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黒の一号・終章  作者: 凡仙狼のpeco
『愛媛隕石篇』
31/58

第30節:総力戦③


 限界機動が封印された状態で、【黒の装殻】と襲来体の第2戦は開始した。


 突撃する黒の一号、参式が伍号に合流してくるのに合わせて、肆号が脇に回り込む。

 弐号の砲塔から放たれる無数の弾丸がそれを援護する中、対する襲来体は、黒殻体を前衛に、白殻体とシープが援護に回るワントップスタイルで応じた。


「黒い方を花立と抑える。行け、ジン」

「おおよ!」


 黒の一号の言葉に、伍号は飛び出した。

 黒殻体がそれを防ごうとするのを、横から黒殻体の脇腹を蹴り抜いた参式がインタラプトするのを横目に見ながら、伍号はただ一路、白殻体を目指す。


「ヒャハッ!」


 シープが、白殻体へ突撃する伍号に銃口を向けてくるが、スフィアを展開した肆号が間に割り込んでその凶悪なEg弾を弾いた。


「ギギィッ! 小賢しい中途半端(ハーフ)めェ!」

肆号(ハイブリッド)や! 大体お前も元は人間やろが!」

『ちょっとミツキ!? 私をあんなのと一緒にしないでよ!」


 それぞれに交戦に入る【黒の装殻】だが、伍号はこれ以上の膠着を嫌って、白殻体の放つブレードスラスターが自身の体を引き裂くのをそのままに、白殻体へ向けて減速もしないまま組みついた。


「ジン! 無茶しちゃダメよん!!」

「ラチが明かねぇだろうが! 俺はこの小賢しい石コロどもに、とっくにキレてんだよぉ! 」


 伍号は白殻体に組み付いたまま弐号に言い返し、自身も巻き込む雷撃陣を展開した。


「《黄の雷撃(サンダー・ボルテクス)》ーーーッ!」


 雷撃が自分自身を焼き焦がす痛みを全身に感じながら、伍号は腕の中で痙攣する白殻体を押さえつけた。


「ジン……!」

『あいつ、何を……!?』


 参式とケイカが声を上げる間にも、ジンは無理やり、白殻体を弐号の方に向ける。


「撃ち込め、ニーナ姉ぇ!」


 雷撃の手を一切緩めないままに、それでもなお〝憤怒の雷神〟と呼ばれる自身の矜持にかけてーーー伍号は好機を無理やり作り出した。


「もう、後でお説教よん! 出力解放(アビリティオーダー)……《黒の暴虐(リフレクトブレイク)


 口では怒りながらも一切躊躇わない弐号に、伍号は頭部外殻の下で笑みの形に口元を歪ませる。

 彼の見ている前で弐号が減速領域の展開をやめ、彼女の持ち得る最大火力である、爆撃フィールド展開弾……《黒の天蓋(キャノピースフィア)》内で無限に炸裂する爆弾頭にエネルギーを込めて射出した。


反応機動(アップライド)

限界機動(ブレイクアップ)


 黒の一号以外の【黒の装殻】達に仕込まれた爆撃に巻き込まれない為の反応プログラムが起動し、弐号は黒の一号の限界機動を手動で信号発信して行わせる。

 伍号がタイミングを計って離れると同時に、雷撃と反応機動の遅れにより反応しきれなかった白殻体の胸元に爆弾頭が接触し、白殻体を領域内に閉じ込めた。


 凄まじい爆発が領域内で沸き起こり、限界機動の解除と同時に収束する。

 後には、一欠片の破片すら残らなかった。


 だが、シープらも黙ってやられてはないない。

 白殻体と同時に超高速状態に突入した二体は、限界機動を終えた【黒の装殻】らに対して出力解放を仕掛けて来る。


「「《悪魔の触手(イヴィルテンタクル)》!」」


 高速音声と共に放たれた、黒殻体とシープの触手による攻撃を。


「―――《紅の爆撃(ディメンジョンバースト)》」


 限界機動離脱と共に参式が、領域破壊技を放って焼き尽くした。

 それでも【黒の装殻】らに到達した触手は、元来破壊のエネルギーから仲間を守る為に同時展開される《黒の天蓋(キャノピースフィア)》によって防がれた。


「流石だぜ、花立さん」


 究極の戦闘センスにさらに磨きを掛けている参式の補助に感謝しながら、伍号は呟いた。

 そして、極大エネルギーを全解放する《紅の爆撃》は、本来そのまま参式の解殻を意味するが―――。


心核接続(チャージコネクト)!」


 肆号のエネルギーストリーム共有能力により、枯渇した参式のコア・エネルギーは即座に補われる。

 ミツキも、ついこの間まで新人だったとは思えない程に、ケイカと呼吸の合った連携を行い、立派に肆号として戦っている。


「ケイカ!」

『ええ。ブレード・スラスター!』


 ミツキの呼び掛けに応え、限界機動を脱したシープと黒殻体を十数条のブレード・スラスターが襲うが、それらはあっさり、黒殻体の展開した防御壁に弾かれた。

 他の【黒の装殻】がその隙に態勢を立て直す間に、白殻体を襲った爆発を逃れて膝をついていた伍号は、牙を剥くように膝を上げ、体を沈み込ませた。


「まだ……やれる……俺は……!」


 他の連中のように卓越した技術を持たない伍号は、出来る事を愚直に繰り返すしか能のないチンピラだと、自分の事を評していた。

 頑丈な装殻と大出力のコアを与えられて、ようやく他の連中と肩を並べられる凡人には、身を呈して、動けなくなるまで彼らを助ける術がない。


 他の連中に伍号が誇れるのは、諦めの悪いクソ根性とーーー唯一モノにした、他の連中より早い限界機動だけだ。


『止まれ、ジン』

「聞けねぇなぁ、ハジメさん! 極限機動(アクセル・ブレイクアップ)……!」


 彼が何をしようとしているのかを察した黒の一号の制止を無視して、伍号は自身の装殻に命じた。


命令実行(ゲットレディ)


 どこまでもジンに忠実な雷神の装殻は、全身の表層を溶解させながらも、零号以外では伍号のみに使用可能な限界機動を行使する。

 

 シープまでは()れなくとも。

 せめてコア・コピーの一体くらいは、自分の手で。


 雑魚を払うくらいしか役に立っていない、自分に出来る事など。


「これくらいしか、ねぇんだよぉ……ッ!!」


 ジンの主観の中で、時の流れが空気を重く感じるほどに緩やかになる。

 黒殻体は、防御壁を展開していたせいでこちらの極限機動に反応出来ていない。


 霊子化によって存在が希薄になっているせいで、焼け爛れ、損傷した伍号装殻の表層が剥がれ落ちるように霊子に還元されていく。


 ーーーあの俺らのごちゃ混ぜ野郎をぶっ潰すまで保ちゃいい。気合入れろよ!!


 自身が纏う装殻に命じながら、伍号は軋む体で全力で空へと跳んだ。


出力解放(アビリティオーダー)……ッ!」


 使う技は、一つしかない。

 自身の最大最強にして、カオリから受け継いだ、もう彼自身しか使う者のいない、蹴り技。


命令実行(ゲットレディ)


 自身に移植された補助頭脳の声と共に、右足が黄金の輝きと雷撃を纏い、伍号はムーンサルトから螺旋を描きながら、目標へと目を向けた。


「《黄の(ライトニング)……蹴撃(ドライバ)》ァアアアアアアアッ!!」


 伍号が、自身を半壊させながら撃ち放った必殺の蹴りは。

 まごう事なく黒殻体を頭上から蹴り抜きーーー。


 無数の破片へと、爆散させた。

 


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