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お宝……

「ふぅ~~」


 無意識に呼吸を止めていたようだ、剣を持つ手が固まっている、左手で固まった右手の指を一本一本外していく。

 剣が床に落ちて、金属的な音を出した。

 後ろに倒れるように尻餅を着く。


(やばい、ファイアーウォールは至近距離で使うものではないな)


 あまりの光景に一瞬自分も炎に焼かれている感覚になってしまった。

 動悸が治まらない、体全体がまだブルブルと震えていた。



 落ち着いてきたので起き上がって剣を拾う。

 あたりを見渡してみると討伐部位が大量に転がっていた。

 あまりにも大量なので麻袋を取り出し回収していく。


 ゴブリンが装備していた錆びた短剣と盾をリュックに放り込む、装備や討伐部位を回収しつつゴブリンシャーマンがいた辺りを注意深く調べる。

 すると、小指の爪ほどの黒く濁った魔石が転がっていた。


[ゴブリンシャーマンの魔石…… 魔力の結晶、魔導具の材料及び燃料]


[ゴブリンシャーマンの耳…… 討伐部位 畑の肥料になる]


 魔石とシャーマンの耳、シャーマンが使っていた杖を回収した。

 他になにも無いのを確認した俺は来た道を戻る。

 道が二股に別れていた所に戻り、魔導懐中時計を出して時間を確認する。

 まだお昼前だったので、調べていない右の道を行くことにした。




 右の道は別段変わったことはなく、一本道が緩くカーブしながら下に続いていた。

 しかし左右の壁には相変わらず亀裂が走っていて、いつゴブリンが這い出てきてもおかしくない状況だった。


 道はすぐ終わっていて、小部屋になっていた。

 ゴブリンが潜んでいるような気配はしない。

 盾を構えランプを腰につけ直し、中にゆっくりと入って行く。

 周りを見渡して見ると、錆びて折れたナイフやくたびれた革の鎧、薄汚い布切れなど、ガラクタが部屋のすみに捨てられていた。

 ガラクタに紛れて明らかに人骨と分かる骨も散乱し、不気味な光景をかもし出している。


(ここをゴミ箱代わりにしていたのか?)


 探索をこれ以上続ける価値はなさそうだな、そろそろ戻ろうと思った時、視界にキラリと光るものが映った。


[金の指輪…… 金で作られた普通の指輪]


 (おお、ちょっとお宝っぽい物が見つかったぞ)


 近づいて拾い上げる、魔法のランプに照らされて鈍く光っている。

 ジャージのポケットに入れてゴミの山を見た。


(まだお宝があるかも知れない)


 鑑定をしつつゴミの山を崩していく。

 ちらほらと散乱している銅貨を拾って、合計で銀貨一枚分ぐらいにはなった。

 結論を言えば大半がゴミだった。

 お宝らしいものは小さな小箱が一箱見つかったくらいだ。

 手のひらに乗るくらいの木箱で、表面は彫刻が施されている。

 中身を確認しようと思って開けようとしたが、びくともしない。

 鍵穴らしきものもなく、鑑定しても[箱]としか出なかった。


 とりあえずリュックに放り込み、探索を切り上げて洞窟の外へ出ることにした。




 外に出るとちょうどお昼だったので、どこかで昼飯を食べようと思った。

 洞窟を離れ小川をさかのぼり、昨日昼飯を食べた場所で今日も食べることにした。

 苔むした石に腰掛け焼きそばパンをかじる、まだ街に戻るには早すぎるのでどうしようか。


 昼食を終えて少し森の探索をすることにした。

 今いる場所はガルドから南に進んだ山のふもと付近だ。

 ここから南は険しい山脈が連なっていて、日帰りの探索には不向きだ。

 東か西に方向を変えて、大回りでガルドへ帰還するのがいいだろう。

 俺は何気なしに西に進路変更して歩き出した。


 辺りを探索しながら進んでいく。

 倒木にはキノコが生えていて、鑑定すると食用のものも多くあった。

 薬草類もたくさん生えていて、採取しながらゆっくりと進んでいった。


 ガサ藪の中を慎重に進む、森の地面は思った以上にデコボコしていて、注意をしないと足を取られてしまう。

 唐突にガサ藪が途切れて、二メートルほど崖になっていた。


(あぶねぇ、危うく落ちるところだった)


 足を踏み外しそうになり、木の枝にしがみついた。

 ふと崖下を見るとイノシシのような生物が泥浴びをしているのが見えた。


[ピグフェロ…… 大きな豚。恐ろしく獰猛で、人を見ると走って襲ってくる。魔物ではない]


(おお、あれがピグフェロか)


 宿屋の夕食に出てきた美味しいお肉がそこにいた。

 あいつを仕留めてやろうか、盾をリュックに入れて大型ナイフを引き抜く。

 タイミングを見計らいワームホールを発動した。


 俺の目の前とピグフェロの横の空間に黒い穴が出現する。

 俺は迷わずナイフを両手で突き入れながら、体ごと穴の中に入った。

 ナイフはピグフェロの首に深々と突き刺さる。

 ひねりを加えて首を半分切り飛ばした。

 

 ピグフェロの首から鮮血がシャワーのようにほとばしる。

 泥の中に倒れ込み足をでたらめに動かし暴れまわる。

 ほどなくして動きが止まったピグフェロが、血溜まりの中に横たわった。


(確かにワームホールは強いな、不意打ちを食らったらよけきれないかも知れない)


 ピグフェロの後ろ足をロープで縛り近くの木に吊るす。

 相当な体重があるはずなのに、それほど苦労せず吊るせてしまった。

 ペットボトルを出して血と泥汚れを洗い流す。

 血抜きは終わったが解体方法なんかわからないから、そのままリュックに放り込んだ。


 時間は三時を回っている、そろそろ街に戻るとするか。

 魔導方位磁針を出して街の方向を確認する。

 街まで一直線に進み、それほど時間を掛けないで戻ることが出来た。




 夕方のギルドは大変混んでいて受付には長蛇の列が出来ていた。

 一番と二番の列は平均しており、受付嬢の人気は二人共同じくらいなのだろう。

 昨日話したフローラさんの列の最後尾に並ぶ。

 二人の受付嬢は忙しそうに動き回っているが、なかなか俺の番が回ってこない。

 その間に周りの冒険者の会話が聞こえてきた。

 盗み聞きしていた中で、目の前の冒険者たちが話をしていた鉱山の話が興味深かった。

 最近ガルドの鉱山に魔物が発生したらしい、攻略はベテラン冒険者を中心にして行われていて、そこそこの成果が上がっているそうだ。

 しかし鉱山深部の難易度が高くて、探索が思うようにはかどらなくなってきているらしい。


(鉱山に魔物発生か、ちょっと興味があるな)


 ほどなくして受付の順番が回ってきた。


「こんにちは討伐部位をもってきました」


 よし、今日は噛まずに言い切ったぞ。


「あらあら、こんにちは。今日も来てくれてうれしいわ」


 あいかわらずフローラさんは美しかった。


「これの査定と、ピグフェロの買い取りをお願いします」


 大きく膨らんだ麻袋を出し、カウンターの上に置く。


「あらあら、何が入っているのかしら?」


 フローラさんが麻袋を開けて中身を見る。


「あらまあ、どうしましょ。こんなにたくさん、お姉さん困ちゃうわ」


 ゴブリンの耳を見たフローラさんが、両手を頬に付け嬉しそうにいやいやしている。

 すると三番窓口の男性職員がこちらに近づいてきた。


[ベルター…… 平民 ギルド職員 レベル8(ドワーフ・男・30歳)・スキル…… 中級剣術 中級格闘術 上級解体]


「どうした何かもめ事か」


 こちらを見ながらフローラさんに聞く。


「主任ちがうんですよ、トーヤさんが魔物さんをいっぱいやっつけてきたので驚いただけです」


 フローラさんが麻袋を見せながらあわてて説明してくれた。

 ベルターさんは中身を一瞥すると、麻袋の口を閉めて掴み上げた。


「ついてこい」


 一言言うとカウンター横のドアから中に消えていった。

 俺はフローラさんを不安げに見た。


「あらあら、トーヤさん、申し訳ありませんが、主任についていってもらえますか?」


 フローラさんが深々とお辞儀をした、凶暴な膨らみが今日も服の下で荒ぶっている。


「仕方ありませんね、ちょっと行ってきます」


 荒ぶる神に免じてついていってやろうか。




 ドアを通ると真っ直ぐな廊下があり右側にドアが付いていた。

 左側は窓になっていて夕日が差し込んでいる。

 ドアは開いており部屋の中にベルターが立っていた。


「失礼します」


 恐る恐るなかに入る。


「そこに座れ」


 ソファーを指差し、俺が座ると自分も反対側に座った。


「そう警戒するな、詳しい話を聞きたいだけだ」


 テーブルの上には俺が持ってきたゴブリンの耳がうず高く積まれている。


「トーヤと言ったか、この大量のゴブリンの耳はどこで手に入れたんだ」


 ベルターさんは俺が討伐したと思ってないらしく、どこからか仕入れてきたと思っているようだ。


「ええと、南の森にゴブリンの巣穴を見つけたので、中にはいって討伐してきたんです」


 適当に誤魔化すのが面倒だったので、本当のことを言った。


「お前一人で討伐したのか? 仲間はどうした?」


 胡散臭い人間を見るような目をしながら話を続ける。


「一人で行きました、ちょっと囲まれてしまったけど、なんとかやっつけてきたんですよ」


 尋問のような聞き方にイライラして説明が雑になる。


「嘘をつけ! ここに[ゴブリンシャーマンの耳]まであるじゃないか、一人で討伐出来る規模ではないのは解りきっていることだ」


 だんだん口調が厳しくなっていく。

 おれもあたまに来て一触即発の雰囲気になった。


「二人共そのへんでやめたらどうだ」


 二人してドアの方を見る、そこには身長二メートルぐらいで髪の毛が赤銅しゃくどう色をした眼光の鋭い隻眼せきがんの男が立っていた。

 右目を眼帯で隠し右頬には縦に傷跡がある。

 右手が義手で右脚を微かに引きずっている。

 満身創痍のはずだが、圧倒的強者の風格を醸し出していた。


[ランドルフ…… 平民 ギルド長 レベル20(人間・男・55歳)・スキル…… 上級剣術 上級槍術 上級格闘術]


「私はランドルフこのギルドでギルド長をやっている。私にも話を聞かせてくれないか」


 静かに語る声には有無を言わさない響きがあり、思わず首を縦に振ってしまった。

 ギルド長がベルターの横に座る。

 強面のオッサン二人に見られて、更に居心地が悪くなった。


 ギルド長は静かに[ゴブリンシャーマンの耳]を掴む。


「ふむ、まだ新しいな討伐したてのようだ」


 そう言うと横のベルターに見せた。


「ガルドでここ数日ゴブリンシャーマンを討伐した話は聞かない。どこかから討伐部位を持ってきたら、これほど新しい状態には保てないだろう。よって私は、君の言うことを全面的に信用する」


 ギルド長は俺にうなずいてみせる。

 ステータスを見る限り、力で場を支配する感じだが、以外にも理詰めで物事を解決する話術は見事なものだった。


「しかし、ここにうず高く積まれているゴブリンの耳を見て、到底一人で討伐できないというベルターの意見も理解できるのだ」


 ギルド長がギルド長がシャーマンの耳をテーブルに戻しこちらを見た。


「全部洗いざらい本当のことを言えとはいわないが、もう少し詳しく話を聞かせてくれないだろうか。もちろん秘密は守るし悪いようにはしない、何なら契約を交わしてもいい」


「ギルド長! 何もそこまでしなくてもいいんじゃないでしょうか」


 ベルターが少し焦り気味に話をかぶせてくる。


「あの、契約とはなんでしょうか?」


 俺は素朴な疑問を聞いた、ギルド長はこちらを見て何かを考えている。


「契約とは女神イシリス様に誓って約束を守る大変重い枷のことだ。もし破ったときには神罰が下る。世界中の人々が知っていて当たり前のことだぞ」


 ベルター横から呆れ顔で教えてくれた。


「契約を知らないとは、君はもしかして『ながれびと』なのかね?」


 ギルド長が少し合点がいったという顔でこちらを見つめてくる。


「『ながれびと』がなんだかわかりませんが、俺は人とあまり関わりたくないと思っているんです。特に俺自身のことは一切語るつもりはありません。しかし、ゴブリンに関しては詳しく話してもいいと思っています。嘘はつかない、言いたくない事は言わない、それでもいいのなら質問してください」


 秘密がある程度ばれるのは覚悟していたので腹をくくった。



「ではもう一度質問をさせてもらう、その前に契約を行おう」


 ギルド長が話を進め始めた。


「契約はしなくてもいいですよ、あまりそういうのは好きじゃないので」


 俺が言うとベルターがホッとした表情になった。


「しかし約束は守ってもらいますよ、破った場合はそれなりの覚悟をして下さい」


 俺は軽く警告をする。


「なかなか物騒な提案だな、しかし安心してほしい、二人共口は堅いほうだからな」


 ギルド長が苦笑いで約束した。



「では最初の質問だ、ゴブリンの巣が南の森のなかにあったということでいいんだな?」


「はい、偶然発見したんです」


「君が一人でゴブリンを殲滅した、これも間違いではない?」


「まったくそのとおりです」


「このテーブルの上にある耳は、ざっと見積もっても百匹分ある。普通なら一人で倒すことは出来ない、君もそう思うだろ?」


「そうですね、ゴブリンの住処で戦うのであれば、ゴブリンが二十匹でも勝てないでしょうね」


「二十匹どころか十匹だって勝てないぞ!」


 ベルターが横から口出ししてくる。

 ギルド長はベルターに手で黙るように指示し続きを質問する。


「ここが一番疑問なのだが、どうして君はゴブリンたちを殲滅できたのかね?」


 ギルド長が核心をついてきた。

 俺はしばし黙り込む、どこまで話していいものか。

 絶対防御のことは話すことは出来ない、嘘は言わないとさっき言ってしまった。


「信じてもらえるかわかりませんが、ゴブリンの軍団を蹴散らす力を俺は持っているんです」


「なるほど、ではどうやって倒したか実演してもらえないだろうか?」


 ギルド長は俺が教えてもいいと思う範囲でいいから、攻撃方法を見せろと言ってきた。


「わかりました、全て手の内を明かすことは出来ませんが、いくつか披露しましょう」

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