28話 どこにでもいける
「「ありがとうございました!!」」
シェリアとエリンが、揃って頭を下げた。
腰を90度曲げている、直角のお辞儀。
ガチのお辞儀だ。
俺は、ひらひらと手を振る。
「あー、いいって。んなことしなくても。俺は、依頼に従って行動しただけだからな」
「それでも、ありがとうございます」
「なにかあった時、必ずや、力になると約束いたしましょう」
そこまで真面目に考えなくてもいいんだけどな。
俺は、今回の報酬としてけっこうな大金をもらった。
シェリア達は、安息を得た。
ウィンウィンの関係だ。
これ以上、さらに報酬を求めるつもりはない。
「まあ、強いて望むなら」
それでも求めるものがあるとするのならば、
「お前らは、そのまま笑顔でいてくれよ」
クソ勇者に裏切られたものの……
30年前の俺は、世界ではなくて、こういう人たちを守るために戦ってきた。
その成果が目の前にある。
だから、笑顔を向けてくれることは、ある意味で最高の報酬なのだ。
「じゃ、またな」
ひらひらと手を振りつつ、俺はシェリアの屋敷を後にした。
ずっと頭を下げている気配があるが、振り向かないし、止めることもしない。
二人の好きにさせておこう。
たぶん、そうすることが一番だろうから。
「で」
視線を隣に。
「ミリーは、変わらずに俺についてくるんだな」
実は、シェリアからミリーの引き抜きの話をされた。
ミリーはミリーで、今回、それなりの活躍を見せた。
その功績を買われてのものだ。
俺も誘われたのだけど……
一箇所に留まるのは柄じゃないので断った。
そして……ミリーも断った。
強引なものではないし、本人の意思を尊重するとのこと。
だから、断ったとしても特に問題はないのだけど、
「なんで、シェリアの誘いを断ったんだ?」
そのことが不思議でならない。
かなり破格の条件だったというのに。
なぜか、ミリーは俺と一緒にいることを選んだ。
俺と一緒にいても、特にメリットがあるわけでもないのに。
「なにを言っているんですか」
「ん?」
「メリットなら、これ以上ないくらいにあるじゃないですか」
「どんな?」
思いつかないので尋ねてみると、ミリーはにっこりと笑う。
そのまま、勢いよく抱きついてきた。
「かわいいかわいいアリアちゃんと、これからも一緒にいられることですよ!」
「おわっ、こら、離せ!」
「いやですー、離しません」
さらに頬をこすりつけてきた。
コイツ……
同性だからといって、やりすぎだろう。
俺は、元男だということをバラしてしまおうか?
……あまり意味がない気がした。
それはそれでアリ! なんて言われそうだ。
というか、信じてもらえないだろう。
なにしろ、今は、どこからどう見ても立派な幼女だからな。
「ま、いいか」
一人旅は寂しい。
二人なら、それなりに賑やかだ。
「風の吹くまま気の向くまま」
これからも、自由に旅をすることにしよう。
その先で、なにが待ち受けているか?
それはわからないが……
「俺は今、自由だ」
だから、どこにでも行くことができる。
どこへでも飛んでいくことができる。
さながら、それは渡り鳥のように。
空を見上げる。
澄んだ青。
白い雲。
その中を、一羽の鳥が高く高く飛んでいた。
ここで完結となります。
いかがでしたでしょうか?
口の悪い幼女が主人公だったら面白いかな、と思い書いてみました。
楽しんでいただけたのなら幸いです。




