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生まれ変わったのですよね?  作者: セリカ
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88 年齢詐称?

 本日もとても清々しい朝です。

 ノアにムカついた事もまとめてシズクにぶつけてやりましたので、私の気分は晴れやかです。


「うっ……ぐす……お尻が痛いです……」


「どうしたのですか? 昨日は、あんなに喜んでいたのに、どこが痛いのですか?」


「お姉様……お尻に何を塗ったのですか! 目が覚めたら叩かれた所が燃えるように痛いです! 早く治して下さい!」


 涙目で訴えています。叩いた後に薬で眠らせてから、香辛料を塗っておいたのですが、中々効果がありますね。


「セリスにでも頼んで、癒してもらえば?」


「とっくに頼みました。お姉様の与えた罰なので、許可なく癒す事が出来ないと言われてしまったのです! 強制的に眠らせている間にこんな事をするなんて、酷すぎます!」


「ただ叩いただけだと、シズクの場合はお仕置きにならないから、アレンジしてみました。シズクの大好きな漫画のお姉様も捕まえた敵の傷口に塩を擦り込んでいたので、真似しただけですよ?」


「あれは、敵の口を割らせる行為なので、私は喋る事がありませんよ!」


「そんなに痛いのですか? ちょっと辛子成分の物を腫れ上がったお尻に擦り込んだだけなんですけどね?」


「経験はありませんが、お尻に火でも付いているみたいに痛いです! 睡眠薬の効果が切れて直ぐに目が覚めたので、お姉様が起きるまで地獄のような苦しみです!」


 ちょっとしか飲ませていないので、眠気よりも痛みが勝ったらしいですね。

 地獄とか良く分かりませんが、針の山でも歩かせてみたいですね。


「シズク、ちょっと騒がしいですよ。その程度の痛みは耐えられるはずですから、シノア様の罰をしっかりと受けなさい」


「私は、お姉様やセリスお姉ちゃんみたいにマゾではないのですから、こんなの耐えられません!」


 私はともかくセリスまで、マゾ扱いとは勇者ですね。


「何でもいいので、いつまでも寝てないで、早く座って朝食を食べなさい。シノア様が作った椅子に座らないと食べる事は許しませんからね」


 スルーしましたが、あの状態で、椅子に座れとか無言の攻撃をしていますね。


「うっ、うぅ……立てないのです……」


「まったく、世話が焼けますね」


 シズクを抱き上げると椅子に無理矢理座らせましたが……。


「ぎぃ、い、痛い――――――――――――――――――!」


 ギャーとか叫ぶと思ったら、何とかはしたない悲鳴だけは避けましたね。

 

「食べ終わるまでは、椅子から降りる事は許しません。もしも降りたら、私も貴女のお尻を叩いて上げます」


「酷いです……セリスお姉ちゃんが鬼に見えます……」


「貴女がシノア様に粗相をするから、当然の結果です。レンも良く覚えておくのですよ」


「ちょっと口を滑らしただけで、ここまでするなんて、現代のお仕置きは恐ろしいですね……傷口に香辛料を擦り込むなんて初めて見ました。今はこれが当たり前なのですね。私も気を付けるように致します」


 レンが感心したように納得していますが、こんな事をしているのは私達だけです。

 なまじに魔術で癒せるから、過剰なお仕置きが可能なのです。考えてみたら恐ろしい世界ですよね……。

 シズクが、泣きながらパンを食べていますが、いつもと違って急いで食べていますよ。

 そろそろ可哀想なので、食べ終わったらセリスに頼んで治してあげるますか。



 食事が終わったところで、レンにペンダントを1つプレゼントしました。


「綺麗な宝石が付いたペンダントですが、もらっても良いのでしょうか?」


「それには、鑑定妨害の付与がしてあるので、これからは常に身に付けておくようにして下さい」


「鑑定妨害系のアイテムはかなり希少だったと思いますが……」


「鑑定が出来る者がレンを見たら、吸血鬼と知られてしまうので、決して外してはいけませんよ?」


 あの事件の後に、私自身は鑑定偽装が出来るようになったので、不要になったのです。指輪は私の収納の中にあったので、改めて解析をして、新たに私とシズクで作った物なのですよね。

 どうも、あの指輪は知っている者には見られるとまずいので、ペンダントにして服の下に隠しておいた方が良いと思ったのです。

 逆に、鑑定が出来ないのは、見る者の力不足なので、その者よりも格上と偽る事も出来るのではないかと思っています。

 この世界の技能は、ただ持っているだけだと大した力は発揮しませんが、鍛練次第では強力な力になりますからね。

 大体、サテラが鑑定をすると相手の能力が数値で見れるとか……これは、エレーンさんやアルちゃんも同等かそれ以上の事を見る事が出来ると思って間違いないでしょう。

 私には見れないのですが、自分の数値が知りたくなって来ました。もしエレーンさんと比較して、差があり過ぎたら……そう考えると見ない方が良いのかも知れませんね。


「わかりました。肌身外さずに必ず身に付ける事にします。もしかして、これもお作りになられたのですか?」


「一応、私とシズクの共同製作品です。私は武器には能力を加える事は出来るのですが、身に付ける装備品には特別な付与などは出来ないのです。代わりにシズクが強力な付与が出来るのですよ」


「付与なら任せて下さい! 帰ったら、レンちゃんのコスを作りますので、どんな付与が欲しいのか考えておいて下さいね? なので、お姉様は私にオリハルコンの繊維状にした物と糸を下さい」


「……こないだ、私が頑張って作った物を渡したではないですか?」


「あれは、もう無いので、追加が欲しいです!」


 はぁ?

 分身をエルナの抱き枕の生贄にしている間にマナポーションを飲みまくって作ったのにもう無いとか……ちょっと無駄遣いのし過ぎでは?

 こんな事なら、もう少しお尻の痛みを継続させれば良かった……。


「シズク……あれだけの量を作るのに……私が寝ないで作った苦労を少しは理解して欲しいのですが……」


「お姉様は、睡眠は不要ですよね? 不眠不休で行動出来るので、特に苦労では無いと思っていたのですが? 私も不眠不休で行動出来る体になりたいので、羨ましいです!」


「方法がわかったら、今すぐにでもシズクを眷属にしたくなって来ましたよ」


「やっとその気になってくれたのですね! 帰ったら、カミラお姉ちゃんを説得しましょう!」


 頭の固いカミラは絶対に説得は無理ですよ。

 眷属になる前は、あんなにちょろい性格だったのに、いまでは厳しい小姑ですよ。

 カミラよりもノアと会話が可能なのですから、ノアを説得した方が早いと思うんだけどね……。

 (んー、もう条件は解放済みだから、後は君の心次第だよ。これ以上は自分で気付いて下さい。ただ、カミラが仲間と認めていないと駄目な枷があるだけだけどねー)

 なんと、そうだったのですか……すると私が気付けばシズクはいつでも眷属にする事が出来ることになりますが……うん、わかりません!

 しかし、人間を辞めてしまうのに本当に良いのかな……。


「あの……お姉ちゃんは本当に人間ではないのですか? 2人の会話を聞いていると、何か違和感を感じるのですが……」

 

「まあ、私と一緒にいれば、その内に気付くと思いますので、レンには特に隠しませんが、普通の人間ではありません。内緒ですよ? ちょっと変わった存在とでも思って下さい」


「昨日もそのような事を言っていましたので、初めはドワーフとのハーフなのかと思っていましたが、これだけの能力があるのですから、私の知らない種族なのですね。私と同じように能力を継承されたのですか?」


「継承とは?」


「聞かされた話なので、詳しくありませんが、私は、母親の基礎能力とレベルを受け継いだと聞いてます」


「吸血鬼にはそんな事が出来るのですか?」


「普通は出来ませんが、特殊な儀式で可能です。私を生んだ後に助からない怪我を負ったので、自らの命と引き換えに私に託したのですが、レベル以外は受け継いでも弱体化してしまったみたいです。後は思い出せないのですが、家名を失いました」


 眠っていた期間を引けばシズクと変わらない年齢なのに、レベルが高い理由がわかりました。そんな事が可能なら、高レベルの存在も納得が出来ますね。

 (失われた魔術儀式ですねー。本人の意思と同意があれば、自らの命と引き換えに力を与える事が出来るのです。継承できる範囲は相手との繋がりの深さで変わって来ますので、必ず思った結果が得られるとは限らないよ?)

 おっと、ノア先生が答えてくれましたよ。

 そうなると、レンは初期化された能力とレベルだけはそのまま引き継いだ事になるのですか?

 (継承させた魔法を知っていた事になるので、この子の母親は、最低でも上級闇魔術が使えた事になります。家名が消えたと言っていましたが、この子の記憶も断片的に失われているので、僕にも読み取れないのです。恐らくですが、半端に力を受け継いだ代償に色々と失った物があるのでしょうねー)

 命と引き換えなのに思う結果が得られないのでは、リスクの高い魔法ですね。

 (んー、だから半端な魔法なんだよ。繋がりが低いとショボい能力が増えるだけだし、そこまで闇魔術が使える人物を死なせてまで使うなんて、戦える駒が減るんだから、人材の無駄以外ないからねー)

 ちなみにどんな魔法なのですか?

 私の頭の中には知らない魔法が名前だけはあるのですが、使わないと効果がわかりませんからね。

 (んー、君には無縁の魔法だから、使う必要もないし、使わせません。こんな半端な魔法をレンにも使わせたくないので、教える気もありません。もしも、知っている者がいたら、その者は吸血鬼の貴族か王族になります)

 するレンは、世が世なら、皇子様だったのですね。

 (んー、記憶が欠落していることに本人は気付いていませんのでわかりませんが、可能性は高いかと思います。1つだけ警告しておきますが、仮にレンの身内が居たとしても、これ以上は継承させない方が良いと思います)

 なぜですか?

 (先ほども言いましたが半端な魔法なので、失敗すると逆に弱体化します。下手すると今度は能力を失ったりレベルがダウンする可能性があります。レンの能力を考えると、かなり成功した状態だと思いますので、これ以上は望まない方が良いですね)

 なるほど……一応、保険の為に、レンの深層意識に継承に関する事は拒否するように命じておきますか。

 しかし、誓約魔術って、繋がりを持ってしまえば相手の心に枷を付ける事が可能なので、恐ろしい魔法ですね。

 (んー、普通はここまで出来ませんので、最上級になって適性がないと不可能です。この魔術はあくまでも約束を守らせる魔術なのですが、僕達の支配欲求が強いから出来ているだけだし、普通の者にこの魔術を高める事はほぼ不可能です)

 すると……私には誰かを支配したい欲求があると言う事に……友達は欲しいと思っているだけなのに……。

 (んー、君の心は欲望の塊です。そろそろ自分の本質に気付こうね? どんなに君が偽善ぶっても僕が存在している以上は、これが君のもう一つの顔なんだからねー)

 あー、嫌ですねー。

 ですがノアの言葉を否定出来ない私がいますからね……私は、最終的にはどうなってしまうのでしょうね?


「あの……私は何かいけない事でも言ったのでしょうか?」


「いえ、何も言っていませんがどうかしましたか?」


「途中から、ずっと私を見たまま考え込んでいましたので……」


「お姉様は、妄想癖があるので、突然考え込む癖がありますから、気にしない方が良いですよ」


 ……誰が妄想癖ですか!


「私にそんな癖はありません! 確かにちょっと考え込んでいましたが、ノアと会話していただけです」


「あの恐ろしい方ですか……」


「ところで私をなぜドワーフとのハーフと思ったのですか?」


「それは、見た目が私と変わらない姿で、あれだけの魔術を行使して、小柄で物作りをなさっているからです。普通の人間でしたら、年齢的に若すぎるので……」


「……レンは私がいくつに見えますか?」


「見た目は10代に見えますが……失礼を承知で申しますが、最低でも100歳は超えているのかと思いました。違っていますか?」


 ……生まれてまだ、15年……もうすぐ16年ぐらいと思うのですが、私は100歳越えなんですか……確かにドワーフの種族特性は受け継いでいます。ギムさんも200歳近くですが、見た目は働き盛りのおっちゃんですからね……エルフのレイリアさんも美人のお姉さんなのですが、100歳以上でしたね。


「お姉様は、そんなに歳を取っていたのですか? 私のおじいちゃんよりも年上だったのですね……」


「違います! 私はまだ15歳のか弱い乙女です! それと多分ですが、人間の成分の方が多いですよ!」


 うら若き乙女をおばあちゃん扱いとは。私は泣くよ!

 使徒なんて者も存在しているから、見た目で判断すると年齢なんて正確にわからないと思います。レンが私をドワーフのハーフと思ったのは、恐らく成人しても私ぐらいの姿をしている事によるのです。これは、やたらとそれらしい事をすると、周りからは最低でも100歳以上に見られるのかも知れません。見た目は完全に人間の特徴しかないのにちょっとショックですよ……。

 (んー、大丈夫ですよ。このまま何も無ければ、見た目は少女のおばあちゃんになるのですから、間違ってはいませんよ? 試しにエレーンにおばあちゃんとか言ってみれば面白い事になるよ!)

 そんな事を言ったら、確実に斬られますよ!

 エレーンさんって、意外と精神面が弱いから、傷つくと思うけど、怠け者と言われた腹いせにサテラを痛み付けていたぐらいなんですから、私が死なないと思って滅茶苦茶しそうですよ。


「ごめんなさい……亜人の長命種と思ったので……そうなると増々わからないのですが……」


「お姉様は天魔族の末裔のはずですよね? 翼が出せないけど」


「天魔族も滅びかけた種族と思いましたが。私達とは違った意味で恐れられていたと記憶しています」


 ……シズクが喋ると、私の秘密がどんどん暴露されていきます……。

 特に秘密にしていないから知られても良いけど、身内だけに納めて欲しいですね。


「私の事は、追々教えて行きますので、この辺りにしておいて、帰る前にレンがどれだけ戦えるかと魔法のテストだけはしてから、戻りましょうか」


「ご期待に添えるかはわかりませんが、ある程度の魔物なら倒せますので頑張ります」


「レンちゃんの戦闘スタイルをじっくりと見させてもらいますね! 帰ってから、新しい衣装が作れるので楽しみです!」


 その後、軽く森の魔物を狩っていました。身体能力的には私よりも落ちますが、打撃などの攻撃はレベルの分だけ私よりも強力です。

 見た事も無い体術で戦っています。弱い魔物などは、殴ったり蹴ったりしただけで即死なので、もう技とか関係無いような……。

 魔術なのですが、流石に適性が高いだけあって、初級なのに私よりも上手く扱えています。

 私もよく使っている『シャドウ・アンカー』などは、正確に相手に命中させるし、私よりも細かく枝分かれして攻撃出来るとか、もう十分に強いです。

 素早い相手にも、相手の視界を奪う『ダーク・シェイド』で暗闇状態にして倒すとか、これで武術なんて覚えたら、確実に強くなれます。

 驚いたのは、『ヘキサグラム・シールド』を使った時に、形状を変化出来ると教えたら、初めから形を変えれたのです。個別の制御が出来なかったので、これだけは恐らく魔力操作などの技能が無いと応用が出来ないのかも知れません。自分の防御だけなら、6本の剣に変化して自動で動くので問題はありませんが、防ぐだけの私とは大違いです。

 他にも色々と試しましたが、十分に私達に匹敵する能力と判断しました。最後にシズクと立ち合いをしたら、あっさりとシズクが勝ってしまったので、レベルの差って本当にわかりませんよね?

 レンにはシズクの刀が全く見えなかったとの事です。私にも見えてないので何とも言えませんが、シズクの視界を魔法で奪ったはずなのに、攻撃を全て躱されて首元に刀を寸止めされたのを不思議に思っていました。

 シズク曰く、心の目で見ているらしいので、後は気配と風の流れで動きがわかるらしいので。が私のマナを感じるのと同じと思っておきましょう。



 レンの能力を見てから、一度ダンジョンの81階層に転移した後に階層の転移陣を使って、ギルドの受付に戻って来ました。

 流石に受付に転移のマーキングをするわけにはいかないので、手間ですが最短で戻る方法がこれしかなかったのです。

 受付嬢のミーちゃんがと目が合ったのですが、私の連れているレンを見ていますね。


「うざこさん、調査依頼はしてきましたが、どうやって報告すればいいのですか? 一応、古城の最上階まで行ってきましたが?」


 私がそう言うと周りが驚いていますが。なぜ?


「シノアさん……私をうざこなんて呼ぶのは止めて下さい! 私にはミュールというちゃんとした名前があるのですから、せめて一文字ぐらいは入ってないと私は泣きますよ!」


「えっ……うざい娘から、うざこさんに親しみを籠めて呼んだのに……」


「どの辺りが親しみが籠っているのですか! 私だって、女の子なのですから本当に傷つきますよ……」


 何だか涙目になって来ましたが、仕方ないですね。


「わかりましたから、次からは皆さんと同じようにミーちゃんと呼びますよ。これをあげますから機嫌を直して下さい」


「本当にお願いしますよ……先輩から、うざこちゃんとか言われていてちょっと悲しい思いをしているのですから……ところでこれは何でしょうか? 膨らんだ小さなパンのようですが、微かに甘い匂いがします」


「私が作ったシュークリームなる食べ物です。取り敢えず一つ食べてみてください」


「シノアさんがパンを作るなんて想像できませんが。甘いパンなのでしょうか……」


 警戒しながらも甘い匂いがするので、一口食べるとそのまま一つを食べてしまいましたね。

 やっぱり、女の子には甘い物でご機嫌を取るのは、私もそうですが、正解ですね。


「これすごく美味しいです! 中身がクリームの様ですがこないだ新発売された生クリームのケーキよりも美味しいですよ!」


 ほう?

 いつの間にか生クリームのケーキを販売しているのは、エレーンさんのお店の人が味を理解したみたいですね。


「そんなお店が出来たのですね」


「以前からある洋菓子店のリーズの新作で、3日前に発売されたのです。これはそれよりも美味しいです!」


 あー、そう言えばリンさん達が購入しているお菓子のお店がそんな名前でした。エレーンさんの店舗だったのですね。


「毎日行列が出来てしまって、中々買えないのです。私達の代表の1人に全ての業務をする代わりに徹夜で並んで買って来てもらったのです、が購入制限があったので、少ししか食べられませんでした」


「じゃ、ついでにこれもあげますから、後で同僚の人と食べると良いですよ」


 多分、同じ物を再現したはずですから、あれから私が改良したこっちの方が美味しいはずです。

 渡された箱を開けると目がキラキラしています。喜んでいるようです。


「お店の事を私に聞いたのですから、買いに行くはずはないと思いますが、どうしてシノアさんがこれを……それよりも本当貰っても良いのですか?」


「いいですよ。ちなみにそれは私が作った物なので、そのお店の物とは違います。冷気の付与がしてある板が入っていますが、効力は籠めたマナが切れるまでしか無いので、味が落ちる前に早めに食べて下さい」


「ありがとうございます! シノアさんにお菓子作りの趣味があったのには驚きですが、後からみんなと頂かせていただきます。この板から冷たい風が流れているみたいですが、こんなアイテムがあったのですね。これが有ったら生物の劣化も防げそうですが、再利用は出来るのですか?」


 私の唯一の楽しみはお風呂と美味しい物を食べる事ですから、シズク先生の駄目出しにも耐えますよ?

 まあ、しっかりとカウントしていますので、ダメ出しの数だけベットに地図を書く事になるけどね!

 物作りも一応は趣味と言えますが、最近は、依頼されている物を作っているだけのような気がします。


「それは、一度発動すると、籠めたマナを使い切ったらただの板になるので、再利用は出来ませんから、使い捨てです。収納に入っている間は時間が止まるだけですね。それよりも調査報告って、どうすればいいの?」


「ケーキに感動をしていて、すっかりと忘れてました。本来でしたら、どこまで進んでどんな魔物が居たかを報告してもらうのですが、一緒に来てもらっても宜しいですか?」


「構いませんが、ついでに倒した魔物も回収していますので、要りますか?」


「では、解体所で、出してもらってから、お話を伺いたいと思います」


 付いていった解体所で、蠍とアクラネを出したら、驚いていました。特にアクラネの上半身が無傷な物を見た男性の職員の見る目が変わったので、女性職員からゴミでも見る目で見られてました。

 検分と称して胸なんて揉んだ男性職員は、その場で女性職員に変態とか言われてました。彼は明日から、軽蔑でもされそうですね。

 蠍の方はドラグ・スコーピオンと呼ばれる魔物だったらしく、魔法は使ってこないけど、マナを全て外殻の防御に回してるので、レベルが高いと恐ろしい防御力があるので、強敵らしいです。

 しかも、巨体の割に素早い行動をするし、パワーもあるので、大抵の冒険者は戦闘を避けるそうです。こいつは鎧の素材としては素晴らしいらしいのですが、小型ぐらいしか手に入らないそうです。

 完成した防具にマナを籠めると防御力が上がるので、別の付与もしやすいのそうです。

 ぜひ売って欲しいと言われたので、収納から出した分だけ全て換金しました。一部の男性職員が、アクラネの上半身を剥製にしたいとか言ってました。特別な処理をして売却するらしいのですが、これだけ綺麗だと一部のマニアに高く売れるとか……死体の女性が欲しいとかマニアって危険な人ですね。

 その後は、古城の通路ごとにメイドのアクラネが複数いる事と最上階にこの蠍が居た事を話してお終いです。

 調査報酬をついでに上乗せしてくれるらしいので、私としては嬉しいです。

 今までの情報は、古城の中に入る前の魔獣までが限界だったらしいのですが、それ以降の調査報告が上がってこなかったそうです。

 なんせ、それ以降の調査をした者が戻ってこなかったようです、が恐らくは、メイドさんの誘惑に負けて食べられてしまったのでしょうね。

 まともな範囲魔法でもないと、あの眷属がわらわらと湧いたら対処は無理だし、最初に捕まってしまったら、毒を注入されて戦力外だしね。

 その辺も報告しておいたので、可能なら最上階の蠍が狩りたいみたいです。後は頑張って下さい。

 まあ、古城の地図も簡単に制作して渡しましたので、避けられる戦闘もあると思います。

 最上階に何かあったのかを聞かれましたが、適当に宝石や財宝があっただけと言っておきました。これは、自分のお金と混ざってしまったので、もうわからないと答えておきました。

 別れ際にミーちゃんがレンの事を聞いて来たので、拾って来た私の新しい妹と言ったら、まさか誘拐ではとか聞いて来るので、身寄りがなかったので私が身請けしたとだけ言っておきました。シズクの時も誘拐とかエルナに言われたのを思い出しましたが、私は人攫いに見えるのでしょうか?



 それからは、レンの私物を色々と買い物をして、カフェでまったりしてから、お屋敷に戻りました。どうしてゆっくり帰ったかというと……エルナが怖いからです!

 黙って出掛けて、今まで一度も戻っていないのですから、今までの事を考えると絶対に怒っているのは確実です。

 決して忘れていた訳ではないのですが、途中で帰ったりすると絶対に連れて行くように言い出すし、最初に話さなかった時点でもう拗ねたに決まっています。

 後は、カミラの小言がまた始まるので、もう面倒になって無視してましたが……よく考えたら、私と離れているとまずいとか言ってましたけど、大丈夫かな……。

 まあ、過ぎた事なので、堂々と門から帰りました。コクマーさんが普通に挨拶してくれましたが、エルナの事を聞くと何処かに出かけていていないそうです。

 詳しく聞いてみると、私が居なくなった次の日に何やら騒いで、ヴァリスの国に行くと言って、アルカードに頼み込んで出かけたらしいのです。

 当然のように、嫌がるカミラも連れて行ったそうなのですが、大丈夫かな……。

 まあ、アルカードが付いているのでしたら、余程の事が無い限りは問題は無いと思いますが、何をしに行ったのでしょうね?

 そうなるとアイリ先生も付いて行ったのかと思ったら、道場でギースさんに剣の稽古を付けてもらっていたみたいですね。

 そして、私を見つけるとへばっているのに速攻で近付いて来ましたよ。


「シノアさん! 今までどこに行っていたのですか! シノアさんが居ないから、エルナさんが錯乱して私のアルカード様を連れて行ってしまったのですよ!」


「ちょっと、ギルドの依頼を受けていただけですが。コクマーさんから聞いた話では神聖ヴァリスに行っただけではないのですか? しかし、距離的に結構日数が掛かると思ったのですがね」


「アルカード様が転移魔術で行けたので、一緒に行ってしまったのです! 私は、ここで剣の練習をするように言われて置いてきぼりです!」


「なるほど……しかし、よくアルカードがエルナの頼みを聞きましたね?」


「シノアさんの過去の秘密を見せる条件を出したら、二つ返事で引き受けてしまったのです! エルナさんにはあの魔法があるから、言葉よりも見せる方が効果は絶大です……私もあれの所為で逆らう事が出来ません……」


 私の過去の秘密とか勘弁して欲しいのですが、一体何を暴露したのでしょうね……才能があっても適性の無いエルナが使える魔術は非常に少ないのですが、使える魔法の効果は、初級としてはあり得ない効果ですからね。


「シノアさんでしたら、アルカード様と通信が可能だと思うので、早く戻って来るようにお願いして下さい! 私の大事なアルカード様との時間が……」


「訓練をする時間を望むなんて、アイリ先生もマゾですね……まあ、ちょっと気になるので、念話で語り掛けてみます。これ離れていても繋がるのかな?」


 (もしもし、アルカード聞こえますか?)

 (お呼びでしょうかシノア様)

 おっ、繋がりましたよ!

 シズクの時は余り離れていると会話が出来なかったのですが、私の居る所に転移できるぐらいですから、可能とは思っていましたが、成功ですね。

 (エルナと神聖ヴァリスに行っているみたいですが、そちらは大丈夫なのでしょうか? アルカードが付いているのでしたら、全く問題は無いと思うのですが?)

 (少々問題はありましたが、片付き次第戻りますので、エルナ殿達の事はご安心して下さい。私の事をそれほど信頼なさっているとは、今回のエルナ殿に付き合ったのは良き成果です)

 (もしも何かあったら、アルカードの力を貸してあげて下さいね)

 (畏まりました。例えばカミラ殿が暴漢に襲われて困っていたら如何致しましょう?)

 何か具体的な質問ですね?

 暴漢如きにカミラが負けるとは思いませんが、念の為に言っておきますか。

 (よくわかりませんが、女性に対してそんな事をする者は殺してしまいましょう。特にエルナやカミラにそのような事をする者には情けは無用です)

 (畏まりました。お2人を辱める者には死を与えておきます)

 そんな事態は無いと思いますが、あの地下での戦闘から考えるとあっさりと殺してしまいそうですね。

 あの国の者達がどのくらい強いか知りませんが、普通に考えてもアルカードに勝てる存在とか限られてくると思うんだけど?

 契約してからの戦闘能力は知りませんが、今の私でも勝てる気が全くしませんよ。

 (ところで一体何をしに行ったのですか?)

 (それは、エルナ殿が帰ったら直接話すと言っていましたので、控えさせてもらっても宜しいでしょうか? どうしてもと仰られるのでしたら、お答えします)

 (それなら、帰ってからエルナから聞きます。カミラも一緒のはずですが、何か変化はありますか?)

 (カミラ殿ですか……時々何かに耐えている感じなのですが、特に問題は無いと仰っているぐらいです)

 うーん、やっぱりセリスと同じく少し変化があるみたいです。どんな風に変わったのでしょうね。

 まあ、戻れば分かるので、放置でいいかな。

 (無事なら問題無いので、用件が済んだら戻って来て下さいね)

 (畏まりました、シノア様)


「向こうで何かしているみたいですが無事ですよ。用が済んだら戻ると言っていますので、もうちょっとだけ待ちましょう」


「話が出来たのでしたら、何をしているか聞いて下さい! 私のアルカード様と一緒に出掛けるなんて……私は心細くて寂しいのですよ……」


 めんどいな……悪魔に惚れている時点でおかしいのに、変な嫉妬心まで発病しています。

 

「でしたら、ひたすら剣の練習でもして心でも鍛えて下さい。この会えない期間に少しでも腕が上がれば、アルカードの関心が高まるかも知れませんよ?」


「少しは上達したと思いますが……それでも会いたいのです……私にはこれが最後の恋なんです……」


 いやいや、この世界では婚期が遅れているみたいですが、アイリ先生は十分に可愛いので、アホなところを治せば十分にもらい手は沢山いますよ。

 一生懸命なのはわかりますが、めんどくさい人ですね……もしかして、これが恋は盲目と呼ばれるものなのでしょうか?

 ちょっと指輪でも作っておいて、アルカードにプレゼントでもさせれば、少しは納得するかと思うので、アルカードに実行させようかなー。

 まあ、それにしても、アイリ先生は、お金で身を滅ぼして、酒に溺れるわ、私に支配されてお屋敷でこき使われていたら、悪魔に惚れておかしくなるわ、本当に飽きさせない人です。

 本人か望んでいるのですから、このままアルカードと結婚とかさせて、子供ができたら、生まれてくる子供はどんな子になるのでしょうね?



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