第1次 アキバ戦争(その8)
俺は、真田との戦いに勝利した嬉しさよりも
自分の力が増大していることに恐れを感じた。
力が強くなればなるほど、強敵が現れる。
漫画でも小説でも、それがテンプレートだ。
戦い続けたら、いつかはラスボス消される。
だから、早くこのバトルルーティンから
抜け出さなければならない。
(とにかく、この場から早く立ち去ろう。)
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時間が動き始めた。
反デモ派の車の脇で、
あっちゃんと、シゲさんが倒れている。
「シゲさん、大丈夫ですか?」
「ううううう」
「あっちゃん、俺だ、分かるか?」
「・・・」
2人とも息はあるが、病院に連れて行った方が良い。
1人で背負えないので、俺は応援を待つことにした。
UDX前のロータリーは音一つない世界だ。
デモ反対派は、火炎瓶が全て破壊され、
デモ派も、主力のシゲさんが倒された。
両軍ともに戦意喪失で座り込んでいた。
「あなた、素敵な技を使うのね?」
俺のすぐ背後から声が聞こえた。
江良の加護で、俺はいつでも周りの気配が分かる。
しかし、この声の持ち主には気づけなかった。
俺は底知れぬ恐怖で、鳥肌が立った。
ゆっくりと振り返ると、
そこにはテレビで人気の女性政治記者が立っていた。
ショートカットでインテリ眼鏡、
スーツで身を包み、いかにも「できる」女性だ。
「はじめましてですね。私の名前はカレン手島です」
俺は血の気が引いた。
カレンといえば、真田の上司、死神の大幹部じゃないか。
<にげろ、殺される>
瞬間的に、俺の本能が叫んだ。
しかし、あっちゃんとシゲさんを置いて逃げることはできない。
「はじめまして、天野ヒカルです」
何とか時間を稼げば、三条が来てくれるかもしれない。
「そう、ヒカルくんね。
あなたは、どうしてエーテルが使えるのかしら?」
「わかりません」
「誰に教えてもらったの?」
「覚えていません」
「答えたくないのね。それでもいいわ。
でも、うちの真田の邪魔をしたことは、
きちんと、責任をとってもらわなくちゃね」
<<< ドーン >>>
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いきなり爆音がとどろき、周りの時間が止まった。
「ふーん、この空間の戦いにも慣れているようね。
ますます、君のことが気になるわ」
「じゃあ、こんなところから、始めましょうか?」
カレンの言葉が終わらないうちに、炎の玉が飛んでくる。
三条ほどではないが、かなりの威力だ。
「い、いきなりなんですね。
それは、大人らしくないですよ」
「よく言うわ。簡単に私のファイヤーショットを
氷壁で打ち消すなんて、あなたは何者なの?」
「これなら、どうかしら?」
空中に、小さな水の塊が浮かびあがり、
1粒1粒が弾丸のような固さで、一斉に飛んでくる
「あ、危ないですよ」
「信じられないわ。これも全部避けてしまうの?」
◇
感の良い読者の方なら、既に想像されているでしょう。
この時、ヒカルは攻撃のたびに1度は攻撃をくらっています。
その後、時間を何度も巻き戻し、攻撃をかわし続けたのです。
カレンから見ると、ヒカルが、ことごとく
自分の技を防いでいるように見えて、驚愕してしまった、という訳です。
◇
「真田が500年ぶり、と言っていましたが、
君の力は中級以上ですね。
ヒトがその力を持つのは、1000年ぶりの奇跡かしら」
「遊びはここまでよ」
眼鏡の奥から、カレンのエメラルドグリーンの瞳が光った。
長い手足が伸びてゆき、ゆったりと舞を演じ始める。
突然のことで、俺は面食らった。
攻撃しようにもカレンの舞に付け入る隙がない。
風が流れるように、なだらかで美しい。
敵の攻撃なのだが、ずっと見ていたい。
次の瞬間、俺の右腕に激痛が走った。
肘より先が吹き飛んでいる。
「うぅ」
痛くて息ができない。
何が起こったのか分からず、俺はカレンを凝視する。
ゆったりと舞うカレンの手の先に、一瞬光るものが見えた。
<<< グサッ >>>
今度は右太ももが切られた。
このままでは死ぬ。気絶したら終わりだ。
とにかく時間を戻した。
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「遊びはここまでよ」
カレンが舞を始める前まで、戻れた。
これなら大丈夫かもしれない。
舞に目を奪われちゃ、だめだ。
最初攻撃されるのは右手だ。
俺は右手を背中に回す。
その瞬間、カレンの剣が飛んできた。
この剣か!
この伸びる剣(槍)が俺の右手を吹き飛ばしたのだ。
次は右足を狙ってくる。
その前に俺はサンダービームを撃って応戦した。
「その技はさっき見ましたよ」
カレンにあっさり見切られた。
彼女は軽く右に舞って、攻撃をよける。
それなら、範囲攻撃だ。
真田を恐怖させた魔術だ。
強敵だから、全力でぶちこんでやれ。
「「「 サンダーストーム! 」」」
<<< バリバリバリ >>>
「あら、その技は初めて見るわね。
よくできているわ。本当に興味深いこと」
まじか! 封印していた全力投球でもダメなのか。
カレンの舞剣は、時間を巻き戻しながら対処しているが、
このままでは埒が明かない。
戦いは五分五分だ。
しかし、カレンは何かを隠し持っている。
カレンが舞剣の間に、フェイントで炎の技を出してきた。
その炎を見た瞬間、俺はあるアイディアがひらめいた。
(三条の時のように、いきなりの接近戦に持ち込んだら、
勝機が見えてくるかもしれない)
どうせ失敗しても時間を戻せばよい、という余裕が
俺の頭の回転を維持し続けた。
カレンの舞剣は呪文を唱えないので、口を塞いでも意味がない。
それなら、あの眼鏡を奪ってみたらどうだろう?
「うふふ、何かするつもりね。」
(うわっ、心を読みやがって、こいつ神か?)
「いえいえ、何のことでしょう?
あんたこそ、まだ手加減しているんだろ」
「そうね。それではお互いに本気で行きましょうか」
心を読まれて、俺はちょっと焦った。
しかし、今はやるしかない。
(勝負は、再びカレンが舞い始めた瞬間だ。)
カレンの動きが、風の流れに変わる。
舞に入る準備動作だ。
俺は時間を巻き戻し、全力でカレンの胸に飛び込んだ。
゜*。,。*゜*。,。*゜*。,。*゜*。,
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