19話 探索
「さあ、ここが私の部屋だよ」
「わぁ、すごいですね。綺麗なものがいっぱいです」
ドランの屋敷に案内された俺は、いきなり寝室に案内された。
最初は客間に案内して、話などをして……
という普通の段取りを飛ばして、いきなり寝室だ。
コイツ、露骨すぎるだろ。
「そうだ、喉は渇いていないかい?」
「えっと、言われてみると少し……」
「おいしいジュースがあるんだ。飲んでごらん」
ドランは呼び鈴を鳴らして、執事を呼び出した。
彼になにやら命令をする。
五分後、執事は琥珀色の液体の入ったグラスを持ってきた。
「さあ、これがおいしいジュースだよ」
「んー、良い匂いですね。すごくおいしそうです」
表面上、俺は喜んでみせるものの、内心で辟易としていた。
この甘すぎる匂い……間違いなく薬が入っているな。
この状況で毒薬ということはないだろうから、おそらく、媚薬だろう。
幼女をいきなり寝室に誘い、媚薬を飲ませる。
想像以上のゲスっぷりに、さすがの俺もびっくりだ。
断ると不自然に思われるかもしれない。
かといって、素直に飲むわけにはいかない。
なので……
「ミストブレイン」
とある幻術を使用した。
俺はドランから離れるが、彼は気にした様子はなく、笑顔のままだ。
そのまま一人でベッドに移動して、おもむろに服を脱ぎ始める。
そして、なにかを相手にしているかのように、卑猥に腰を振り始めて……
「ったく、見てられねーくらい情けなくて汚え絵面だ。目が潰れそうだぜ」
幻の俺を相手にしているドランは、とても満足していることだろう。
この分なら、しばらくは問題ない。
俺は一人、部屋の外に出た。
「おや? あなたは、旦那さまの……」
「魅了<チャーム>」
「……」
今度は暗黒術を使い、ちょうどいいタイミングで現れた執事の自我を奪う。
コイツの心は俺のもので、自由自在に操ることができる。
「ドランの執務室に案内しろ」
「はい……かしこまりました……」
虚ろな目をした執事に、執務室まで案内してもらう。
幸い、他の誰かに遭遇することはなかった。
おそらく、色々と楽しむ際に邪魔になるだろうから、最低限の人員しか雇っていないのだろう。
「お前はそこで待機だ」
「わかりました……」
まだ用事があるかもしれないと思い、操った執事は入り口で待機。
俺は、悪事の証拠を探して執務室の探索を始めた。
机や本棚にある書類を高速で目を通していく。
前世では大量の魔導書を毎日のように読んでいたため、速読は得意だ。
「ふむ」
軽い横領や汚職の証拠は出てきたが、ちと弱いな。
ドランのようなゴミは、しぶとく生き残り悪あがきを続けるだろう。
そうならないように、再起不能なまでに徹底的に叩き潰したいが、そこまでするほどの悪事の証拠はない。
「起動、龍眼」
仙術を使い、部屋の探知を行う。
隠し部屋などを期待したが、残念ながらなにも見つからない。
ただ、小さな金庫を見つけることができた。
「風よ刃となれ」
鍵なんて壊せばいい。
金庫を半分に叩き切り、中に入っていたものを取り出す。
「これは……鍵?」
重要そうな鍵を発見したものの、どこのものかまったくわからない。
最悪、この屋敷のものではないかもしれない。
ま、わからない場合は、まず聞いてみればいい。
「この鍵がどこのものか知っているか?」
「はい……地下室の鍵です……」
「地下室? この屋敷は、地下室なんてものがあるのか?」
地下を作るとなると、途端に工期と金額が跳ね上がるため、そんな酔狂な貴族は少ないのだが……
「地下室になにがある?」
「それは……私にはわかりません……」
「誰ならわかる?」
「旦那さまと……懇意にされている元宮廷魔術師の方……地下室についてはこの二人しか知りません……」
元宮廷魔術師……か。
ここに来て、新しい人物が出てきたな。
そいつが善人か悪人か。
今はなんとも言えないが……
まあ、秘密の地下室なんてものがある時点で、良い予感はしないよな。
「地下室の場所はわかるか?」
「はい……場所だけならわかります……」
「案内しろ」
執事の案内で、今度は地下室へ。
屋敷の奥。
厳重に管理された場所に、地下室へ続く扉があった。
扉の前に立つと、わずかにではあるが死臭がした。
腐敗臭もする。
なにがあるかわからないが、ろくでもないことは間違いなさそうだ。
そうなると、執事は足手まといになるだけだな。
「お前は自分の部屋に戻れ。そして、半日ほど寝てろ」
「わかりました……」
執事を追い払い一人になった後、地下室へ続く扉の鍵を開けた。
重い扉を開くと、ますます死臭と腐敗臭が強くなる。
「光よ」
魔術で明かりを作り、地下へ続く階段を降りていく。
そして俺は、ドランが抱えている闇を目の当たりにする。
「死体……か」
子供、女、男、老人……さまざまな人の死体が転がっていた。
それだけではない。
亜人種や動物、魔獣の死体までがあり、死体のオンパレードだ。
「さて、なにが待ち受けているやら」
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