20話 実験場
ある程度、探索したところで、なんのために地下が作られたのか理解した。
ここは実験場だ。
その目的はまだわからないが、人間、亜人種、動物、魔獣などを被検体として、非人道的な実験が行われていたことは間違いない。
その痕跡があちらこちらに残されていた。
それらしい器具の数々。
そして、被検体にされて使い捨てられた亡骸達。
「ちっ……胸糞わりいな」
この光景は、致命的な悪事の証拠となる。
言い逃れはできない。
公になれば、ドランは確実に破滅するだろう。
ただ、どんな実験がされていたのか、告発する前に確かめておきたい。
「元宮廷魔術師とやらがいればいいんだが、留守にしているみたいだな」
でなければ、ここまで堂々としていて見つからないわけがない。
「実験の記録や資料などはないか? それに類するものでも……ん?」
今、なにか音がしたような?
「……間違いないな。この奥に、なにかいる」
生き物の鳴き声らしきものが聞こえる。
全て死んでいるわけじゃなくて、生き残りがいたようだ。
とはいえ、この劣悪な環境だ。
瀕死だったり、妙な病にかかっていなければいいが。
鳴き声の主の身を案じつつ、奥へ向かう。
「こいつは……」
「クルゥ……」
燃えるような真紅の翼。
七色の尾。
黄金のくちばし。
伝説と呼ばれている希少種、不死鳥が囚われていた。
まだ子供らしく、サイズは小さい。
俺の肩にちょうど乗るくらいの大きさだ。
両足に鎖をつけられて、さらに術で拘束されて、封印されている。
「まさか、不死鳥とはな。さすがの俺も、これは予想できなかったな……不死鳥を使った実験となると、やはり不老不死か? 無数の亡骸は、そのために利用され続けてきた……辻褄は合うな」
後で研究資料を探して、裏をとることにしよう。
それよりも今は……
「じっとしてろ。今、助けてやるからな」
こいつの救出が最優先だ。
「鎖は多少頑丈なくらいで、大したことはねーな。ただ、封印が厄介だな。陰術と暗黒術を組み合わせていて、やたら複雑にしてやがる。まともに解除しようとするのは、一万ピースのパズルを解くようなものだ。かといって強引にやれば、なにかしらのトラップが発動するだろうな」
少し考えて、
「ま、コイツを助けることが優先か」
トラップが発動したとしても、全部、ぶち破ればいい。
それよりも、コイツを早く解放してやることの方が大事だ。
「邪なる力よ全て砕け散れ」
ギィンッ!!!
鎖と封印、その両方を同時にまとめて砕いた。
不死鳥を縛るものが消えて、自由になる。
「よし。これが、お前は自由だ。大丈夫か?」
「クルルルッ……!」
手を差し出すと、不死鳥は警戒するような唸り声をあげた。
構うことなく、俺はさらに手を伸ばす。
「クルッ!」
「っ」
鋭いくちばしでつついてきた。
血が流れ、わずかに顔をしかめる。
ただ、怒鳴りつけるようなことはしないし、逃げることもしない。
俺はそのまま、手を差し出し続ける。
「大丈夫だよ。俺は、敵じゃねーよ」
「……」
「お前の味方だ。ここから連れ出してやる。ついでに、こんなところに閉じ込めて、ふざけたことしてるクソ野郎もぶっとばしてやる」
「……」
「だから来いよ?」
「キュウ」
ぴょんとジャンプをして、不死鳥は俺の肩に乗った。
そのまま、俺の頬を舐める。
「クルルル」
「おっ、なんだお前。甘えてくれているのか?」
「クル!」
「かわいいヤツだな、おい。ほれほれ」
指先で頬を撫でてやると、不死鳥は気持ちよさそうに目を細めて、小さく鳴いた。
マジでかわいいな。
「俺と一緒に来るか?」
「クル!」
「よし。じゃあ、お前は……今日からホノカだ」
「クルゥ」
名前をつけてやると、うれしそうにホノカが鳴いた。
気に入ってくれたみたいだ。
うんうん、かわいいヤツめ。
母親代わり……にしては小さい体ではあるが、しっかりと面倒を見てやるからな。
「さてと……じゃあ、さっさと研究資料を探すか」
「クル!」
くいくい、とホノカが俺の服をくちばしでつまみ引っ張る。
こっちへ来い、と言っているかのようだ。
移動すると、机の上に紙の束が。
見てみると、この実験場の研究資料だった。
「おっ、ナイスだ、ホノカ。よくやったな」
「クル!」
「それにしても……ちっ、やっぱり不老不死の実験か」
研究資料を軽く見た俺は、舌打ちした。
くだらねー研究に手を出して、たくさんの人を殺して、ホノカも苦しめるなんて。
ドランのゲス野郎、許しちゃおけねーな。
ひとまず、資料を収納でしまう。
「まずは、このままありったけの資料を収納でしまって……持ち帰り、弾劾に使えそうなものとそうでないものを精査するか。ま、おそらく、どれもこれもアウトだろうけどな」
「……それを持ち帰られると、困ることになりますねえ」
作品を読んで「おもしろかった」「続きが気になる!」と思われた方は
下方にある評価欄の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして頂けますと、
執筆の励みになります。
長く続くか、モチベーションにも関わるので、応援、感想頂けましたら幸いです。
よろしくお願いします。




