79 インテリジェンス・ウェポン
「あと、ちょっと待って!」
あー、残念ですが、目が覚めてしまいました。
しかし、何ですか……あの空間は?
ノアは毎日あんな暮らしをしていたのですか……ちょっとずるい気がしてきましたよ。
「おはよう、シノア。どうしたのですか? シノアが声を出して目覚めるなんて初めてでしたから、びっくりしました。どんな夢を見たのですか?」
いつもなら、私がキスをしてあげないと絶対に寝たふりをしているのに、自分から起きてくれましたよ。
私の事が気になっているので、追及がありませんから、このまま適当な話でもして、朝の日課はスルーしてしまいましょう。そろそろこの日課はやめないかな?
「おはようー。実は、夢の中で、とても美味しい料理を食べていたのですが、メインディッシュが登場して、口に入れようとしたら、景色が薄れて目が覚めてしまったのです……食べた事の無いすごく美味しそうな物でしたので、すごく悔やまれます……」
「私は、シノアが作ってくれた物は、初めての物ばかりで、とても美味しいと思っていますが、それ以上の物なのですね?」
「ええ、その内に再現して、エルナに御馳走しますからね!」
「まあ! 私の為に作ってくれるなんて、今朝はシノアの愛をとても心地良く感じます。では、いつもの御褒美をもらってから、着替えましょうね!」
ダメでした。
まだ、御褒美とか言っていますが、いつまで続くやら……誤魔化そうとしたのですが、このズーレ娘は、逃がしてくれそうもありませんでした。
さりげなくベットから離れたかったのですが、しっかりと抱き着いたままです。
私の身体能力では、レベルは勝っていても完全にパワー負けしていますので、抜け出す事は不可能ですからね。
仕方なく済ませて着替えようとしますが、カミラが手を握ったままです。まだ眠っているのでしょうか?
いや……起きていました。目がトロンとしていますが、大丈夫なのでしょうか?
いつもなら、目が覚めるとさっさと着替えて私達を待っているのに、まるでまだ夢の中にいるみたいな感じですね。
拷問された後に優しくされたと思うのですが、一体何をされたんでしょうね?
「カミラも起きているのでしたら、手を放してくれませんか?」
「あっ……おはようございます……ごめんなさい、ちょっと名残惜しくなってしまって……」
はぁ?
朝から、何を言っているのか分かりません。私の手に未練があるとか、意味が分らないのですが?
昨日はノアに酷い目に遭っているはずなのに、何を寝ぼけた事を言っているのでしょうね?
はっ!
まさかですが……カミラもマゾの素質に目覚めてしまったのでしょうか?
ノアに散々痛めつけられた後に優しくされたので、私にノアを重ねて陶酔でもしているのでしょうか?
取り敢えず、カミラが真面目から残念な人格にクラスチェンジしたかも知れませんが、それはそれで、面白いと思います。
試しに腕をつねったら、目が覚めたらしく、目つきが元に戻ってしまいました。
「どうして、私の腕をつねるのですか? しかも、思いっきり力を籠めていますが。かなり痛いですよ?」
「あれ? あんな目をしていたので、てっきりマゾにでも目覚めたのかと思ったので、痛い思いをするのが好きになったのかと……」
「どうして私がそんなものに目覚めなければいけないのですか!」
私の手を叩くと素早く、私の頬をつねって引っ張り上げます。めっちゃくちゃ痛いです!
これは、以前にエレーンさんにもやられた、精神体の方に直接関渉しているので、痛みがダイレクトに来ますよ!
「カミラ! いたいひょ!」
「お返しです! この方法でないと貴女には意味が無いですからね。しばらくは、その痛みをしっかりと味わって下さい!」
思いっきりつねって持ち上げた後に放してくれましたが、この方法でやられると肉体と違って簡単に治す事が出来ないから、本来の痛みが消えるまで耐えるしかないので、最悪です!
この間は無意識にやっていて気付いていなかったのに、知らない内に方法を習得しているではありませんか!
私が質問したので、疑問に思ってノアに聞いたに違いありません!
私には、この方法が分らないので同じ事が出来ないのが悔しいです……肉体が治ったと認識するまでは、痛みが続くから、痛いよ!
「私も同じ事がしたいのにずるいですよ……ちょっと、知っているのでしたら、私にも教えて下さいよ!」
「貴女に教える訳がありません! 指先にマナを集中して、相手の精神体に関渉している僅かな部分を見極めて、マナを摘んだだけです。えっ!?」
「ほほー、なるほど……こうですか!」
即座に理解した私はカミラのけしからん胸をつねってやりました。先ほどとは、違ってカミラがめっちゃ痛がっています!
「痛いです! 早くその手を放して下さい!」
「まあ、いいでしょう。後で、2人の時に夢の中での事を教えて下さいね? 朝食の後に時間指定しますから、必ず来るようにね!」
「そんな事を言われて、行く訳がありません! それにあんな事を絶対に……わかりました。後で伺いますので、お答えします。ちょっと、どうして勝手に返事をしているのですか!?」
「良く分かりませんが、私の言葉に素直になっていますね! これは、素晴らしい事です!」
ノアが好きにしても良いとは言っていましたが、以前の時は体にしか指示が出来なかったのに、質問にも答えるとかレベルアップしていますよ!
「朝から、2人でじゃれ合っているみたいですが、カミラはシノアの誓約魔術でも受け入れたのですか?」
「私は、誓約魔術など絶対に受け入れていません! ちょっと、シノア! 貴方、私に何かしたのですか!」
えらい剣幕で詰め寄って来ますが、もはや脅威ではありませんねー。
そう言えば、ノアが私の技能を1つ昇華させたとか言ってましたが……誓約魔術と思うのですが?
自分の能力を見ると余剰レベルが5000も減って、予想通りに誓約魔術が無くなって、魂の支配者とかになっています!
もしかして、私の言葉自体が相手に強要する力にでも進化したのでしょうか?
試しにエルナにも何か言って見ましょう。
「エルナ、カミラの恥ずかしい秘密を暴露して下さい」
「貴女は、何を言っているのですか! 私にそんな物はありません!」
「カミラの恥ずかしい秘密ですか? 色々とありますが教えてしまったら、私が後ほど使えないので、残念ですがシノアに教える訳にはいきませんね?」
「エルナ様は、何を知っているのですか……」
「少しだけ、カミラに教えますと……」
何やらカミラに耳打ちしていますが、段々とカミラの顔が真っ赤になっていきます。あるみたいですね。
「どうして知っているのですか……エルナ様、お願いしますから、誰にも言わないで下さい……」
「勿論ですよ? 秘密は、私だけが知っているから、利用価値があるのです。ですから、カミラは安心して私が困った時にお願いを聞いて下さい。他に聞きたければ、その内に教えてあげますが、私が何を知っているか知りたければ、自分の教えたくない事でも思い浮かべればわかると思いますよ?」
「私の知られたくない事……」
カミラが胸に手を当てて何か考え込んでいます。エルナの言葉に見事に引っかかっていますね。
相手の秘密を少しでも知れば、それを元に沢山あるように見せかけるのは、サラさんの得意技ですから、エルナもしっかりと見習っていると思います。
普段は、のほほんとしているのに、言葉巧みに相手の情報を引き出そうとするから、エルナに会話の主導権を与えるのは危険です。
それを無意識にやっている所はやっぱり母娘だと、改めて認識出来ます。
これで、カミラは、どんどん秘密が積み重なって、逆らえなくなっていくかも知れませんね。
なまじに考え込んでいるから、自分にはまだ知られたくない恥ずかしい秘密があると教えている事に気付かない時点で詰んでいるのですよ。
しかし、エルナは私に教えてくれなかったので、言葉自体に力があるわけではないとすると……もしかしたら、カミラの魂は私に融合されているので、私の言葉が最優先されてしまうのかも知れません。
肉体に関しては、私の分身体だったから、ノアが権限を変更するまでは色々と悪戯が出来ていたのですが、私の誓約魔術が昇華された事によって、魂に直接命令が出来るようになったと予想します。
これで、肉体に対する命令権が復活していたら……。
「そこの落ち込んでいるカミラさん、ちょっとパンツを脱いで私に差し出して下さい」
「貴女は馬鹿なのですか? 私がそんな下らない……えっ!? なんで、体が勝手に! ちよっと、止めて下さい!」
涙目になりながらも表情は怒っていますが、ちゃんとパンツを差し出しています!
来たよ!
我、復讐の時を得たり!
今まで、下らないと散々阻止されて、私にお仕置きしてくれた仕返しがやっと出来ます!
エルナの前なので言いませんが、お漏らし属性の感度を復活させてあげますよ!
「カミラは、何をやっているのですか? シノアも変な事を言っていますが、そんなにパンツが欲しいのでしたら、私のを差し上げますので、受け取って下さい」
エルナが即座に行動して、私に差し出して来るのです。ちょっと止めて下さいよ。
この光景を誰かに見られたら、私の変な噂がさらに流れるではないですか。
ただでさえ、私にはおかしい噂がもう消せない状態なのですから、ついに変態属性まで追加されてしまいますよ。
「ただの冗談ですから、本気にしないで下さい。カミラも何をしているのですか? 下らない冗談を真に受けないで、さっさと着替えて下さい」
「冗談なのですか? 私はてっきりお互いの物を交換して過ごすのかと思いましたが。ちょっと残念です」
「貴女と言う人は……理由が判明したら、覚えておきなさいよ……」
この手の事は、エルナに言うと喜んで本気にしますので、控えないといけませんね。
私のが穿きたかったとか、わけのわからない事を呟く危険思考のお嬢様です。どんな教育を受けたのか知りませんが、間違いなく教える事を間違えていますね。
カミラからは、めっちゃ怒っている感情が流れてきますが、これで元に戻ったりしたら、一晩中お尻叩きでもされそうですね。
取り敢えず朝食を食べてから、工房に行ってノアと話でもして聞いてみましょう。
食事を終えて、工房に着いてから大鎌を出して語り掛けると、即座に反応がありました。
「ノア、聞こえている? 意思を移したのは、これでいいんですよね?」
(んー、そうですよ)
「念話ですか。私は、てっきり普通の会話が出来るかと思っていました。私も念話で会話した方がいいかな?」
(んー、どちらでも構いませんが、ここなら防音なので、問題無いと思いますけど? それに僕の存在は極力隠した方が良いかと思いますよ?)
「それもそうですが、このまま喋っていると、私は武器に喋っている痛い子と間違われそうなのです。武器を持ったまま無言で座っているのもどうかと思ってね」
(んー、普通に喋れば良いかと思いますよ? 他の人が居る時や戦闘中は念話で会話すれば良いだけですからね)
「まあ、何でも良いですね。ところで早速聞きたいのですが、カミラに命令が通るようになっているのですが、ノアが何かしたのですか? それとも誓約魔術が昇華したからなのですか?」
(あー、それは、後者の方ですね。君が支配している魂に対しては絶対の命令権がありますので。特にカミラやセリスは、君の魂に融合されていますから、魂自体が君に従いたい衝動に駆られているので、もう僕が与えた権限が意味を為さなくなったのです。わかり易く言うとあの2人には、君の言葉は神のお告げみたいなものですね)
「なるほど……すると私がカミラが嫌がっている着ぐるみを着て学園に登校しろと命令したら、実行するのですね?」
(んー、実行しますが面白いから、僕としては試したいのですが、次の日から学園の笑いの人気者になってしまうので、君がすごく恨まれますよ?)
「まあ、それはしませんが、お約束の属性だけは、我慢など出来ない感度まで復活させます。やっぱりあれが無いと面白くないですからね」
(それは、君の好きにすればいいと思うけど、これで起きていても寝ていても休まらない日々になりそうですねー。気の毒に思いますよ)
「ノアが手加減すれば、良いだけと思います。今朝のカミラはちょっとおかしかったのですが、あの後に何をしたのですか?」
(んー、さっきから、扉を少し開けて中の様子を覗き見している人に聞くといいよ)
「覗き見?」
扉の方を見るといつの間にか少し開いています。私が振り向いたので、カミラが如何にもいま来たかのように入って来ましたね。
ノアとの話に気を取られていて、気付かなかったとはいえ、盗み聞きとは感心しませんね。
「いま、来ましたが、私に何を聞くつもりなのですか?」
「カミラ……嘘はいけませんね? 先ほどから、中の様子を窺っていたのはバレバレなのですから、正直に話した方が良いですよ?」
「何を言っているのか知りませんが、早く用件を済ませて下さい」
おっと……これはお仕置きの時間ですね?
久しぶりに実行したいと思います。
「そうですか……では、私の指摘が正解でしたら、パンツを脱いで壁に手を突いて、嘘を付いた罰として、私にお尻を叩いて下さいとお願いして下さい。カミラの言葉が正しければ、向かいの椅子に座って下さいね?」
「また、下らない事を言って……代わりに先ほどの件もありますので、逆に私がお仕置きしてあげ……」
うん、体は正直です。
パンツを脱いで、壁に手を当てていますよ!
「嘘を付いてごめんなさい。少し前から、貴女が独り言を言っているのを見ていました。謀ろうとした私のお尻を好きなだけ叩いて下さい……ちょっと! どうして、口が勝手に謝罪しているの! しかも、この体勢から動けません! 何をしたのか分りませんが、早く悪戯を止めて下さい!」
「うん、素直なカミラは、私は大好きです。頼まれてしまったものは仕方ないので、その大きくて叩きやすいお尻にお仕置きして上げますね!」
「馬鹿な事は、止めて早く解放しなさ……ひゃん!」
先ほど、教えてもらった方法で、ばっちりと叩いてあげたので、久しぶりに変な声を上げていますよ!
「ちょっと、あぅ! あぁ! ………」
ちょっと、数発ほど叩いてあげました。エルナ程ではありませんが、私もそこそこ強く叩けますので、早くも真っ赤なってしまいましたねー。
自分でやっておいてなんですが……この腫れが引くまで痛みが継続とは、気の毒に……。
「ぐすっ……認めますので、お願いですからもう止めて下さい……その方法で叩くのは許して下さい……」
あっ……まさか泣いてしまいました。
いつも小姑みたいに煩いのですが、そんなしおらしく泣かれてしまうと、私がすごくいけない事をしている感じになって来ました……前の時もそうでしたが、カミラのこの手の感情は私に直接流れてくるので、とてもいけない事をしている気分になってしまうのです。
「ごめん。ちょっと、やり過ぎました。カミラは痛みには慣れてしまったと思って、このぐらいなら問題無いと思ったので……」
「貴女に心配させたくないから、我慢しているだけで、本当は辛うじて、顔に出していないだけなのです……私には、貴女ほどの忍耐力は付かなかったのです……」
(一応、カミラの言っている事は、本当ですよ? 以前にも言いましたが、訓練するといつも泣き叫んでいるのは本当ですからねー。かなりしごいてあげたのですが、生まれた頃から経験している君と違って、家族に虐げられてきたぐらいですから、表情を作るぐらいが限界なのですよ)
「もう楽な姿勢をしても良いです。ちょっとお話がしたいのですが、良いですか?」
「貴女の言葉が気になってノアさんに聞いたのは失敗でしたね……精神体をこれだけ叩かれるとこんなに痛いなんて、初めて知りました。貴女はよく平気でいられますね……」
「カミラにお仕置きで叩かれたりしていた時も、治しても痛みの継続時間が長いので、逆に斬られた方がましなのです。慣れているだけですね」
確かに痛いのですが、私は精神的に壊れてしまっているのか、余程の事がない限りは泣き叫んだりはしなくなってしまったのですよね。
最後にそんな感情になったのは、目を抉られて、腕を落とされた時だったかな……しかも、泣いてしまった理由が、目と腕の激痛よりも、何も見えなくなってしまうのが恐ろしかったのですよね。
「それにしても……私はどうなってしまったのですか? ノアさんに許可してもらった権限が失われてしまったみたいですし……貴女の言葉にどうしても逆らえなくなってしまいました……」
「それは、私の誓約魔術が昇華されてしまったので、私に依存しているカミラは、絶対に逆らえなくなってしまったようです。私を鑑定してみると分かると思うよ」
瞳の色が神秘的な黄緑に変わって、私を見つめています。いつ見ても綺麗な色の目ですね。
昔は、鏡とか見た事はなかったのですが、以前は、私も同じ色だったと思います。
今の私の瞳の色は青紫なのですが、ノアと入れ替わると金色に赤みが掛かった瞳になります。多分ですが、あちらが私の本来の瞳の色なのだと思います。
この世界の人達は、目の色が結構バラバラなのですが、何か意味があるのでしょうか?
シズクの世界の国の人達は、みんな一緒なのですから、この国の人達も同じでいいような気がするのですが、私の勝手な解釈かな?
「誓約魔術が無くなって、魂の支配者とありますが……意味をそのまま捉えたら、恐ろしい気がします……」
「さっき、エルナに試したけど、私が関与していない魂に対しては、ダメみたいなので、問題はないと思います。今の私なら、シズクに掛けてあるレベルの誓約魔術が行使できるみたいですね」
「あの、下らない質問は、確かめる為でしたか……もう少しましな質問をして試して下さいよ……」
「エルナだったら、色々な秘密を知っているはずですから、面白い事が聞けると思いましたからねー」
「まさか、エルナ様が知っているなんて……どうして知っているのか不思議です……一応、お願いしますが、聞かないで下さいよ?」
「そんな事を言われるとすごく聞きたくなってくるのですが……言わせてもいい?」
「シノア……女の子には誰にも知られたくない秘密があるのですから、無理に聞き出してはいけません。私は貴女の為の存在ですが、私にも心があるのですから、傷つきますよ……」
増々知りたくなってしまったのですが、ここで聞いたら、確実に嫌われてしまいそうなので断念します。
お漏らし以外の恥ずかしい秘密とか思いつかないのですが、逆に妄想が膨らんでしまって、あり得ない想像をしてしまいそうです。
他にも知っている事を喋らせたいのですが、命令して簡単に聞くのは面白くないので、その内に自分から言わせてみせますよ!
取り敢えず、夢の中の事ぐらいは聞きたいので、教えてくれないかなー。
「じゃ、昨日の夢の中の出来事だけでも知りたいのですが、教えてくれますか? ノアに会っていたので、カミラが水牢に居た事だけは知っていますが、あれからどうなったのか心配なので聞きたいのですが?」
「ノアさんが今回は用事があるからと言って、いきなり水牢に繋がれて酷い目に遭いましたが、シノアと会っていたのですか……ぼろきれの服一枚に着替えさせられた時から嫌な予感はしていたのですが、鎖に繋がれて水の中でずっと立っているのは、痛みは無いのですが、あんなに苦しくて辛い状況になるなんてね……しかも水が恐ろしく冷たかったので、あのまま眠りたかったですよ……」
「私もそれを聞いたので、早く解放して上げて、温めてあげてとか言ったら、ノアが火炙りか焼き鏝でも当ててやれば温まるとか言い出すから、止めたんだけど。ノアだから、止めてもやりかねないからね」
「ノアさんがそのような事を……既に経験済みですが……昨日は、とても優しくされましたので……私は……済みません、ちょっと恥ずかしいので、私の口からは言い難いのですが……出来れば聞かないで欲しいです……」
経験済みなんですか!
では、火炙りについては、ステラさんと共感が出来るかも知れませんね。
「ノアが優しいね……私には、自由気ままで、好き勝手に自分のしたい事をしているようにしか思えないのですけどね」
「シノアは誤解しているかも知れませんが、ノアさんは本当はとても優しい方なのですよ」
ふーん。
人間をゴミ扱いしているのに優しいのですか?
入れ替われば、必ず相手を皆殺しにするのにね。
(んー、酷いなー。この世界に存在するものは、僕の気に入ったもの以外は排除の対象なだけだよ?)
会話していないのに私の思考に介入して来ましたよ。
これなら、別に私が思うだけで、会話が成立しますよね?
(んー、いまはカミラがいるので、会話をしていたら不自然なので、君の考えている事に返事をしています。基本的には、普通の会話を求めます)
その考え方が間違っていると思うのですが……カミラに何をしたのか知りませんが、根が真面目なのですから、余りからかったりはしないで下さいよ?
(んー、別にからかってないけど。取り敢えず昨日は、言われた通りに優しく抱き締めてしっしかり温めてあげたよ? ちょっと、びくついていたから、ちょっと言葉を掛けてあげたら素直になっただけかな?)
言葉?
何を言ったのやら……。
(んー、僕がカミラに厳しくするのは、それだけ君を大切に思っているから、敢えて厳しくしているだけで、本当は君の心を僕だけを見るように優しくしたいけどしないだけですとか言っただけです)
……嘘くさいですね……そんな建前を信じるカミラも大概ですが……。
(んー、嘘ではありませんよ? 僕の大事なペットとして、とても愛おしいと思っていますので、心から僕だけを見ていればいいのですよ?)
ノアって、絶対に悪魔以上ですよね?
そんな事に免疫の無いカミラは、信じてしまったのですか……気の毒に……。
(これで、たまに優しく抱いてあげれば、どんなしごきにも前向きになると思いますので、いわゆる愛の鞭とかですかね?)
エルナやオリビアもそうですがこの世界の愛って、重いか痛いですね。
(エルナに鞭とかは駄目でしょうが、オリビアだったら、君がお仕置きとかしてあげたら、きっと喜びますよ? 僕の予想では、普段は体面を保っていますが、ちょっときっかけがあれば堕落する素質があると思うよ。あの娘と2人の時に入れ替わってくれたら、僕が調教してあげますよ? きっと従順なペットになると僕は推測します)
そんな事を聞いたら、絶対にしませんよ。
今でも十分に愛が重いのに、これに従順なペット化したら、私の変な噂がレベルアップするだけです。
(詰まらないなー。僕としては、全ての生きるものを支配下に置きたいので、その程度の噂はむしろ歓迎なんだけどねー)
……世界征服でもしたいのですか?
(んー、全て支配してしまうのは詰まらない。適当に自分を強者と思ってる奴らが沢山いる方が楽しく踊ってくれるのだよね。滅ぼす瞬間まで己の絶対的な強さを信じて疑わない者が一番殺し甲斐があるから、その時が楽しいかなー)
それ、世界征服よりタチが悪い気がするんですが……。
(まあ、僕に傾くか融合すれば、この気持ちが理解出来るよ? 君の行動は、今までにない行動なので、見てて楽しいから、悪くはないんだけどねー)
今まで?
(そんな事より、余り考え込んで僕と話し込んでいると、カミラが不審に思いますので、そろそろ相手をしたら? 別に僕の事を教えても良いけど、カミラは、僕を表に出すのは不味いと思っているはずなので、説教ぐらいは覚悟しておいてね?)
それは、困りますね。
私としては、余り理不尽な命令で、聞くなとか言いたくはないので、取り敢えず黙っておきましょう。
「シノア、どうしたのですか? 何か考え込んでますが、ノアさんと何かあったのですか?」
おっと、変に勘が良いですね。
「いえ、何でもありません。ノアの今までの行動から、優しいとか想像付かないので、思い出していたのですよ」
「確かに気に入った者以外には、非情どころか抹殺対象ですからね……」
「まあ、酷い目に遭っていないのでしたら、私は安心します。あんまり酷いようでしたら、ちゃんと教えて下さいよ?」
「分りました。ノアさんは私の為を思ってしてくれているので、問題は無いと思います……多分ですが……」
そんな拷問みたいな事をされて問題無いとか、私には理解が出来ません。愛なんてものが痛い事だけはわかりました。
「それでは、私はこのまま作りたい物があるので、お昼まではここに居ます。それと頼まれていた物が出来ているので、使ってみて下さい。合わなければ調整しますので、持って来て下さいね」
「シノア、ありがとうね。道場の方で、試してみます。私は行きますね」
頼まれていた短剣を入れた箱を渡したら、退出しました。上手く馴染めば、また私よりも強くなってしまいそうですね。
(んー、マナの消費が減るぐらいだから、戦闘の継続時間が増えるぐらいかな? 僕には、あの短剣の能力が分らないけどねー)
「私が作っている所を見ているのですから、知っているでしょ?」
(んー、一度収納に入れてくれないと僕には武器の鑑定が出来ないんですよねー。最近は、試作品しか収納にしまってくれないから、いまいち過ぎて僕の強化にならないよー)
「だって、収納に武器の類をしまうと、良いのがみんな消えてしまうからだよ! あの魔剣はどこに行ったの!」
(魔剣?)
「魔剣アスタロードだよ! まだ特殊魔法も使ってないし、あれを所有者にするのに私がどれだけ苦労したか知っているでしょう!」
(あー、あれなら、僕に融合したよ? お蔭で血じゃなくて、命をマナに変換する能力が追加されたから、ラッキーだったよ! 他の能力が増えなかったのは残念だったけどね)
あんな便利な魔剣が……私の切り札の1つだったのに……。
剣の詳細が大体把握出来たので、血抜き用の短剣は作れたから、魔物の血抜きには使えるんだけど、持ち主がマナを纏わせないと駄目なので、相手に投げたりするとただの短剣になってしまうから、使えません!
シズクにも渡してあるので、適度にダメージを与えると相手の血液を奪えるので便利とか言っています。私には、相手が強かったら、まったく当てることができません。至近距離で自分より格下の相手にしか当てれません。
「せめて、特殊魔法を使ってみたかった……」
(んー、闇魔術『ブラッド・サークル』だよ。吸い込んだ血に比例して、範囲内の相手の血液を沸騰させる魔法だねー)
「なにそれ!? すごく強力な魔法ではないですか!?」
(んー、いまは存在しない最古の真祖と呼ばれる吸血鬼達が使っていたけど、諸刃の剣みたいな魔法だよ。使うと味方も巻き込むし、自分の血も触媒にしないといけないから、多用は出来ないかな?)
「それはちょっと使えませんね……その吸血鬼の人達はまだいるのですか?」
(んー、血が薄れた者達なら、生き残っているはずだけど、その魔法は継承されていないから、アルフィンも使えないはずだよ)
「でも、サテラなら、闇魔術が昇華されているので、知っていたら使えるのかな?」
(あの者は純粋な槍の使い手ですが、素質がありそうなので習得可能でしょうね)
「素質とかそんな事まで、分るのですか?」
(んー、内緒です。乙女には秘密がいっぱいあるのですから、詮索してはいけません。そろそろ僕は、ゲームでもしたいので、反応しません。僕としては工房の壁に飾ってある武器を収納に入れてくれる事をお願いしておきますー)
「ちょっと、ゲームって、昨日のテレビゲームですか! 私もやりたいから、夢の中に呼んで下さいよ!」
………………。
…………。
……。
本当にもう、全く反応がありません……あんな面白い事を1人だけで楽しむとか、ずるいですよ。
壁に飾ってあるのは、そこそこいい出来の武器なのです。これを収納に入れると次の日に消えてしまうので、入れたくないのですよ。
オリハルコンだって、毎日あんなに苦労して貯めているのに、根こそぎ消えるとか、収納の意味が全くないよ!
シズクが私の一日に作り出せるオリハルコンの量も知っているので、定期的に繊維状に加工した物を奪っていくから、私は涙目なんですよ!
そこにエルナが武器の強化と補修とか言っておねだりして来るので、私の分が殆どありません。
ばれないようにコツコツとその辺の置物の中に隠して貯めています。
仕方ないので、適度な広さの工房の壁に飾っているのですが知らない人が来たら、武器屋と勘違いするレベルになって来ました。たまにシズクが持っていこうとするので、大事な物以外は、煩いので販売してますが、あちらもかなりの収入源があるので、買われてしまいます……。
しかし、こうしているとギムさんみたいに武器屋の主人になった感じもします。いつかひっそりと隠れたお店で商売でもするのは悪くないかな。




