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ともに歩は 漆黒の騎士~フリオニア大陸物語  クナーセル編~  作者: 樹 雅
第2章 ともに歩は 飛龍の騎士
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第7話


 部屋を暗くした女の顔は、愁いを帯びていた。

 自分が何者かと、幾度となく自問し続けた事か。その答えは、まだ出ていなかった。自分が自分でない事が女を落ち込ませる。

 自分が必要とされていない事は理解していた。必要なのは、女の自分ではなく男のキリアであり、祖国でもグラディアでも同じである。


「私はなんなの?」


 口に出しても答えは返ってこない。

 女として必要として欲しい。

 心の奥底にある思いは、危険であり一族郎党を路頭に迷わせるとわかっていた。全てを捨てられれば、どんなに楽な事だろうと思う。


「シーリィさま?」


 部屋が暗い事で、男は躊躇うように声をかけていた。手に蜀台を持ち扉の所に立っている男は、長年オディス家に仕えてくれる影の一族の長であり、屋敷の執事権護衛でもある。

 返事がない事で男は、ゆっくりと部屋の中に足を踏み入れ、女に近付いて行った。蜀台の灯りに照らされた女の顔を見た男が足を止めた。


「どうか、なされましたか?」

「テイガン。私は……なんなのだ?」

「シーリィさまは、シーリィさまです」


 そんな言葉を聞きたい訳ではない女は、首を振っている。


「必要とされるのはいつもキリアで、シーリィは必要とされない。私は……」

「シーリィさま……」


 テイガンにとっては、シーリィは仕えるべき主であり、その自分が何を言っても意味はないと分かっていた。主の心を救えるのは自分ではなく、主を必要と言ってくれる者以外はいない。

 シーリィにとって祖国は、生まれた国でしかないと思っていた。ただ、そこには一族がいる。シーリィが祖国に縛られている理由は、それだけだった。

 もし、一族がいなければシーリィにとって、国は意味の無いものになっていたはずである。自分を偽ってまで、国に関わる事が苦しく狂おしいほどになっていた。


 だからと、思う。


 自分を自分のまま必要としてくれる者がいれば、祖国からの呪縛を解く者がいれば、居るはずがないと半ば諦めてはいたが、いるのなら自分の全てを賭けてもいいと決めていた。



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