天使と悪魔と
「お前うどん派?そば派?」
「うーん我慢強い方だと思う。」
「あースタバでWindows開くタイプね。」
「ナムルじゃないんだから。」
「流石にパンナコッタの妖精に願い事してきた方がいいと思うよ。」
「えー長友佑都の方が絶対パン屋っぽいよ。」
「ふふっ。」
「あ、今笑った。はい負けー。」
「くそー。」
私は最近、同じ学部の友達、長谷川信也とファミレスでこのゲームをしている。話が成立したら負けゲームだ。因みに笑ってもいけない。長谷川は強い。ここ最近はずっと負け続けだ。こいつよっぽど何も考えずに生きてんだろうな。じゃないとこのゲーム勝てない。
「じゃ、このポテトはお前のおごりってことで。おねしゃす。」
「わかったよもー悔しー。」
最近このゲームにのめりこみすぎて、脳思考回路がおかしくなった気がする。あー暇。じゃなくて時と空間のはざまでパン食ってるわー。
「あれ、なんだこれ。」
「ん?」
その時突然、長谷川は席の下に手を伸ばし始めた。何か落ちているようだ。それは財布だった。
「財布じゃん。」
「多分俺らより先に来た人たちが落としていったんだろうな。」
「多分な。」
「あ、てか見ろよ。」
長谷川が財布の中身を見ながらそう言った。人の財布の中身を見るなんてデリカシーのないやつである。まぁでも、多分私でも見ちゃうだろうし、ノンデリ認定をするのはまだ早いか。
「免許証変な顔ー!はっはっはー!」
前言撤回。
「もーやめろよー。あんま人の財布の中身見んなー。」
「なんだよー面白くねーなー。」
「面白くなくて結構。」
私は人のデリカシーは守るタイプだ。そんな他人の財布の中身なんて…
「あ、てか10万入ってる。」
「えマジで。」
前言撤回。
「うわほんとだ10万入ってんじゃん。すげー。」
「こんな札束人生で初めてだよ。」
「すげー。」
「なぁ。」
「どうした。」
「1万ぬいちゃおうぜ。」
「だめだよ長谷川―。」
「10万も入ってりゃ1万ぬいてもばれないって。」
「ばれるよばれる。てかばれるばれないの問題でもない。」
「ちぇ、面白くねーな。」
「お前はほんとに悪魔の声に弱いな。」
「いやちゃんと天使もいるよ。牛もいるし。」
「いてもその声が小さかったら意味ないんだよ。」
「そーですかー。ずいぶんと立派なご身分でー。」
「はいはい。」
うし?
牛って言ったかこいつ。あまりにもさらっと言ってたからスルーしちゃったけど。なんだ心の中の牛って。こいつ心の中に牧場でもあんのか?えどういうこと?天使と悪魔と…牛?
「長谷川。お前心の中に牛いんのか?」
おそらく今後生きていく中で一生することはないであろう質問を投げかけた。
「いるよ。天使と悪魔と牛。」
やっぱりいた。聞き間違えでもなかった。私は頭が追い付かなかった。思わず顔をしかめる。
「わかるよお前の言いたいこと。」
長谷川はそう言った。あ、こいつも変だって思ってんだ。
「ホルスタインか乳牛かってことだろ。」
そういうことではない。
「乳牛。」
聞いてない。
「牧場にいる。」
もっと聞いてない。なんだよ心の中の牧場って。
「ちげーよ勘悪いなお前。」
「え、どういうこと?」
「そもそもなんで牛がいるのかって聞いてんだよ。」
「は?いるだろ牛は。乳牛だぞ。」
知らねーよ。何切り札みたいに乳牛出してんだよ。因みに有名人がグーグルピクセルを使っているということを報告してくる謎のCMがあるが、その時も知らねーよと思う。
「まあお前の中に牛が存在していることはわかったけど、天使と悪魔の間に牛はいらないだろ。」
「いるよ。そんなこと言ったら天使と悪魔もいらないってことになるだろ。」
「ならねーよ。天使と悪魔がいなかったら誰が結論出すんだよ。」
「牛だよ。何なら牛が一番必要だわ。逆に言えば天使と悪魔の方がいらないまであるわ。」
「じゃあ仮に天使と悪魔がいらないとして、牛だけになったら財布拾ったときその牛はなんていうんだよ。」
「モー。」
「いらねーだろじゃあ。なんも言ってねーのと同じだよ。」
「いるよ。」
「じゃあお前の心の中の牛がモーって言ってどんな結論に至るんだよ。」
「そりゃお前牛乳飲むっていう結論に至るに決まってんだろ。」
「どんな結論だよ。」
「とにかくいるんだよ。牛は。」
「いらないよ。じゃあ仮に天使と悪魔と牛3体そろったとするよ。その時どんな会話するんだよ。」
「いやだから悪魔が、盗んだらええやん言って、で天使がいやあかんでって言って…」
なんで天使と悪魔関西弁なんだよ。お前生まれ栃木だろ。まあいいや。
「それで?牛は?」
「モー。」
「いらねーよじゃあ。」
「いるよ。」
「牛の意見が通ることはあんのかよ。」
「あるよ。」
あんのかよ。キモイわこいつ。デリカシーないうえにキモイ。
「そんなこと言ったらお前は天使と悪魔と何なんだよ。」
「は?」
何言ってんだこいつ。
「エビに決まってんだろ。あ、ブラックタイガーな。」




