25話 真打ち登場
「なにを企んでいるかわからないが、私は、念には念を入れるタイプでね。すぐに終わらせてもらうよ。さあ、不死の戦士達よ。そこの騎士と女を殺せ! シェリア嬢は傷つけるな」
「「「……!!!」」」
不死の戦士達が一斉に動いた。
二体が先陣を切り、残り三体は後ろに続く。
前衛と後衛で分かれていて、時間差攻撃をしかけるつもりなのだろう。
そのことを読んでいたミリーは、声を張り上げる。
「シェリアさん、今です!」
「ボム!」
シェリアが陽術を唱えた。
護身のために身につけておいたものだ。
威力は低い術ではあるが、今は十分。
ソファーがひっくり返り、先陣を切る二体の不死の戦士を巻き込んだ。
後衛の三体は、前衛を気にすることなく、そのまま突撃してきた。
確実に仕留めるつもりらしく、三体全部がエリンを狙う。
しかし、それもまた、ミリーは読んでいた。
「エリンさん!」
「はい!」
ミリーは壁にかけられている、油の入ったランプを手に取り、不死の戦士に投げつけた。
ガシャンと割れて、不死の戦士が油まみれになる。
「ボム!」
再び、シェリアの魔術。
ためらうことなく、油まみれになった不死の戦士に火を点けた。
ともすれば、屋敷を燃やしてしまうような危険な行為だ。
しかし、それくらいのことをしなければ不死の戦士を倒すことはできない。
ミリーはそう判断した。
しかし、一つ誤算があった。
それは……不死の戦士の能力だ。
「なっ……!?」
不死の戦士は体が燃えることも構うことなく、突撃してきた。
確かなダメージを負っているはずなのに、その動きが鈍ることはなくて、鋭い斬撃を繰り出してくる。
「くぅ!?」
ミリーはかろうじて斬撃を受け止めるものの、吹き飛ばされてしまう。
他の二体が追撃に移る。
ミリーは無理矢理に体を捻り、二体の斬撃を避けた。
「エリンさん!」
「ええ!」
カウンター。
エリンと動きを合わせて、首を刈り取る。
二体の不死の戦士の頭部が転がる。
「ナイスです、エリンさん!」
「ミリハウアさんこそ、すばらしい剣でした!」
これで、残りは三体。
ミリー達は希望を抱くけれど……
それは、すぐに絶望へ変わる。
「……え?」
首を落とされたはずの不死の戦士は……倒れない。
自らの頭部を拾い、乗せる。
触手のようなものが傷口から生えて、二つを結合。
そのまま繋がり、元の姿に戻った。
「ウソ……首を落とされても生きているなんて……」
「くっ、なんという化け物!」
さすがのミリーも唖然としてしまう。
不死の戦士は規格外の生物だ。
いや、生物と呼んでいいものか?
とにかくも、この兵器に常識は通用しない。
対抗するならば、常識を超える、規格外の力をぶつけなければならないだろう。
ミリーはそんな答えを出すが……しかし、そんな力を持つ者は、今はいない。
詰みだ。
どうすることもできない。
心が絶望に支配される。
立ち続ける気力を失い、膝をついてしまいそうになる。
その時だった。
「……首を落とされても再生するっていうのなら、バラバラにされたらどうだ?」
幼いながらも、凛とした声が響いた。
続けて、術の詠唱が聞こえてくる。
「風よ刃となれ」
風が走る。
精密に、鋭利に、対象を切り刻む。
不死の戦士は首と手足を胴体から切り離された。
さらに、その胴体も四分割にされてしまう。
「よっと」
天窓が開いて、小さな影が降りてきた。
その影の正体は……
「アリアちゃん!」
「ふぎゅ?!」
ミリーに笑顔で抱きしめられて、アリアは変な声をこぼしてしまうのだった。
――――――――――
「お前な……」
颯爽と登場したというのに、いきなり抱きしめられるなんて、さすがに予想外だ。
いや……まあ、ある意味でミリーらしいのか?
こいつは、いつでもどんな時でも変わらない。
そんなところに救われてきたところがある。
「さすが、アリアちゃんです。登場のタイミングを、しっかりと把握していますね」
「計ってたつもりはねーんだけどな」
屋敷の様子がおかしかったから、天窓に回り、中の様子をうかがっていただけだ。
タイミングとしては、ミリーとエリンが不死の戦士の首を落としたところ。
やるな、と思ったが、しかし倒し切ることができず……
慌てて駆けつけた、というわけだ。
「ってなわけで、ここからは俺が相手になろうか」
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