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たまき酒  作者: 猫正宗
11/14

10 神楽坂くんと燻製居酒屋

 午後七時過ぎの繁華街。


 私はいのりとの待ち合わせで駅前の商店街までやってきていた。


 日の沈んだ後だというのに、アーケードは行き交う人々の雑多な足音や人いきれでむせ返っている。


「ふぅ……。あっつい」


 人の流れから外れて道の隅に寄る。


 電柱に軽く身をもたれ掛けてから、私は服の襟首を軽く指で引っ張った。


 開いた隙間を手で扇ぐ。


 けれども起こった風はほんのわずかで、不快感に軽く顔を顰める。


 暦はもう四月も後半だ。


 寒暖差が激しいこの頃だけれども、その中でも今日は特に蒸し暑いと思う。


 こうなってくると、すぐに初夏になるのだろうな。


 取り留めもなくそんな事を考えていると、雑踏の向こうから待ち人がこちらに向かってくる姿が目に映った。


「あ、いたいた。お姉ちゃぁん!」


 背伸びをして手を振っているのは、仕事帰りのいのりである。


 そしてあともう一人……。


「ど、どうもっ。お、お久しぶりです……!」


 スーツ姿の青年が私の姿を認め、慌てた様子でそばまでやってきた。


 ぺこりと頭を下げる。


 この子はいのりの同僚で、いのりに気があるらしい男の子の神楽坂くんだ。


 今日はこの二人と一緒に、お酒を飲みに行く予定になっている。


「お久しぶり。お花見の時に会って以来ねぇ」


「は、はい。今日は無理を言って、その、……済みませんでした!」


「いいの、いいの」


 鷹揚に手を振ってみせる。


「それより、こっちこそ連絡するの忘れててごめんね」


 以前、神楽坂くんと連絡先を交換した際に「また今度飲みましょう」なんて約束をしたのだけど、実は新作小説の企画にかまけてそれをすっかり忘れてしまっていたのだ。


 しばらくして焦れた神楽坂くんから私に連絡を取ってきた。


 そうして今日の飲み会と相成ったわけである。


 忘れていたお詫びに、お店の手配は私の方でしておいた。


 二人とも初任給もまだの新社会人な訳だし、今回は特別にお代も私がもってあげようと思っている。


「お姉ちゃん、待たせちゃった? ごめんねぇ」


 腕時計を眺めると、時刻は待ち合わせ時間を十分ばかり過ぎていた。


「いいわよ、別に。残業だったの?」


「うん。三十分だけだけど」


 いのりの勤めている株式会社サンコー開発は、一昔前までは一般に残業がかなり多いとされていたIT系の会社だ。


 けれども昨今は働き方改革の影響なんかもあって、普段は定時帰り出来ているらしい。


 とはいえ納期前なんかには少し残業もあって、今日はそういう日だったようである。


「それじゃあ行きましょうか。お店に案内するわ。二人ともお腹空いてるでしょう?」


「は、はい!」


「わたしもうお腹ぺこぺこぉ」


 私は二人を連れて今日の飲み会のお店へと向かった。


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 予約していたお店に入る。


 ここは数年前に廃業した飲食店の店舗を京町屋風にリノベーションした小洒落た居酒屋で、豊富な燻製メニューが売りの『燻製居酒屋』だ。


 以前、物珍しさにつられて一人で入った事があるお店なのだけれども、どのメニューも美味しかった。


「いらっしゃいませー!」


 ホールスタッフの若い女性に案内されて、四人テーブルに座る。


 いのりと私が並んで腰を下ろし、対面に神楽坂くんの席順である。


「へぇ……。燻製かぁ。わたしこういうのあんまり食べた事ないや」


 メニューをぱらぱらと捲りながら、いのりが呟いた。


「ふむふむ……。えっと、半熟玉子にサーモンに合鴨に……、うわぁ、プチトマトなんてのもあるよ。お姉ちゃん、これ全部燻製なの?」


「そうよぉ。どれも美味しいんだから」


 私も一緒にメニューを覗き込む。


 そうすると横目にチラッと俯き加減の神楽坂くんの顔が映った。


 彼はさっきから口数も少ないし、どうやら緊張しているらしい。


 私は一応年長者な訳だし、彼の緊張が解れるまで、こちらから話し掛けることにする。


「ね、神楽坂くん。きみはどれがいい?」


 テーブルにメニューを広げた。


「お姉ちゃん。神楽坂くんは男の人なんだから、きっとたくさん食べられるメニューがいいと思うよ。だよね、神楽坂くん」


 いのりが声を掛ける。


 すると神楽坂くんの顔が赤くなった。


「そ、そうだなっ。ありがとう。お、俺は、任せるよ……!」


 なんとも初々しい。


 楽しくなってきた。


 私は彼のこういう反応を肴にしたかったのだ。


「ふふ。いのりもさっきお腹空いたって言ってたわよね。……ふむん。それじゃあ、お肉系がいいかなぁ。よし、決めた」


 店員さんを呼んでオーダーを通す。


 するとほどなくして、頼んだ料理がお酒と一緒に運ばれてきた。


「わぁ……!」


 並べられた料理を眺めて、いのりが感嘆の声を漏らす。


 注文したのは『燻製厚切りベーコン』に『燻製ソーセージの盛り合わせ』に『燻製照り焼きチキンステーキ』。


 どれもがっつりと食べられるお肉系の燻製メニューばかりだ。


 そしてお酒は、日本酒『天狗舞、古古酒純米大吟醸』。


 これを冷やで二合ばかり頂いてある。


 これは結構いいお値段のするお酒なのだけれども、燻製料理のようにクセのある食べ物に良く合うのだ。


 折角なので二人にも飲ませてあげたい。


「あ、これ天狗舞の……」


 神楽坂くんが店員さんの抱えていた一升瓶のラベルに目を止めてた。


 いのりが反応する。


「どうしたの?」


「い、いやこのお酒なんだけど。前から一度飲んでみたかったやつだったから、つい……」


「そうなんだぁ?」


「ああ。これ前に読んだことのある小説に出てきたお酒なんだよ。……って、あの話でも主人公が、燻製料理と一緒にこのお酒を飲んでたんだよなぁ」


 二人の話を聞きながら、思い出す。


 そういえば私が書いた小説『グラスホッパーがぁる』に、このお店をモデルとして登場させた事があるのだ。


 ここの燻製料理があんまり美味しかったから、茉莉に無理を言ってエピソードをねじ込んだんだっけ。


 もしかして神楽坂くんの読んだ小説って、グラスホッパーがぁるだったりするのだろうかなんて考えてしまうも、私はすぐ被りを振った。


 ……いやいや、まさか。


 著者として出来れば一度くらい自著の読者とお酒を飲みながら、語らいたいという気持ちはある。


 けどあの小説はどちらかと言えば女性向けのキャラ文芸小説だし、神楽坂くんみたいな男の子が読んでいたりはしないだろう。


 私はぽりぽりと頬を指でかいて妄想を振り払った。


 ◇


「それじゃあ、食べましょうか」


 頂きますをしてから、三人揃って料理に箸を伸ばす。


 私が最初に摘まんだものは燻製ソーセージだ。


 まだ熱々のそれを鼻先に近づけると、豊潤で力強く、けれどもほのかに甘い独特の燻製香がする。


 これはサクラで燻してあるのだろうか。


 燻製材はサクラの他にもヒッコリーやナラ、ヒノキ、ブナ、カエデ、クルミと様々だけど、サクラは日本では最もメジャーなスモーク材だし、肉料理なんかを燻すのに最適だからきっとそうだと思う。


 香りを堪能しながらパクりと齧り付いた。


 パリッと小気味の良い音が鳴るのと同時に、瞬く間に強烈な燻製香が口内に充満していく。


 これが堪らなく癖になるのだ。


 もぐもぐと咀嚼する。


 するとソーセージの粗挽き肉の間からなんとも甘い脂が沁みだしてきて、口の中の香りと混ざり合っていく。


 肉の旨みがスモークの強烈な個性でさらに高められているのを感じる。


 あぁ、美味しい……。


 私は久しぶりの燻製料理をじっくり味わってから、ごくんと飲み込んだ。


 けれども口内にはまだスモーキーな余韻がありありと残っている。


 ここでお酒の出番だ。


 鮮やかなブルーの切子グラスになみなみと注がれた天狗舞を持ち上げ、まずは目でその華やかな美しさを楽しんでから口を添え、くいっと傾けた。


 唇を伝ってとろりと甘い液体が流れ込んでくる。


 舌先に感じるのは長期熟成で凝縮された米の絶妙な甘み。


 続けてしっかりと腰の入った旨みが、口の中で膨らみ鼻腔へと通り抜けた。


 古酒ならではの力強い旨さが口内に漂う燻製の残り香と混じり、昇華されていく。


「んく、んく、……はぁぁ。やっぱり燻製には熟酒よねぇ」


 端麗な味わいの日本酒ではこうはいかない。


 グラスを置くと、いのりと神楽坂くんの二人も私と同じように満足そうな表情で肴を摘まみ、お酒を煽っていた。


 感想を尋ねてみる。


「ふたりとも、どう? 燻製料理の感想は?」


 いのりが満面の笑みで応える。


「すっごい美味しい! ぱくぱく食べちゃう!」


「いや、本当に美味しいです。お酒とも良く合ってます。天狗舞のこの種類のって、たしか『熟酒』って言うんですよね? んく、んく、……ぷはぁ」


 神楽坂くんもお気に召してくれたらしい。


 しかしこの子、熟酒なんて言葉よく知ってるな。


 もしかするとお酒が好きなのかも。


 そんな事を考えていると、いのりが首を捻った。


「熟酒……。あれ? それって……」


「い、いや、ちょっと前に読んだ小説に、そんな事が書いてあったんだよ」


 神楽坂くんがいのりに向けて話し始める――


 ◇


 日本酒は香りや味わいによって『薫酒(くんしゅ)』『爽酒(そうしゅ)』『熟酒(じゅくしゅ)』『醇酒(じゅんしゅ)』の四つに大別されることがある。


 薫酒とはフルーティで華やかな香りと軽い味わいが特徴的で、あっさりした肴に良く合うお大吟醸酒や吟醸酒など。


 爽酒とは香りは控えめで味わいにはキレと清涼感があり、割とどんな肴にも合わせられるお酒。主に普通酒や生酒。


 熟酒とは強めの香りとずっしり濃厚な味わいが特徴的で、クセの強い肴と相性の良い長期熟成酒や古酒のこと。


 醇酒とは香りは抑えてあるけれどもその分米の旨みがしっかりと感じられ、しっかりした味付けの肴に良く合う純米酒。


「――ということらしいんだ。いや、俺も完全に読んだ本の受け売りなんだけどさ」


 つっかえながら説明をする神楽坂くんに、いのりが尋ねる。


「ねぇ、その本ってもしかして……。『グラスホッパーがぁる』?」


「あれ? なんだ、宵宮も読んでたのか」


「あ、やっぱり!」


 いのりが手をパンと叩いて喜ぶ。


「あれ面白いよなぁ! 俺、作者さんのファンなんだけどさ。一人飲みのお供にもう何回も読んじゃってて!」


「わたしも今思い出したよー。たしか主人公の貴子が、この天狗舞を飲みながら燻製のお料理を食べるお話あったよね」


「そうそう! それがめっちゃ美味しそうでさぁ! 俺、ずっと食べてみたいと思ってたんだよな!」


「ふふふ、わたしも、わたしもぉ」


 やっと共通の話題が見つかって、ホッとしたらしい。


 神楽坂くんといのりが盛り上がり始めた。


 かと思うと――


「あ、神楽坂くん。ところでそれ書いたの、お姉ちゃんだよ」


 ふいにいのりが私も指差してきた。


 つられてこちらに顔を向けた神楽坂くんと目が合う。


「……ん? 悪い、よく分からなかった。お姉さんがなんだって?」


「えっとね、グラスホッパーがぁるを書いたの、環お姉ちゃんなんだって。お姉ちゃん、小説家さんなんだもん」


 神楽坂くんが私のいのりに交互に視線を彷徨わせる。


「……は? え、何?」


 混乱しているようだ。


 いのりが隣から私に身を寄せて、腕を組んできた。


 嬉しそうに笑う。


「うふふ。良かったね、お姉ちゃん。神楽坂くんってば、お姉ちゃんのファンなんだって」


「…………はい?」


 私もちょっと状況の変化についていけず、間抜けな声を出してしまった。


 けれどもそれは神楽坂くんも同じようだ。


「……え? え? 宵宮、何言ってんの? あの著者の人って『二ノ宮たま』さんだよな?」


「うん、そう! お姉ちゃんは宵宮環。だから名前を少しもじって二ノ宮たま」


「………………マジ?」


 神楽坂くんがポカンとして私も見つめてくる。


 …………。


 しばしの沈黙。


 あんぐりと口を開けていた彼が、急に立ち上がった。


「う、うおおお! すごっ!? ほっ、本当に、二ノ宮先生ですか!?」


 ぐいっと身を乗り出して迫ってくる。


 その凄い圧力に、私は軽く仰け反り気味になりながら応える。


「そ、そうだけど……。え? 何? 神楽坂くん、きみって私の読者さんだったの? えええ」


 思わぬ展開に私もどうリアクションを取ればいいのかわからない。


 まさかとは思ったけれど、この子、本当に私の読者さんだったなんて……!


「そうです! うおお、こんな事ってあるんですね! すげえ!」


「ほ、ホントねぇ」


 神楽坂くんが瞳をキラキラさせて迫ってくる。


 嬉しいようなこそばゆいような、そんな気持ちで背中がむずむずしてきた。


「あ!? このお店、もしかして作中に出てきたあの店だったりするんですか!? すげえ、マジすげえ!」


 興奮しているのか、すげえを連呼しながら詰め寄ってくる。


「そ、そうだけど……。落ち着いて。近い、近いってば、こら神楽坂くん!」


 これにはさしもの私もたじたじだ。


 神楽坂がぐいぐいくる。


「今度本にサイン貰っていいですか? ファンなんです! もう何回も読んだし! マジすげえ!」


 キラキラ瞳を輝かせた神楽坂くんに、内心『子どもかっ⁉︎』と思いながらも、悪い気はしない。


 この子ってば、すごい良い子じゃないか。


 ちょっと現金すぎやしないかと思われそうだけど、小説家というものは例外なく、自著を楽しんで読んでくれた相手に激甘ものなのである。


 けれども流石にちょっと騒ぎすぎかも。


「こら。落ち着きなさいって言ってるでしょ。ほら、神楽坂くん! めっ! 席に座るっ!」


「あっ!?」


 嗜められてようやく自分の様子に気付いたのだろう。


 短く声を上げてから真っ赤に顔を染め、彼はようやく椅子に腰を下ろした。


「す、すみません……! な、なんか俺、興奮しちゃって……」


「ふぅ……。びっくりしたわよぉ」


「すすす、すみません……」


 神楽坂くんが恐縮して身を丸める。


 ばつが悪そうに上目遣いで私の様子を窺ってきた。


 そんな様子が何だか可愛らしい。


「……ぷっ。なぁに、その顔。叱られた子犬じゃあるまいし。ふふふ」


 思わず吹き出してしまった。


「別に怒ったりしてないわよ。ねぇそれより、私の本読んでくれたんだ?」


「は、はい。すげえ面白かったです……」


「そっかぁ。ふふふ。嬉しいな」


「お、お世辞じゃないですよ。俺、結構一人でも飲むから、そういう時に読んでたんです。あの本読んでたら何か一人でも楽しいと言うか。焼き鳥屋さんの話読みながら焼き鳥食べたり……」


 自著の読者さんとこうして飲みながら話せるなんて、まるで夢のようだ。


 つい調子に乗って尋ねてしまう。


「ね、あれって連作短編集じゃない。各話独立したエピソードなわけだけど、神楽坂くんはどのお話が好きだった?」


「そうですね。バーの回とか好きです。貴子が静かなバーで飲んでいるときに騒がしい団体客が入ってきた話。貴子も絡まれるけど、でも最後にはちゃんとみんな仲良くなって、バーのマナーなんかも教えてほんわかした話になるじゃないですか。俺、ああいう優しい世界というか、そういうのが好きで……」


「そっかぁ」


 ちゃんと読んでくれてるんだなぁ。


 読者さんの生の声。


 これは途轍もなく嬉しい。


 小説を書いていて良かった。


「ね、ね、他には? あれってどっちかと言うと女性層をターゲットにした小説だと思うんだけど、きみみたいな男の子がどんな所に面白みを感じたのか、私興味あるな。聞かせてくれない?」


「そうですね。俺なんかの素人意見で良ければ」


 私は彼の話に黙って耳を傾けた。


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 気付けば私は、いのりをそっちのけにして思いっきり神楽坂くんと話し込んでいた。


 いのりの一言でその事に気付く。


「わたし、ちょっとおトイレ行ってくるね」


「あっ! ご、ごめんね、いのり」


「はぇ? 何が?」


「いや、いのりをほったらかして神楽坂くんと話しちゃってたから」


「なんだ、そんなこと? いいよぉ。ふふふ。二人は仲良しだよね。それより……」


 いのりが席を立ち、通り際にぼそっと神楽坂くんに耳打ちをする。


「神楽坂くん」


「な、何だ?」


「お姉ちゃん、いま彼氏いないと思うよ。だから頑張って……!」


 小さく力こぶを作りながら、いのりが神楽坂くんにウィンクをした。


「お、おい⁉︎ まっ⁉︎ それは違……っ! ま、待てって、宵宮……!」


 いのりは返事を聞かずに、そのままトイレの方へと向かっていく。


 残された私たちは無言になった。


 神楽坂くんは口をぱくぱくさせながら、いのりが去った方に手を伸ばしている。


 何だか凄く申し訳ないことをしてしまった。


「ご、ごめんね、神楽坂くん……」


「…………何が、ですか?」


「聞こえてたわ。あの子ってば、なんて勘違いをするのかしら……。はぁ……」


 姉ながらいのりの恋愛音痴には頭が痛くなる。


「べ、別に俺は宵宮にどう思われてたって――」


「あ、そゆのいいから。好きなんでしょう、いのりのこと。バレバレよ」


 言葉を遮って、言い切る。


 すると神楽坂くんは何か反論しようとしては口を噤み、そんな動作を何回か繰り返してから最後には赤くなって俯いた。


 どうやら観念したらしい。


「…………はい。そうです」


「そうよねぇ。はぁ……。まったくあの子ってば……」


「なんか、自分では割とアピールしてるつもりなんですけど、全然相手にされなくて。今もまた変な勘違いされちゃうし……」


 神楽坂くんが項垂れる。


 これは嬉しくて、つい彼と話し込んでしまった私が悪い。


「ご、ごめんね」


 神楽坂くんはどうやら悪い子じゃないらしいし、私は謝りながら、これからは彼の恋路を応援してやってもいいかも知れないと思った。

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