人だろうと人じゃなかろうと興味ない。」


「いいねえ、

その考え方結構好きだぜ」


彼にとって

人であることは重要ではない。


(人だからって別にいいことあるわけじゃないしな)


「むしろ強くなった今の方が

いくらか生きやすいよ」


そう言って見せる彼に


「・・・そうか」

テオはそう言うことしかできなかった。

憐れんでいるのか

悲しんでいるのか

ともかく何か思うところがあるらしい。


「・・・あんたは良いのか?

化け物が身内にいて」


「あ? なんでだ?」

「対面とか」


「ああ」


少し納得したような顔を見せながらも

テオは


「あんたは任務もこなして戦果も上げてくれる。

言うことねえよ。

第二地区襲撃に第三地区との連絡線回復、

この前は補給路の寸断をした上に

メーガンとカラを殺ったんだろ?


正直言って

革命軍の中では、

アンタが一番成果を上げてる。

会った時ならいざ知らず、

もうアンタをないがしろにする理由はない。

こうやって食事に呼んで機嫌とっとかないとな」


そう言い、少しサラにも似た意地の悪い笑顔を

浮かべて笑う。


「・・・あんたも似たようなもんだな」


「まあ、人にそう思うのと自分に対して思うのじゃ

違う気もするが似てるは似てるな」


ルーカスも少し笑い、

雰囲気が和やかになったころ、

ドアから音がした。


コンコンとノックする音が鳴り、

そこへテオが声をかけると、

数人の給仕係が台車で

いくつもの料理を運んでやってきた。


「・・・・この量食うのか?」

「ああ」


二人の間にある大きなテーブルに次々と

とんでもないサイズの食事がおかれていく。


皿に盛られた料理を

全部合わせれば、

二人の質量を超えるかもしれない。


ハチャメチャに大きな七面鳥の丸焼き、

人の頭ぐらいあるサラダが入ったボウルが数個、

ピザみたいな料理が数枚、

他にも、薄い肉がいくつも重ねられた皿や

今にも動きそうなほど新鮮な魚介。


それらを包むように緑が添えられ、

色とりどりの料理が中央のテーブルに並べられた。


そして、いくつものパンが入った

バスケットと人の胴体ぐらいある高そうなステーキが

それぞれの前に置かれ、配膳を終えた給仕係外へと出ていった。


「・・・・・これ毎日食うのか?」

「まあ、時間があれば」

「大変なんだな。クラス4も」


そういう彼にテオは不思議そうな顔をする。

「お前は食わないのか?」

「いや、まあ食べるが」

「だろ?」


それを皮切りに

二人は次々と食事を口に運ぶ。


綺麗な所作で肉をナイフで切り、

フォークで口に運ぶテオと

それを真似しながら

荒々しく食べるルーカス。


あんなことを言っていたルーカスだったが

テオに引けを取らないくらいに食べだし、

その料理の味に感嘆する。


(うま)


こんな高そうなレストランで

出てくる料理がまずいはずはない。


(今まで食った中で

多分一番だろうな)



雰囲気もこみで

恐らく一番彼の食事の手が進み、

それをテオは満足げな様子で見ている。


そんな感じで

しばらく淡々と二人は食事をとっていた。


そんな中、口に含んだものをとりあえず

飲み込んだルーカスがふとテオに話かける。


「サラとアンタってどういう関係なんだ?」


何か話さないのも

退屈だと思ったのだろう。


思えば、同性の友達すらいなかった

ルーカスの人生。


自分を革命軍へ誘い入れた

この男のことは嫌いではなく、

変な奴だとは思っていも

悪くは思っていなかった。



「んん?」

急な質問に少々驚きつつも

彼はナプキンを手に取る。


自分の口を慣れた手つきで

口元を拭いた後、

彼は口を開いた。

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