89 エルナの憂鬱
私の名前はエルナ・ヴァレンタイン。
フェリス王国の公爵家の長女として生まれてきましたが、私は貴族なんて下らないと思っています。
幼い頃から、マナーやら勉強などと厳しく躾けられてきたので、常に自由が欲しいと思っていました。
お父様とお母様は、公爵令嬢としての最低限のマナーさえ身に付ければ良いと言ってくれましたが、お母様の教育係だったメイド長が、お母様の教育に失敗したとの理由で、私に厳しくしてきたのです。
両親や祖父母ならわかるのですが、どうしてメイド長の方が発言力が強いのでしょうか……。
私がリンに逆らえないように、お母様もその方にはどうしても逆らう事が出来なくて、私の教育方針を丸投げしてしまったのです!
お蔭で、その方が亡くなるまでは、遊ぶ事すら許されない厳しい生活を強要されてきました。私はどうもお母様の性格を強く受け継いでいたらしく、隙を見ては逃げ道はしっかりと作っていたので、結局似たような結果になってしまったようです。
そんな私ですが、お母様と同じく可愛い物がとても大好きなのです。
中でも私が非常に残念に思っていたのは、私に妹が出来ると思っていたのに、生まれて来たのが弟だった事です。
勿論、祝福はしたのですが、内心では思っていても、「私の欲しいのは可愛い妹なのです!」などとは言えないので、次は妹が欲しいとお願いしましたが、残念ながら望みは叶いませんでした。
しかし、弟のカイトは、優しそうな感じはお父様に似ていますが、容姿の方はお母様に似ていると思いました。私のお古のドレスを着せてみると、とても可愛い少女になったので、本人が知らない事を良い事に、時間がある時には女装させて抱き締めていたのです。ある日、お母様にばれてしまって、流石に公爵家の跡取りに何をさせているのかと、しっかりと怒られてしまいました。
私のお付きのメイドのリンだって一緒になって楽しんでいたのに、全ての罪を私に被せて一緒に注意するとか恐ろしい裏切りです。
当然のように、メイド長から厳しい罰までもらって、私の自由が更に奪われたのは忘れられませんでした。
それらの教育の成果なのか、私は表向きはどこに出しても立派な令嬢に育ちましたが、内面ではどうすれば自由を手に入れる事が出来るか考えるようにもなっていました。
私が13歳になった時にメイド長が亡くなったのです。本当に申し訳ないのですが、私は解放された気分になったのです。
表面上は悲しんでいましたが、私の心にはそんな気持ちは全く無かったのです。人として恥ずかしいと思いますが、仕方ないと自分を納得させています。
それからは、公の場でだけしっかりと振舞えば特に何も言われなくなったのですが、これまでに出来てしまった私の印象から、私と親しくしてくれる友達は一人も作る事は出来ませんでした。
私の元に来るのは下らないお褒めの言葉と婚約者の候補だけです……私は、気軽に話せる友達が欲しいだけなのです……やっと解放されたのに。
唯一私に何かを言ってくるのは、同じ公爵家のオリビアだけでした。私の表面上の性格を見抜いているのか「詰まらない方ですね」と言われています。
学園に入学した時も適当に手を抜いてBクラスになった時などは、期待外れとまで言われてしまいました。
私は中間ぐらいの場所で、適当に自由が欲しいだけなのに……。
せっかく同じクラスになった方達も私の事を公爵家の令嬢様としか見てくれないので、私は増々学園に通うのも憂鬱になってきたぐらいです。
そんな時に、気分転換にお爺様の領地に出掛けましたが、安全な道のはずなのにいつもよりも多くの魔物に襲われて、護衛の方達が亡くなっていく内に私は死を覚悟しました。
まさかこんな事になって死んでしまうなんて、私の人生はこんな詰まらない事で終わってしまうのかと思っていた所に彼女は現れたのです。
私よりも幼い感じの少女が魔物を次々と倒して行くと、最後には魔術で殲滅してしまったのです!
しかも傷ついた人達まで癒してくれるなんて、この子は一体何者なのでしょうか?
お礼を述べた後に名前と目的地を聞いたら、特に無いと聞いたので、そのまま護衛の依頼を頼みましたが、その後も彼女1人で殆どの魔物を倒してしまうのには驚きました。
お話をさせていただきましたが、魔狼王の森で暮らしていたと聞いた時は、どうやって暮らして居たのかとても不思議に思いました。彼女は何やら思いついたような言い訳をしていましたので、私の勘で、この子が何かを誤魔化している事だけは理解出来ました。
しかし、彼女は私が貴族の令嬢だと知っても態度を変えずに、普通に接してくれるどころか、友達にもなってくれました。
私はこの出会いに運命を感じて彼女……シノアに強く惹かれました。
道中では、外の世界の知識が欲しいと言われたので、私の知る限りの事を教えると、飲み込みが早いのかしっかりと覚えていきます。
野営の時にこんな場所でお風呂を作り出したのも驚きましたが、シノアは羞恥心が無いのかさっさと服を脱ぎだした時には、私も黙っていられなくなって、つい淑女の何たるかを語ってしまいました。注目すべきは、このお風呂を作るまでに4系統の魔術を行使していた事です。
戦闘の時も違う系統の魔術を使っていたのです。普通は1系統しか使えない方が殆どで、私の知る限りではお婆様の3系統までしか知りません。
我流と言ってましたが、槍も使えるのにこれだけの魔術が使える人材がいるのには驚きました。もっと驚いたのは、私と同い年だった事です。
これだけの力を有しているのに見た目は幼いので、私はエルフかドワーフかと思っていたのですが、よく見れば身体的な特徴は人間にしか見えません。
そして……湯船の中でしっかりと調べたので間違いはありませんが、よく見ればこの子は私の理想的な妹ではないですか!
この時に私は、ここでこの子を手放してはいけないと強く思ったのです。
何よりも私の命を救ってくれたのです。本来ならばあの時に私は死んだはずなので、私の命はシノアのものだと思うと、何だかとても愛おしく感じてきたのです。
私に同性愛などの感情があったのには驚きましたが、普段から可愛い物には目が無いので、こうなる事は必然だったのかも知れません。
シノアは食べ物には強く反応したので、お菓子を食べさせてあげると、とても懐いてくれるので、可愛いのです。
眠る時は、知らない事を良い事に友達は抱き合って寝る事が普通と教え込んで、私の抱き枕になってもらったのですが、これは素晴らしい提案だと思いました。
お爺様に会って、彼女の事を話した後に何とか引き留める方法をお願いすると、同い年なら我が家で引き取って学園に通えば良いと提案してくれました。流石はお爺様です。
お爺様が直ぐにシノアと話をして、承諾を得られたと聞いた時にはお爺様にとても感謝しましたが、同時に彼女を決して手放してはいけないとも忠告されました。そんな事は言われるまでもなく実行するつもりです。
シノアが提案を受け入れてくれたところで王都に戻る事になったのですが、お爺様の知り合いのギムさんまで付いて来るとは思いませんでした。
私の裏の素顔を知っている方で、会った時には色々と話をした事があるのです。かなり頑固な所があるので、それなりに有名な鍛冶師なのですが、偉い人の依頼でも平気で断ってしまう人なのです。
それがシノアを気に入って、道中の護衛も引き受けると言うのですから驚きです。
ギムさんは引退しているのですが、それなりに高レベルの冒険者ですから、単独でも王都までの魔物には負ける事はありません。
しかし……出発して見ればギムさんは飲んだくれているだけで、シノアが全ての魔物を倒しています。
本人は気にしていないのですが、これでは護衛がシノアだけと変わらないですよね?
そして、ある時に気付いたのですが、シノアは私が眠った事を確認すると、夜な夜などこかに行っているのです。
しかも、自分の複製を作り出して私と入れ替わっているのです。ここは黙認するのが恋人として当然と思ったので、寝たふりを続けていました。つい複製に質問をしたら、私の望む答えをくれるので、本物の彼女と思って堪能させてもらいました。
勿論、朝起きても私は知らないふりをしていましたが、彼女の秘密が増々知りたくなってきたのです。
王都にもう少しで到着する前日は複製を作らずにギムさんと話した後に森に行ってしまうので、私はちょっと寂しかったです。
その後、何か話声で目が覚めました。シノアが知らない女性を連れてきています!
寝たふりをしつつ会話を聞いていると、その内容にとても驚きました。
シノアは本当に何者なのでしょうか?
ですが、私が好きになった人なのですから、その様な事は些細な事と思って知らないふりをして、翌朝に居なかった事だけを問い詰める事にしたら、苦し紛れの言い訳をしています。恋人のいい訳なのですから、私は納得した振りをしてあげました。
王都に着いてからも色々と問題はありましたが、シノアに付いて行く為に私は改めて努力致しました。
シノアに付いて行く為には冒険者としての実力が必要なのです。普段からサボり気味の私にはシノアの実力には遠く及びません……若い頃はそれなりに強かったお母様に頭を下げて、稽古を付けてもらって、友達になったカミラも巻き込んで一生懸命努力しました。
しばらくして、シノアが1人の少女を誘拐……じゃなくて引き取って来たのですが、とても可愛い子なので私も許可しましたら、この子がとんでもない曲者だったのです!
戦闘面での剣の実力はシノアを上回っていて、すぐにシノアと共にダンジョンに行けるのです……可愛いだけでなく私の恐るべきライバルが現れたのです。
しかも、私の勘が訴えているのですが、この子はシノアに特別な感情を持っているのか、何か通じ合う物があるようなので、私の場所を奪いかねません。
今さら、その子はダメですとは言えなかったので、私は更に修行に打ち込みました。
お母様やリンからは、何がそこまで本気にさせているのかわからないと不思議に思われましたが、私はシノアの一番になる為でしたら、どんな事でもするつもりです。
ようやくシノアからの許可を得たので、ダンジョンに一緒に行けると思ったのですが、シノア達のサポートがなければ私は完全に実力不足です。
シノアがレベルが足りないと言ったと思ったら、パーティーを分けて、とにかく私とカミラに倒させるという荒業で、私達のレベルを上げる事になったのですが……お母様達の修行と違って、シノアの試練は過酷でした……。
どんなに疲れて腕が上がらなくなろうとも、セリスさんが常に回復してくれるので、食事と睡眠以外はとにかく戦う事なのですが、どうして彼女達は疲れないのでしょうか?
あれだけの魔術と私達のサポートをしているのですから、全体を警戒している分だけかなり気を使っていると思うのですが、全く変化がありません。
連れて来たカミラなどは、とっくに泣き言を言ってますが、私はシノアへの思いだけで、乗り切る事が出来ました。
気が付けば、私もそれなりに戦えるようになったのですが、途中で手に入れたベルセルクと呼ばれる職業の恩恵が強いのです。
この職業にすれば、かなりの身体能力が得られる代わりに魔術の行使が不向きになるのです。
常にマナを身体能力に回してしまうので、前衛職なのにマナをかなり必要とします。
シノアの教えでマナは常に増やすようにしていましたが、最初の頃はそれでもかなりきつかったのを覚えています。
身体強化を常にしているのですが、マナが切れたりするとその反動が大きくて、立つのも辛いぐらいになってしまうのです。
通常の方法では追いつかないので、シノアが調合した怪しげな薬を使う事で私のマナの保有量は多くなったのですが、その薬には人体に副作用があるので止められていたのです。私が迷うこと無く飲んでしまったので、何かあったら、必ず何とかすると言ってくれましたから、いつか私の物にする材料にしょうと思いました。
実はこの薬の副作用は精神に影響するみたいなのです。私にとっては、彼女への思いが強くなるだけでしたので、全く問題にならなかったのです。むしろ両得な結果になりました。以前よりもシノアを欲しいと思う気持ちが抑えられない程ではないのですが、どうも感情の高まりが大きくなってしまったようです。
お蔭で、私はシノアとお風呂に入ると、いつも自分の理性を抑えるのに大変になってしまいました。
それからしばらくして、海に行った時にまたしても事件が発生しました。
せっかくシノアの水着姿を毎日日替わりで観賞して、楽しい日々を過ごしていたのですが……最後の日にそれは起こったのです。
殿下達を探しに行って、カミラを危険に晒してしまったのですが、戻って来た時にカミラが何かシノアと深い中になった気配がします……何があったのかは知りませんが、私の感が警鐘を鳴らしています。
それだけならともかく、オリビアまでもシノアに惚れてしまうとは……散々嫌がらせをしていたのに、ちょっと命を救ってもらっただけで、ここまで変わるのですか?
しかも、シノアに直接癒してもらったお腹を摩っていますが。この人は変態なのですか?
でも羨ましい……私の怪我は全てセリスさんが直ぐに癒してしまうので、考えてみたら今までシノアに癒してもらった事がありません……その内に、2人っきりになった時に怪我をしたら治してもらうと決めました。
その後も、オリビアとは激しく口論をしました。この痴女は決して引かないどころか、シノアの頼みなら何でもする宣言をするのですから、恐ろしいライバルが増えてしまいました。
私もシノアの為ならどんな事でもするつもりでしたが、流石に私には街中を全裸で……そんな事は出来ないので、敗北を感じてしまいました。
こうして考えてみると、シノアを慕う者がどんどん増えてきている気がします。
シノアは出会いはどうあれ、その時に害意がなければ全て友達として受け入れてしまうのです。
私と同じような感覚を持っているのか、シノアは他人の機微に敏感なのです
本当は、私が独占したいのですが、そんな事をすれば私が重い女と思われてしまうでしょう。出来た恋人を演じる為にも、シノアに愛人が出来たと思って、私は広い心で受け入れていますが。ちょっと増え過ぎなのですよね……。
ダンジョンも80階層まで突破したのですが、シノアが学園の卒業資格を得て、残りの学園生活を捨てて他の国に行きたいと言い出したのです。
勿論、私も着いて行くつもりでしたが、これだけはお母様も許してくれなかったので、適いませんでした。シノアからは、頑張ってねと言われる始末……こんなに愛しているのに、私を置いて他所の国に行くなんて……私の心はシノアを拘束して、お屋敷の地下に閉じ込めてしまいたい気持ちでいっぱいです。
取り敢えずはダンジョンを制覇するまではこの国にいるのですが、このペースだと制覇は目前です。
その晩は珍しくシノアが何も言わずに部屋に来ないので、私はてっきり自分の工房で何かに夢中になっているのかと思っていたのですが、翌朝に工房を訪ねてもいません。
シズクちゃんの工房に居たカチュアさんを問いただしたら、ギルドの掲示板にあった依頼をちょっとやってくると言って、シズクちゃんと出掛けてしまったらしいのです!
どうして、私に何も言わずに、私を置いて行くのですか!
気付けばセリスさんもいないので、気付いて追いかけて行ったに違いありません。
セリスさんは、シノアに対して異常な忠誠を誓っているので、ライバルとは言いませんが、油断の出来ない人です。
私は、あの普段は無表情のセリスさんが、私とシノアが使っていたシーツを毎日取り換える大義名分を使って、自分の部屋に持ち込んで使っているのを知っています……私は心が広いので、そのぐらいは許していましたが、何かあったら、これで脅迫できるので気付かなかった事にしているのです。
カミラも何かぶつぶつ言ってましたが、私と同じで置いて行かれたようです。
庭で、ステラさんが何故か泣いていましたが、それどころではありません!
私はすぐにギルドの受付に行って、シノア達が向かった場所を受付嬢に問いただしましたが、依頼を明かす事は出来ないとか言い出したのです。私が同じパーティーメンバーである事は知っているので、泣き落としで恋人に置いて行かれたと騒いだら、何とか教えてもらいました。古城とは魔狼王の森の中枢にある場所なので、今から私がシノアに追い付くのは不可能と判断しました……。
シノアには転移魔術があるので、当然ですが、森の泉辺りに転移してから向かっているはずなので、移動能力を持たない私には追い付く事は不可能です。
私は肩を落として帰宅をしましたが、帰る時に思ったのです。
このままでは、私とシノアの関係が他の人に負けてしまうかも知れません……それでしたら、既成事実を作ってしまえば良いのではと?
シノアは自分に向けて来る好意が高ければ高いほどその相手には気を許してしまう傾向があります。
一番わかり易い例はオリビアです。
私に対しても最初の頃は変な噂を流しているうざい人とか言っていたのに、今では信頼も得てしまったらしく、色々と手助けまでしています。
特に私のシノアに向けている目は恋人でも見るような感じなので、シノアも安心しきっています……流石にこれには看過出来ないので、オリビアを問い詰めたのですが、私と違って一番になろうとは思ってないので、愛人でも構わないとまで言い出したのです。
私に一番は譲ると言っておきながらも、シノアに何か情報を流しているみたいなので、下心は満載と認識しました。
このように、他の人も何かしらシノアに思いを寄せているようなので、私も決断するしかないのです。
私が男性だったら直ぐにでも婚姻を結んでしまうのですが、残念ながら私は女性です……同性の婚姻はこの国では認められていないので断念するしかありませんが、1つだけ可能にする方法があります。
神聖ヴァリスには、性別を変える魔術か薬があると噂で聞いた事があります。
シノアが私を置いて出掛けてしまったのなら、今のうちにヴァリスに行ってその手段を手に入れてくれば、シノアが戻って来た時に既成事実を作る事が可能だと思ったのです。
今までの傾向から考えると、シノアと深く結ばれてしまえば必ず私に絶対の信頼を向けてくれるはずです。
現時点でも、私が無理なお願いをしても必ず応えてくれるので、シノアには強い感情で接するのが正しいと私は思っています。
要するにシノアに私の愛を認めさせれば良いのです。
そう判断した私は、早速向かおうと思ったのですが、どんなに急いでもヴァリスまでは20日以上は掛かるので、学園の始業式に間に合いません。
転移魔術が使えればと思いましたが、行った事の無い所には行けないし、使える人がいる事自体が珍しいのです。
しかし、このお屋敷にはシノアの従者になったアルカードさんがいます。
彼は古い悪魔らしいので、もしかしたら神聖ヴァリスにもいた事があるのではないでしょうか?
しかも、シノアが呼べば必ず現れるので、転移魔術が使えるに違いありません。
私は早速アルカードさんに尋ねたら、転移魔術も使えるし、ヴァリスにも行った事があるので転移が可能と教えてもらいました。
私はお願いをしてみたのですが、シノアの許可が無いとお屋敷から動く事が出来ないと言うのです。
しかも現在はシノアから、アイリ先生を鍛える事を命じられているらしく、それが最優先との事でした。私のお願いを聞いてくれたら、過去のシノアの映像を見せると言ったら、喜んで協力してくれる事になりました。
ちゃんと先払いで、私の知っている秘密の一部を見せたので、納得してくれました。私の数少ない魔術にこの魔法があったのに運命を感じるしかありませんでした。
アイリ先生は猛反対していたのですが、ちゃんと弱みは握ってありますので、痴態の一部を見せてしっかりと説得したので、大人しく道場でギースさん達に稽古を付けてもらう事で納得させました。
ついでにカミラにも付いて来てもらおうと思ったのです。シノアがいつ戻って来るか分からないので、お屋敷で待機していると言ってましたが、私がいない時に帰って来てシノアを独占させるわけにはいかないので、当然ですが無理矢理連れて行く事にしました。
私は知っているのですが、カミラは毎晩必ずシノアの手を握って眠っています。
私が気付いて離させようとした事があるのですが、まるで完全に固定されているかのように引き離す事が出来なかったのです。
普段はシノアに小言ばかり言っているのに、気付けばシノアと接触したがるなんて、これはシズクちゃんが言っていたツンデレとか言うものなのでしょうか?
とにかく、私のいない所で2人にするのは危険なので、私が監視するしかありませんし、戦いになってもカミラは私よりも強いので必ず役に立ちます。
本人は隠しているつもりなのですが、どう見ても万能な魔法戦士です。
弓しか使っていないように見えて、無詠唱で近づく魔物を倒しているのに私は気付いています。
海での事件から、カミラの能力がまるで別人のようになっていったので、シノアと何かあったのは明白です。
地下神殿の時に色々と問い詰めましたら、隠し事が下手なので、かなりボロを出していました。私は要点だけ上手く聞き出して、納得したふりをしていますが、シノアの特別になっている事だけは間違いありません。
今回の件でも、ちらっと問い詰めただけで私に従ってくれたので、これで完全に私の考えが間違ってない事を裏付けてしまったのにも気付いていないようです。
アルカードさんの実力は地下神殿で知っています。私の知る限りでは勝てる人などはシノアがお姉ちゃんと慕っているエレーンさん以外にはいないと思いますので、この3人で向かう事にしました。
まずはアルカードさんにヴァリスの事を聞いたのですが、入るのに少々手間が掛かるらしいので、初めから国内に飛んだ方が良いとの事なのです。アルカードさんが手頃な場所に目印を付けてくると言ってから転移していきました。戻ってから改めて転移すると、宿屋の一室でした。
単独で国内に転移して、そこそこの宿を取って転移したのですが、流石は執事さんも兼ねているので、仕事は完璧のようです。
当面はここを拠点にするとしますが、アルカードさんも性別を変える薬などは知らないので、自分達で調べるしかありません。
色々な事を知っているのですが、姿を自由に変えれるアルカードさんには不要な情報ですからね。
アルカードさんはうちのお屋敷の方に目を向けているので、私の護衛ぐらいしか出来ないと言っています。私達の相手をしながら、お屋敷の全てを把握しているらしいのです。悪魔とはすごい存在だと私は再確認を致しました。
試しに、私がお屋敷で今誰が何をしているのかを聞いたら、スラスラと細かく答えてくれるのですが……これは私がお屋敷でシノアにしている事や影でこそこそとしている事も全て知っていそうなので、決して敵に回してはいけないと思いました。
宿の受付に行くと、受付のお姉さんのアルカードさんを見る目がとても情熱的です。
そして、アルカードさんに時間がある時にお情けを下さいとか言い出したのですが……。
アルカードさんに聞いてみると、余計な事を話さないように完全に虜にしておいたそうです。
今なら、アルカードさんが死ねと命じても喜んで命を差し出すそうなのです。私はアルカードさんが味方で良かったと思いました。
ついでに理解はしているのですが、お情けとは何か聞いたのですが……私の予想通りの答えでした。この人がアイリ先生に知られたら殺されてしまうのではないかと思います。
何にしても、手がかりを掴むまではここに滞在する事にしたので、お屋敷の方には、アルカードさんに適当な内容で、お母様に話してもらいました。
私が話をしたら、余計な事を聞き出されて外出禁止になるかも知れません。
始業式の前の日までには、必ず戻る事を条件に許可が出たらしいので、必ず成果を手に入れて戻る事にします。
シノア、待っていて下さいね。
私が戻った時がシノアの1番になる日なのですからね!




