26話 敵なんていない
援軍が現れたというのに、ドランは動揺していない。
それどころか、とてもうれしそうだ。
「おぉ、天使よ。私のところに戻ってきてくれたのだね? いたずらは許してあげるから、その極上のスマイルと体を味あわせておくれ」
ぞぞぞ、と背筋が震える。
「き、きもいな、おい……俺、お前みたいなヤツが一番苦手かも」
「口の悪い子だね。やはり、躾は必要みたいだ」
ドランが指を鳴らす。
その音に反応して、バラバラにしたはずの不死の戦士が動いた。
切断面から触手が生えて、各部を結合。
何事もなかったかのように傷口が再生して、再び立ち上がる。
「トカゲもびっくりの再生力だな、おい」
「これこそが、私の研究の成果の一端だよ」
「単なる副産物なんだろ?」
「しかし、重要な成果でもある。こいつをさらに研究して、精度を高くすれば、色々なところに売りつけることができるだろう」
「てめー……死の商人にでもなるつもりか?」
「利用できるものは利用する。当たり前のことではないかね?」
「ちっ。性格だけじゃなくて、性根も腐ってやがったか」
こういうヤツを改心させることは不可能。
あのゲス勇者と一緒で、根っこの部分から腐っているため、どうしようもない。
とっとと捕まえて、社会的に叩き潰してやるか。
「ってなわけで、覚悟してもらおうか」
「威勢のいい子は嫌いではないが、どうするんだい? キミは多少強いみたいだけど、私の不死の戦士には敵わない」
「さて、どうだろうな?」
俺は不敵に笑う。
「バラバラがダメなら、細切れでどうだ?」
マナを収束。
一気に解き放つ。
「風よ刃となれ、全てを切り刻む嵐となれ」
業風が吹き荒れた。
風は刃となり、不死の戦士を切り刻む。
それは、今までの比ではない。
数センチの間隔で、サイコロ状に体を分解していく。
って……これ、絵面がひどいな。
かなりグロテスクだ。
「う……」
やはりというか、シェリアやエリンは顔を青くしていた。
すまん。
悪いことをした。
「さすが、アリアちゃんです! すごいです」
一人、ミリーは顔を輝かせていた。
お前の感覚、色々とおかしくないか?
「ついでに……」
再びマナを収束。
「炎よ焼き払え」
細切れになった不死の戦士を炎で燃やし尽くした。
炭だけが残る。
「ここまですれば、さすがに再生できないだろ?」
「バカな……不死の戦士を、それこそ子供扱いしてしまうなんて。キミの力はいったい……」
「俺は……そうだな。ただの冒険者さ」
ニヤリと笑う。
「さて……手駒がいなくなったところで、観念してもらおうか?」
「……ふふふ」
動揺していた姿はどこへやら、今度はドランが不敵に笑う。
「それは、私の台詞だよ」
「なに?」
「キミ達が私の財を盗み、不正を働いている。上に、そう働きかけておいた」
「なんですって!?」
シェリアが驚きに目を大きくした。
「ドランさま、あなたは、無実の罪を私達に着せてまで……」
「これが、本来の私の戦い方なのだよ」
「くっ」
シェリアとエリンがドランを睨みつける。
鋭く、刺すようなもので、物理的な威力があればとっくに穴が空いていただろう。
そんな反応も楽しいというように、ドランは笑っていた。
勝者の余裕だ。
まあ、それもすぐに崩れるんだけどな。
「わりーが、そうそううまく事は運ばねーぞ?」
「なんだと?」
「てめーが、裏でこそこそと企むだろうと予想はしていたからな。ソイツを、全部、潰させてもらった」
「なに……!?」
俺がなんのために、この屋敷を離れていたと思っているのか?
こんなこともあろうかと、前世で各地に隠しておいた隠し財産を使用して、あちらこちらに働きかけた。
そして……ドランを権力から分離させた。
今や、彼の言うことを聞く者はいない
思う存分に、逮捕、拘束できる。
「バカな……バカなバカなバカな!? この私が、このようなところで終わるだと!?」
「てめーだけがいつまでも繁栄していられると思うなよ、タコが。てめーのような腐った野郎は、全部、俺が叩き潰す」
「ぐっ……」
追い詰められていることを実感しているらしく、ドランが苦い顔に。
ものすごい表情でこちらを睨みつけてくるが、俺としては楽しい限りだ。
もっと悔しがってみせろ。
喚いてみせろ。
情けない姿を見せれば見せるほど、スッキリするというものだ。
「こ、こうなれば最後の手を……!」
「なに?」
ドランは懐から小瓶を取り出した。
液体が入っているが、その色は真っ黒だ。
毒だろうか?
諦めて自決でもするつもりか?
「これで……貴様らも道連れだ!!!」
ドランはそう言い放つと、小瓶を床に叩きつけて割った。
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