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魔法の才能に目覚めて人生逆転しねえかなあ

「光史郎さん! 起きてください!」


今日も天使型目覚まし時計に叩き起こされた。


「さあ、今日もお仕事頑張りましょう!」


「無理。」


「何言ってるんですか。昨日頑張ったんですから今日も頑張れますよ。」


「違う、昨日頑張ったから筋肉痛で動けないんだよ。」


「筋肉痛……、聞いたことがあります。人間は筋肉に負荷が掛かると痛みを引き起こすんですよね。」


「そう、だから今日は動けない。」


「そういうことなら仕方ないですね。」


以外にもピリカはあっさり納得してくれて助かった。

まあ無理強いされても、ガタガタの身体じゃ仕事なんて出来ないけどな。


「じゃあ今日は魔法の練習をしましょう。何もしない日を作るのは良くないですからね。」


「魔法……。」


討伐で酷い目にあって以来、魔法について考えないようにしてきた。


「この世界で生きる上で、魔法が使えるか使えないかは非常に大きいんです。魔力によって仕事の選択肢も増えるし、高い魔力が求められる仕事ほど報酬も高く付くんですよ。光史郎さんも討伐の仕事で報酬をたくさん貰ったでしょう?」


あの時のことは思い出させないで欲しい。


「確かに配達の仕事の3倍くらいの報酬はあった気がする。」


「だから生活を安定させるには魔力を鍛える必要があるんです。」


「でもなあ……。」


俺が努力して練習した魔法も子供以下らしいし、今更頑張っても意味ないだろ。


「光史郎さんの魔力はそのへんの子供にも劣りますが、これは仕方ありません。生前に知的能力を伸ばしてこなかったのでしょう。」


ピリカは微笑みながらこんなことを言ってきた。こいつには人の気持ちを考えることが出来ないのか?


「だからこそ伸びしろがあるんです。実際光史郎さんが転生して伸ばした魔力の成長量は二年相当になります。」


「え、マジ!?」


数日で二年ってことは、一か月もあれば二十年分くらいになるのか? そうすれば俺も討伐の奴らみたいな魔法を使えるようになるんじゃ……。


「本当ですよ!……幼少期の話ですけど。」


最後に何か付け加えていた気がしたのは気のせいだろう。


「もしかして俺って魔法の才能あるのか?」


「それはもう少し続けてみないと何とも言えませんけど、可能性はありますね。」


そういうことならもう一回だけやってみてもいいかもな。


「そんなわけで今日は秘密道具を持ってきました。」


「秘密道具……。」


俺の魔力を一気に引き上げる道具か? 異世界転生はこういうのでいいんだよ。


「はい、どうぞ!」


ピリカは俺に手のひらサイズの水晶玉を渡してきた。


「これは魔晶玉ましょうぎょくといって、魔法を蓄積させることの出来る鉱石で、魔法で満たされた魔晶玉を砕くと強力魔法を発生させることが出来ます。」


「なんか似たの見たことある……。」


「それは多分魔術石ですね。光史郎さんは一度魔術石に魔法を込める仕事をされていましたよね。これは魔術石より希少な鉱石で、蓄積できる魔力量は段違いなので過剰に魔法を流し込んで割れる心配はありません。」


そうか、あの時のことも見られてたんだった。


「これに魔法を流し込めば一気に魔力が増えるのか?」


「一気にとは行きませんが、これが魔法で満ちる頃には間違いなく光史郎さんの魔力は向上しているでしょう。」


「なんかもっと早く魔力を増やせる方法ないのかよ。」


「ないです。」


なんか期待してたのと違うんだよなあ。


「一発逆転みたいな考え方はやめようって何度も言ってるじゃないですか。日々の積み重ねが何よりの近道なんですよ。」


「まあ他にやることもないし……。」


「そうです! 何もやらない日を無くすようにしましょう。魔力が増えれば報酬の高い仕事を受けれて生活が楽になるし、転生の査定も上がるし良いことづくめだと思いませんか?」


確かに討伐依頼をこなせるようになれば仕事をする日数を減らすことが出来る。

取り合えず俺は魔晶玉を使って魔力トレーニングをするようになった。






「……のエレ……我が……。」


「ストップ、ストップ! ちゃんと詠唱しないと魔法を込められませんよ!」


魔法は自然エネルギーと魔力の融合によって発生させることができる。そういうわけで俺はより多くの自然エネルギーに触れられる外に出て魔力トレーニングをやらされている。


「いい大人が外でこんなの恥ずかしいだろ。」


「大丈夫です、いい大人じゃなくてダメな大人なので。」


流石に言い過ぎだろ。こいつ最近、遠慮無くなってきたな。


「自意識過剰ですよ。誰も気にしてませんって。」


「でもなあ……。」


辺りを見ると水魔法を打ち合って駆けまわる子供たちの姿が。そして子供たちが放つ水風船くらいの大きさの魔法は俺に劣等感を抱かせてくる。

俺は数滴の水を生み出しただけで大喜びしてたのになあ……。


「魔晶玉を使えば魔法は放出されませんから魔法の威力を気にする必要はありませんよ。」


しかも子供たちは詠唱をすることなく水魔法を連射している。その近くで詠唱しているところを見られたら舐められるに違いない。俺は子供たちは遠くに移動するのを見てから詠唱を始めた。


「火のエレメントよ、我が魔力と結合し滾りをもたらし給え。」


詠唱して魔法を使うと一瞬魔晶玉が赤く光った。これが何を意味するのか分からずピリカに目をやった。


「見ての通り魔法を込めると魔晶玉は光り、魔法が溜まるにつれてその色は変化していきます。光史郎さんにはまだ透明な魔晶玉を魔法で染めてもらいたいんです。」


それから俺はしばらく魔晶玉に魔法を込めて魔力トレーニングを行った。






俺は部屋に戻ってからも魔晶玉に魔法を込めさせられ続けていた。


「流石にもう疲れた。」


「お疲れさまでした。これは継続してこそなので少しずつでも毎日続けましょうね。」


「これ、全然色変わらないんだけど本当に魔法溜まってんの?」


「溜まってますよ? 光史郎さんの魔力が弱いので色が変わるほど魔法が溜まってないだけです。」


嘘だろ。俺は一日中これに魔法を込めてたんだぞ。


「いつになったら溜まり切るんだよ。」


「今のペースなら一年くらいですかねえ~。」


「は?」


「あっ……違います違います! 光史郎さんの魔力はこれから伸びるので、もっと期間は縮むと思いますよ!」


そんなこと言われたらやる気無くなるだろ……。ピリカは俺のやる気を削ぐような情報をはぐらかすことに気づいた。こいつの言う事に一喜一憂しないほうがいいのかもしれない。


「火のエレメントよ、我が魔力と結合し滾りをもたらし給え。」


詠唱して火魔法を使うとライター程度の火の玉が発生した。

一日中特訓したのに、前に魔法を使った時と何も変わらねえじゃん……。


「だ、大丈夫ですよ! 毎日続けたら少しずつ鍛えられますから!」


やっぱり魔法を使うのは面倒だな。

俺はどうすれば楽に生きることが出来るんだろうか。


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